自己破産が同居している家族に与える影響とは?自己破産が家族に知られるケースを紹介

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「自己破産をすると同居している家族にどのような影響があるのか」
「自己破産をしたら同居している家族に知られるのか」

自己破産を検討している方の中には、自己破産によって同居している家族にどのような影響があるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、自己破産が同居している家族に与える影響や家族に破産をしたことを知られる可能性についてご説明します。

1.自己破産が同居している家族に与える影響

自己破産が同居している家族に与える影響

自己破産をすることで同居している家族には少なからず影響が発生します。

特に把握しておくべき点は以下の三つです。

  1. 家や車など資産価値の高い財産を手放す必要がある
  2. 転職によって収入が下がる可能性がある
  3. 家族が保証人となっている場合は、その家族が保証債務の請求を受ける

自己破産後の生活に大きく影響を与える場合がありますので、注意しておく必要があります。

(1)家や車など資産価値の高い財産を手放す必要がある

自己破産の手続では、家や車などの資産価値の高い財産を手放す必要がありますので、引っ越しや別の移動手段などを考える必要が生じてしまいます。

家や車などの資産価値の高い財産は破産管財人による換価処分の対象となり、売却代金は債権者に配当されることになります。

また、家や車にローンが残っている場合は、債権者による引上げ、抵当権の実行により手放さなければならなくなるのです。

家や車を手放さなければならない場合は、大きく生活に影響が出ることは想定しておきましょう。

なお、財産の状況によっては、換価対象にならない場合があります。

車でいえば初度登録から年数が経過している、査定額が20万円以下であるなどといった、一定の財産は手元に残すことができる場合があります。

弁護士に相談する段階で、自己破産後に所有している財産がどうなるのかについて確認しておきましょう。

(2)転職によって収入が下がる可能性がある

自己破産をすることで資格制限を受ける職業に就いている方は、転職によって収入が下がる可能性があります。

各種士業や警備員、保険の外交員などの仕事は、破産手続開始決定から免責許可決定の確定まで資格が制限されてしまいます。

したがって、これらの職業にある方が破産する場合には、休職や転職の必要があります。

資格制限を受ける職業からそうでない職業に転職することになれば、収入が下がってしまうことも考えられます。

収入が下がれば、家計に大きな影響を及ぼすことになってしまいますので、支出の見直しやなるべく収入の下がらない仕事へ転職するなどを考える必要があります。

なお、手続開始決定から免責許可決定までの期間は、2~6か月ですので、この期間を過ぎればもとの仕事に戻ることが可能です。

ただし、一時的にとはいえ休職や転職することになるため、事前にご家族へ相談しておくことをおすすめします。

(3)家族が保証人となっている場合はその家族が保証債務の請求を受ける

家族が保証人の場合は、家族が保証債務の請求を受けて、債務者に代わって返済することになります。

保証人への請求は、基本的に一括で請求されることが多いため、家族に返済能力がなければその家族にも自己破産などの債務整理の選択をさせてしまうことになるでしょう。

また、秘密にしたまま破産手続を進めていても、保証債務の請求を受けることにより家族に自己破産したことを知られてしまうことにもなります。

事前に家族に相談して自己破産をすべきかどうか、する場合は保証債務についてどう対処するかを話し合っておくことをおすすめします。

2.同居している家族に自己破産したことを知られてしまうケース

自己破産したことを同居している家族に知られてしまうケースはいくつか考えられます。

主として考えられるのは以下の五つのケースです。

  1. 郵便物を見られたとき
  2. 財産が処分され生活環境が変わったとき
  3. 家族が保証人になっているとき
  4. 収入に関するの書類を集めるとき
  5. 官報の記載を確認されたとき

(1)郵便物を見られたとき

裁判所などから届く郵便が原因で家族に知られることが多いです。

急に裁判所から郵便が届けば、家族はなぜ裁判所から郵便が送られてきたのか知ろうとするのは当然でしょう。

自己破産の手続を開始したら、裁判所からの郵便に気を配っておく必要があります。

なお、自己破産の手続を弁護士に依頼しておけば、裁判所からの郵便はすべて弁護士に送られることになります。

郵便物を家族に見られたくないという場合にも、弁護士への依頼は有益です。

(2)財産が処分され生活環境が変わったとき

自己破産によって家や車などが処分されたことを怪しまれてしまうと家族に自己破産したことを隠し通すのは難しいでしょう。

家にせよ車にせよ、手放せば生活に大きな影響を与えることになるものですから、よほど通った理由を用意できないと、自己破産によって売却されたことを知られてしまうことになります。

ローンの負担が厳しく将来的にローンを支払っていくよりも今売却した方がよい、などと理由を説明することは考えられますが、それが必ず通るとは考えない方がよいでしょう。

(3)家族が保証人になっているとき

家族が保証人になっている場合は、債権者から家族に対して請求されることになります。

これにより、主債務の支払ができなくなったことがわかりますので、その理由を問い詰められれば自己破産をしたことを隠すことは難しくなるでしょう。

家族が保証人となっている場合に、自己破産をするときには、家族にその旨を打ち明けて保証債務の扱いなどについて相談することをおすすめします。

(4)収入に関する書類を集めるとき

自己破産を申し立てる場合、家計の収支表を提出する必要があります。

この収支表に記載するのは、同居家族を含めた全体の家計であり、合わせて水道光熱費の領収証等を提出したり、同居家族に収入がある場合は給与明細などその収入についての資料を提出したりすることになります。

同居の家族が家計を管理していたり、給与明細を個別に持っていたりすると、これらの資料を集めようとする段階で家族に知られる可能性があります。

同居の家族からそれらを提出してもらうこととなれば、当然その理由を聞かれますので、何らかの理由を用意できなければ、正直に自己破産の手続に必要となることを説明するほかありません。

(5)官報により自己破産の事実が知られたとき

身の回りに官報をチェックしている人がいれば、そこから自己破産したことが知られてしまいます。

自己破産をすると官報に自己破産者の氏名と住所が記されるため、官報をチェックすれば自己破産者を把握することが可能です。

ただし、官報をすべて見ているという人は極めて少なく、官報がどのようなものかすら知らないという人が多いですから、官報経由で自己破産したことが知られることはほとんどないケースといえるでしょう。

まとめ

自己破産によって少なからず同居している家族に影響があります。

特に換価処分の対象となる財産を所有している場合は、自己破産の手続が進行していることを知られてしまう蓋然性は高いでしょう。

家族に知られるケースを踏まえた上で、自己破産をすべきかどうか、また自己破産後の対応について事前に家族と話し合うか決めておきましょう。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

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