自己破産手続に必要な家計収支表とは?書き方や注意点も紹介
「自己破産をするために家計収支表を提出する必要があると聞いたけど、何を書けばいいの?」
「自己破産のための家計収支表は、いつから作成する必要があるの?」
裁判所に自己破産を申し立て、債務を支払う義務を免除してもらう「免責」の決定を受けるためには、裁判所に申立て書類を提出しなければなりません。
その申立て書類の中には、「家計収支表」と呼ばれるものが含まれています。
家計収支表と呼んではいるものの、実際は単なる家計簿なのですが、これは自己破産の手続において軽く見てよいものではありません。
本記事では、家計収支表がなぜ必要とされるか、いつから作成すべきか、記載する項目の例や作成時の注意点についてご説明します。
1.なぜ家計収支表が必要とされるのか
自己破産の手続を行うにあたっては、必ず家計収支表の提出が必要になります。
そもそも、なぜ家計収支表を提出する必要があるのでしょうか。
(1)自己破産をする条件を満たしているかどうかを判断する
自己破産の手続を開始するにあたっては、いくつかの条件があります。
その条件には、申立てをする人が「支払不能」な状態にあることが含まれています。
支払不能であるかどうかは、その人の収入と支出、債務の総額、所有している財産などによって決められます。
例えば、支出が多くとも、それ以上に大きな収入があれば、たとえ債務額が大きくとも返済をしていくことが可能なこともあるかもしれません。
裁判所は、家計収支表の記載を確認することにより、その人の収支の差や月の約束返済額などの情報から返済が不可能なのかどうかを確認し、支払不能な状態にあるかどうかを判断するのです。
家計収支表は、破産手続を始められるかどうかを判断するにあたっての資料となる、ということです。
(2)免責不許可事由の有無を判断する
個人の債務者が自己破産の手続をする場合、その目的は、債務の支払義務の免除を受ける、「免責」を受けることにあります。
ところが、自己破産を申し立てれば必ず免責を受けられるというわけではありません。
破産法には「免責不許可事由」という、このような事情があるときには免責をしてはいけない、という事項が複数定められています。その中でわかりやすいのは、浪費やギャンブルなどをしたこと、です。
家計収支表の中に説明のつかない過大な支出があると、浪費やギャンブルを疑われます。
このような場合、裁判所は、さらに通帳の記載等を確認し、その支出について調査することになります。
このように、家計収支表は裁判所が債務者の免責を認めるかどうかを判断する資料としても必要とされるのです。
2.家計収支表の作成について
(1)家計収支表はいつ頃から作成を始めるべきか
多くの場合、自己破産の申立て時に、直近2か月分の家計収支表の提出を求められることになります。
ただし、弁護士に依頼した場合は、弁護士側でチェックして、収支のバランスに問題があれば是正を求められることもありますので、依頼直後から作成するよう指示されることもあるでしょう。
弁護士に依頼する場合は、家計収支表それ自体の作成はせずとも、ご自身で家計簿をつけ始めるなど、準備を進めておくとよいでしょう。
裁判所によっては、申立て時だけでなく、免責審尋(免責をしてよいか判断するために裁判所が債務者に話を聞く手続)の直近1か月の家計収支表の提出を求められることもあります。
申立て後の家計収支表の提出の有無については、お住まいの地域を管轄する裁判所によって運用が異なりますので、依頼した弁護士に確認しておく必要があります。
(2)家計収支表に記載する項目について
家計収支表にはどのような項目を記載することになるのか、例を紹介します。
以下は、東京地方裁判所で用いられている書式の記載項目です。
家計収支表には収入と支出に分けて記載することになります。
【収入】
・給与・賞与(申立人、配偶者、その他同居人ごと)
・自営収入(同上)
・年金(同上)
・生活保護
・児童手当
・他の援助(親族からの仕送りなど)
・その他
・前月繰越金
・収入合計
家計が同一の同居人のものを含め、すべての収入を記載していくことになります。
上記に当てはまらない収入がある場合も、空欄を利用して記載します。
細かいものでもすべて記載しておかないと、後で通帳の記載などと照らし合わせて不足を指摘されることになってしまいます。
【支出】
・家賃(管理費含む
・地代・食費
・日用品
・電気代
・ガス代
・上下水道代
・電話代(固定電話・携帯)
・新聞代
・保険料
・駐車場代
・ガソリン代
・医療費
・教育費
・交通費
・被服費
・交際費
・娯楽費
・返済(対業者)
・返済(対親戚・知人)
・次月繰越金
・支出合計
収入と同様、家計が同一の同居人のものを含めて記載します。
水道光熱費や電話代などについては、請求書や領収書を合わせて提出するよう求められる場合が多いので正確な金額を記載する必要がありますが、その他の項目は概算でも(千円単位で切り上げるなど)かまいません。
3.自己破産における家計収支表作成時の注意点
自己破産の申立て時に提出する家計収支表は、裁判所が破産手続を開始するかどうか、債務者に免責を認めるかどうかを判断する上での重要な資料となります。
その家計収支表を作成する際に注意すべき点をご紹介します。
(1)金額を正確に記入する
自己破産の手続に必要な家計収支表を作成する際は、できる限り正確な金額を記載するようにしましょう。
前記のとおり、請求書や領収書の提出を求められることが多い水道光熱費や電話代などについては、1円単位で正確な金額を記載する必要があります。
そのほかの項目については概算でもかまいませんが、現実の金額との差が大きくなり、収支のバランスが崩れた収支表になってしまうと裁判所から指摘を受け、場合によっては免責不許可事由の存在を疑われ、本来であれば費用の負担の小さい同時廃止事件となるものが、費用のかかる管財事件となってしまう可能性もあります。
また、虚偽の申告と判断されてしまうと、免責を受けることもできなくなってしまう可能性もあります。
これらのリスクを排除するためにも、できる限り正確な金額を記載するようにしましょう。
(2)領収証などを取っておく
前記のとおり、水道光熱費や電話代などについては、家計収支表とともに、領収証の提出を求められることが多いため、これらの領収証については保管しておくことが必要になります。
それにとどまらず、それ以外の項目の領収証についても保管しておくことが望ましいでしょう。
家計収支表の作成時にそれらを確認することにより、正確な金額を記載することができます。
(1)のとおり、正確な金額を記載しておかないと、自己破産の手続上不利になってしまうこともありますので、それを避けるために、領収証などの支出に関する資料を保管しておくことは重要です。
少なくとも、弁護士に自己破産の申立てを依頼した後は、領収証などを保管するようにするとよいでしょう。
(3)節約を心がける
食費、娯楽費、交際費などの支出が多い場合、裁判所から指摘を受ける可能性があります。
それらが収入と比べて過大な支出であれば浪費と判断され、免責不許可事由があるとされてしまうことにもつながります。
自己破産の準備をする段階になったら、家計収支表の作成に合わせて家計を見直し、無用な支出がないかどうかを確認するとよいでしょう。
そうすることにより、裁判所からの指摘を回避するだけでなく、破産の手続後の生活に余裕を持たせることも可能になります。
少なくとも、自己破産の手続の準備段階に入ったら、できるだけ出費を抑えて節約することを心がけましょう。
4.個別のご事情は弁護士にご相談を
自己破産の申立て時には、家計収支表だけでなく他の資料も提出する必要があります。
それらの資料の準備と家計収支表の作成を並行して進めることになりますので、それなりの負担になってしまいます。
弁護士に依頼することで、どのような書類が必要かについて具体的なアドバイスを受けることができますし、家計収支表の作成についても項目や金額について見直しをしながら進めることができます。
自己破産の申立てについては弁護士に依頼した上、疑問点について逐一相談するとよいでしょう。
まとめ
自己破産を申し立てる際に提出しなければならない家計収支表の作成についてご説明しました。
家計収支表は、裁判所が自己破産の開始をするかどうか、債務者の免責を認めてよいかどうかを判断する際の資料になります。
そのため、できる限り正確な記載と、過剰な出費を減らしておくことが重要になります。
自己破産をお考えで、家計について何か不安なことがあるときには、自己破産の相談に合わせ、弁護士にお話しされることをおすすめします。
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