自己破産で必要な書類について
自己破産手続きの際には裁判所に提出をしなければならない書類がたくさんあります。
それらをそろえられなければ手続きは進められません。
今回は自己破産手続きで必要な書類を事前に確認し、スムーズに手続きを進めましょう。
1.自己破産申立時の必須書類と入手先
自己破産申立時の必須書類と入手先は以下の通りです。手続きをスムーズに進めるうえで、これら書類を準備する必要があります。
必須書類 | 入手先 |
破産手続開始・免責許可申立書 | 裁判所等 |
住民票の写し | 市区町村の役所等 |
債権者一覧表 | 裁判所等 |
資産目録 | 裁判所等 |
報告書(陳述書) | 裁判所等 |
家計全体の状況 | 裁判所等 |
(1)破産手続開始・免責許可申立書
破産手続開始の申立は、破産規則で定める事項を記載した書面でなければなりません(破産法20条1項、破産規則13条)。
必要な事項が記載されていない場合は、補正を求められる場合や、申立書却下の対象になる場合もあります。
申立をスムーズに進めるために、定められた事項をもれなく記載しましょう。
#1:必須の記載事項
破産規則で定められている必須の記載事項下記の通りです。
①申立人の氏名等(破産規則13条1項1号)
②申立の趣旨(同3号)
自己破産申立の際には「申立人について破産手続を開始する。」と記載します。
また、免責許可の申立の意思を明らかにするため、「申立人(破産者)について免責を許可する。」という免責許可申立の趣旨も記載しましょう。
③破産手続開始の原因となる事実(同4号)
破産手続開始の原因となる事実は、個人の場合、支払不能(破産法15条1項)となるため、支払不能である旨を記載します。
#2:その他の注意事項
①収入印紙・郵便切手の添付
自己破産申立の際、収入印紙と郵便切手の添付が必要となります。
収入印紙は破産申立費用(1000円)と免責申立費用(500円)を合わせた1500円分が必要です。
郵便切手は必要な金額等が各裁判所によって異なる場合がありますので、申立前に管轄の裁判所に確認するようにしましょう。
②氏名、住所の記載
今回の破産に至る借入れの中でもし旧姓での借入れがあった場合は、旧姓も記載するようにする必要があります。
現住所が住民票の住所と異なる場合は、現住所も記載します。
また単身赴任等、住所と別に居所がある場合は現居所も記載してください。
(2)住民票の写し
申立人の住民票のある市区町村の役所・役場で取得します。
下記の要件を満たす住民票が必要となりますのでご注意ください。
- 申立前3か月以内に取得したものであること
- 世帯全員分であること
- 本籍及び続柄の記載があること
- マイナンバーが省略されていること
(3)債権者一覧表
申立人が借入れをしている全ての債権者及び公租公課の滞納がある機関の情報をまとめて記載します。
主に必要な情報は下記の通りです。
- 介入開始日
- 各債権者名・送達先住所
- 債権者ごとの債務額
- 借入れの原因
- 借入れ始期及び終期、最終返済日
- 債務総額
- 備考(原債権者名や訴訟係属中の場合は事件番号等)
こちらも各裁判所の推奨する書式によって記載が必要な情報が異なります。
確認の上正しく記載しましょう。
(4)資産目録
申立時に申立人が所有している資産について記載します。
申立時に資産を保有している場合は、その詳細についても記載が必要となります。
万が一虚偽の報告があった場合には免責にも影響が出ますので、正確に記載するようにしましょう。
(5)報告書(陳述書)
報告書(陳述書)とは破産に至るまでの経緯等について記載する書面です。
申立人が作成した場合は「陳述書」と呼び、代理人が作成した場合は「報告書」と呼びますが、内容は同じものになります。
主に記載が必要とされる事項を下記のとおりです。
各裁判所の書式によっては異なる場合もありますので、管轄の裁判所の書式にしたがって記載してください。
①破産に至るまでの経歴
申立人が破産に至るまでの職歴を記載する必要があります。
記載を求められる期間は過去10年前と定められる場合や、今回の破産原因となった最初の借入れ以降とされる場合等があります。
②家族関係
申立人の収支に関係する範囲での記載が必要です。
該当の方のお名前、続柄、年齢、職業、同居か別居かどうか等を記載します。
③現在の住居の状況
現在の住居はどなたかが所有または賃貸している住居かどうかを記載します。
④今回の破産申立費用の調達方法
申立人自身の収入か、法テラスの扶助を利用したか、もしくは親族からの援助かどうか等を記載します。
⑤破産申立に至った事情
債務発生・増大の原因、支払不能に至る経過及び支払不能となった時期を時系列で記載します。
⑥免責不許可事由
免責不許可事由に該当するような事由がある場合にはもれなく記載します。
(6)家計全体の状況
申立人の家計状況を申立前直近2か月分提出する必要があります。
収入・支出について正確にもれなく記載します。
各裁判所が用意している書式に当てはまる費目がない場合は、空欄を使って補記する等正確に作成するようにしましょう。
2.その他提出求められる書類について
前項では自己破産申立時の必須書類について述べました。
その他債務者の状況に合わせて提出を求められる書類は各裁判所の運用により異なります。
詳しくは弁護士に内容を確認することをおすすめしますが、一例として東京地裁での自己破産で提出を求められる書類をご紹介します。
保有資産 | 必要書類 | 入手先 |
預貯金 | 保有している全銀行口座の通帳もしくは取引明細(直近2年分) | 各金融機関 |
給料 |
給与明細(直近2か月分) | 勤務先 |
源泉徴収票もしくは課税証明書(直近2年分) | 源泉徴収票:勤務先 課税証明書:住民票のある市区町村の役所・役場 |
|
自営収入 | 確定申告書(直近2年分) | 税務署 |
無職の場合 | 非課税証明書 | 住民票のある市区町村の役所・役場 |
年金収入 | 年金受給証明書または年金額通知書 | 最寄りの年金事務所 |
生活保護を受けている方 | 生活保護受給証明書 | 支給を受けている市区町村の役所・役場 |
手当・助成金を受給している方(児童手当等) | 受給証明書もしくは受給額通知書 | 支給を受けている市区町村の役所・役場 |
退職金あり | 退職金見込額請求書または就業規則 | 勤務先 |
退職金なし | 退職金制度がないことを証明する資料 | 勤務先 |
貸付金 | 金銭消費賃借契約書またはそれに代わる書面 | 相手方 |
売掛金 | 帳簿、請求書 | |
積立金 | 内容を証明する書面 | 勤務先等 |
保険 | 保険証券 | 各保険会社 |
解約返戻金見込額のわかる資料 | 各保険会社 | |
有価証券等 | 内容を証明する書面 | 各取り扱い企業等 |
自動車・バイク | 車検証もしくは登録事項証明書の写し | 管轄の運輸局 |
査定書(2社) | 中古車・中古バイクの買取業者 | |
過去5年以内に20万円以上で購入した物品 | 内容が分かる資料(契約書、領収書等) 査定書(2社) |
証明資料:購入した店舗等 査定書:買取業者等 |
過去2年以内に20万円以上で売却・処分した物品 | 内容をわかる資料(契約書、領収書等) 査定書(2社) |
証明資料:購入した店舗等 査定書:買取業者等 |
賃貸契約 | 賃貸借契約書 | 紛失の場合は貸主の方 |
不動産 |
全部事項証明書(土地・建物) | 管轄の法務局 |
固定資産評価証明書 | 所有不動産のある市区町村の役所・役場 | |
保有不動産の査定書(2社分) | 不動産業者 | |
住宅ローン | 住宅ローン契約書及び返済予定表 | 金融機関 |
相続財産 | 遺産分割協議書または相続放棄受理証明書 | 相続放棄受理証明:管轄の家庭裁判所 |
相続財産の内容が分かる資料 | ||
事業設備・在庫品等 | 各物品の内容が分かる資料 査定書(2社) |
専門の買取業者等 |
その他資産 | 内容が分かる資料 |
保有資産によって、求められる資料が異なります。
下記では特筆すべき事項がある必要書類について取り上げます。
(1)保有している全銀行口座の通帳もしくは取引明細(直近2年分)
銀行口座を保有している方は、保有している全銀行口座の直近2年分の取引明細の提出が必要です。
普通預金だけでなく、定期預金や外貨預金、貯蓄預金等をお持ちの口座は全種類提出しなければなりません。
通帳に直近2年分の取引が記載されている場合は、通帳のコピーを提出します。
もし通帳上に長期間記帳をしておらず「合算記帳」「合計記入」「おまとめ記帳」等と書かれた取引がある場合は、別途各金融機関からその期間の取引明細を取り寄せる必要がありますのでご注意ください。
(2)源泉徴収票もしくは課税証明書
給与収入がある方は、直近2年分の源泉徴収票が必要になります。
もし紛失しており、勤務先での再発行等も難しい場合、課税証明書で代用することが可能です。
課税証明書は住民票のある市区町村の役所・役場で取得することができます。
(3)退職金見込額証明書または就業規則
退職金を受け取られる方は、現在退職した場合に支給される退職金の見込額証明書の提出が必要です。
ただし勤務先で作成してもらえなかったり、作成を依頼しづらい方も中にはいらっしゃるかと思います。
就業規則の中で退職金額の計算式が示され、客観的に退職金額が算出できる場合は、就業規則の写しを提出することで代用することが可能ですので、ぜひご確認ください。
(4)退職金制度がないことを証明する書面
退職金制度がない方は、退職金制度がないことを証明する書面の提出が必要です。
例えば雇用契約書や就業規則に「退職金制度はなし」と記載がある場合は、それらを提出します。
書面がない場合には勤務先の会社名、住所、申立人の氏名、退職金制度がない旨を記載し、勤務先の社判が押捺された任意の書面を作成して提出します。
(5)査定書(2社)
自動車やバイクを所有している方は、市場価値がどのくらいなのか示すことが必要です。
なお東京地裁の場合は、初年度登録から国産普通車は6年以上、軽自動車は4年以上経過している場合は価値なしという運用をしているため、該当する場合は不要です。
自動車・バイクだけでなく、不動産やその他査定が必要な物品を所有している場合は2社から査定を取得し、平均額を算出します。
3.自己破産手続きを弁護士へ依頼するメリット
前項では裁判所へ提出を求められる資料についてご説明しました。
では自己破産手続きを弁護士に依頼していただくことによってどんなメリットがあるかについてご説明いたします。
(1)資料の作成を任せることができる
前述のとおり、自己破産手続きの際に提出必須の書類を作成して提出しなければ自己破産手続きを進めることができません。
弁護士に依頼することで必須書類の作成、提出を漏れなく進めることができ、ご負担の軽減につなげることができます。
(2)申立後の裁判所とのやりとりを弁護士に任せることができる
破産手続きの申立てをしたあとには、提出した申立書の内容について裁判所から問い合わせや追加の対応事項の連絡が入ります。
対応次第でその後の破産手続きの進行にも影響が出てしまうため、迅速かつ正確な対応は非常に大切です。
もし弁護士に依頼して申立を行った場合は、申立後の裁判所とのやりとりも弁護士に任せられるため、よりスムーズに、破産手続きの進行を図ることができます。
(3)同時廃止事件で進められる場合がある
自己破産手続きは裁判所が申立後に大きく2つの方法に割り振って進行します。
1つは簡易的な手続きで進む同時廃止事件、もう1つは管財人という別の弁護士を裁判所が選任し、さらに調査を行う管財事件です。
管財人が選任されると、管財費用も発生するため、金銭的にもご負担が増えてしまいます。
しかし、弁護士に依頼することで、内容によっては同時廃止事件で進めることができる場合があります。
裁判所としては、弁護士に依頼していない件は全件管財事件として調査を行う必要があるという見方をすることがあるためです。
弁護士に依頼することで、同時廃止事件としてスムーズに破産事件を進められる可能性が高まることも、弁護士へ依頼するメリットの1つといえます。
まとめ
自己破産で必要な書類と内容をご説明しました。
自己破産ではたくさんの書類を正確に収集して提出する必要があります。
ご自身で必要書類を判断し、収集していくことはご負担も大きくなることでしょう。
弁護士に依頼していただくことで、必要書類の判断を任せることができるため、ご負担を軽くし、スムーズに手続きを進めることができます。
自己破産の必要書類についてご不安な点がございましたら、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
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