自己破産の手続中にしてはいけない7つのこと|手続きの際の注意点

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「自己破産の手続中にしてはいけないことは何なのか」
「自己破産の手続中に制限されることはあるのか」

自己破産を検討している方の中には、どのようなことが制限を受けるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、自己破産の手続中に禁止されていることや制限されることについてご紹介します。

1.自己破産の手続中にしてはいけないこと

自己破産の手続中にしてはいけないこと

自己破産の手続中にしてはいけないことは以下の7つです。

  1. 財産隠し
  2. 新たな借金
  3. クレジットカードによる現金化
  4. 離婚
  5. 無駄遣い
  6. 一部の債権者への返済(偏頗弁済)
  7. 破産管財人への非協力的な対応

自己破産の手続に影響することばかりなので、どのようなことが禁止されているのかチェックしておきましょう。

(1)財産隠し

財産隠しは絶対にしてはいけません。

自己破産では資産価値の高い財産が没収されてしまうために、それを避けるべく意図的に隠す人がいますが、財産隠しはリスクが高い行為です。

手続中に財産隠しを行うと、詐欺破産罪に問われる可能性があり、刑事罰を科されることもあります。

たとえば、以下のような行為は避ける必要があります。

  • すべての預金口座を申告しない
  • 予め銀行口座から現金を引き出して隠す
  • 資産価値の高い財産や現金を第三者に預ける
  • 第三者に財産を譲渡したように偽装する

財産隠しが発覚すると、免責不許可事由に該当するとして、自己破産の手続が認められなくなることにもつながりかねません。

財産を手放すのが惜しいと感じるかもしれませんが、正直に財産を申告しましょう。

(2)新たな借金

自己破産で借金がなくなるからといって、新たに借金をするのは控えましょう。

借金を免除するということは、貸した側に大きな損失が発生します。

止むを得ない事情もなく、悪質と判断された場合は、詐欺等の罪に問われることもあります。

手続中に借金をすることはマイナスに働くので、新たな借金をしないことがポイントです。

(3)クレジットカードによる現金化

自己破産の手続前に、クレジットカードの現金化も避ける必要があります。

クレジットカードの現金化とは、クレジットカードで価値の高い商品を購入し、すぐに売却することで現金を手にすることです。

たとえば、10万円のブランドバッグをクレジット払いで購入し、質屋で8万円に換金する行為のことをいいます。

クレジット払いは後払いになるため、形式上は借金をしている状態です。

先ほど述べたように、自己破産の直前に借金をすることは、免責不許可事由に該当するので、意図的なクレジットカードの現金化は控えましょう。

(4)離婚

自己破産手続中に離婚することも控えることが大切です。

離婚によって財産分与をすることになるため、資産状況によっては財産隠しを疑われる可能性があります。

たとえば、1000万円の財産をもっており、離婚に伴う財産分与によって、900万円を離婚相手に譲渡した場合は、裁判所や破産管財人に財産隠しと疑いをかけられることもあります。

さまざまな理由で離婚に発展することはありますが、自己破産を検討している方は、免責が下りるまでは行わない方がベターです。

(5)無駄遣い

無駄遣いによる借金は、免責不許可事由に該当することがあります。

たとえば、生活上必要のない以下のようなことにばかりお金をかけている方は要注意です。

  • ギャンブル
  • 風俗
  • 高級飲食店の利用
  • 高級ブランド品の購入

上記のようなことが原因で借金を抱える人は、自己破産後も同じような理由で借金を繰り返す可能性が高いと判断されることもあります。

自己破産前に高頻度で無駄遣いを繰り返している場合は、免責が下りないこともあるため、自己破産前に金銭感覚の改善を図りましょう。

(6)一部の債権者への返済(偏頗弁済)

一部の債権者に優先して返済してしまうと、偏頗弁済に該当し、債権者平等の原則に反することになるため、免責が認められなくなってしまいます。

特定の債権者に対して、借金の返済や担保の提供をすることを偏頗弁済といいます。

たとえば、手続前に親族にお金を借りていたからと言って返済してしまうと、一部の債権者にのみお金を返済することに該当しますので、免責が認められないこともあります。

自己破産をすることを決めたら、返済行為をしないようにしましょう。

(7)破産管財人への非協力的な対応

破産管財人への非協力的な対応は避けましょう。

自己破産の手続中は、裁判所や弁護士から指示を受けるケースが多々あります。

指示に従わない状況が続くと、免責が認められなくなる可能性が高くなるので、その都度協力的に対応しましょう。

2.自己破産の手続中において4つの注意ポイント

自己破産の手続中に制限されること

自己破産の手続中に制限されることも把握しておくことが大切です。

特に注意すべき点は以下の4つです。

  1. 財産の処分
  2. 公的資格による仕事
  3. 郵便物の受取
  4. 旅行・転居

生活に影響が出ることもありますので、必ず押さえておきましょう。

(1)財産の処分

自己破産の手続が始まると、財産の処分が制限されることを押さえておきましょう。

破産手続では、自己破産者の財産を破産管財人が現金化し、債権者に公平に弁済されることになるため、資産価値の高い財産は回収されてしまいます。

自己破産の申立て後、破産管財人が申請者の所有している財産をすべて管理することになるため、自由に財産を処分することはできません。

ただし、自由財産(破産者が自由に扱える財産)に該当する財産は、処分されずに破産者自ら所有することが可能です。

自由財産例

  • 99万円以下の現金
  • 法律上差押さえが禁止されている財産(生活必需品など)
  • 破産手続開始決定後に新たに取得した財産
  • 自由財産の拡張がされた財産
  • 破産管財人によって放棄した財産

自己破産をしたからといって、すべての財産が処分されるわけではない点を頭に入れておきましょう。

(2)公的資格による仕事

自己破産の手続中は、公的資格による仕事ができなくなります。

たとえば、以下のような職業は一時的に休職せざるを得ません。

資格制限を受ける職業

  • 弁護士
  • 司法書士
  • 税理士
  • 行政書士
  • 家建物取引士
  • 会社取締役
  • 信用金庫役員
  • 商工会議所役員
  • 貸金業者
  • 風俗業管理者
  • 生命保険募集人
  • 警備員
  • 公証人
  • 交通事故相談員

他人の財産を預かって管理する業務を担う職業は、自己破産申請中に制限を受けます。

ただし、免責許可が下りれば、制限は解除され、いままで通りに働くことが可能です。

(3)郵便物の受取

郵便物の受取方法が変わります。

自己破産の手続中は、破産者宛の郵便物は、すべて破産管財人に転送されるようになるため、直接郵便物を受け取れません。

免責が認められた後は、直接郵送されるようになります。

(4)旅行・転居

自己破産の申立てをすると、自由に旅行や引っ越しができなくなります。

裁判所の許可や破産管財人の同意がなければ、自由に長距離移動ができないので、注意しましょう。

なお、自己破産前に旅行や転居は可能ですが、念のため事前に担当弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

自己破産手続中は、避けるべきことや制限されることがいくつもあります。

特に禁止されていることを行うと、免責が認められない可能性が高まるので、すべて把握しておくことが大切です。

また、一時的に生活に影響を及ぼすケースがあるため、手続に制限されることも押さえておきましょう。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

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