自己破産の免責とは?免責が許可されない六つのケースを紹介
自己破産について調べると免責という言葉を目にされることがあるでしょう。この免責という言葉が、自己破産の手続とどういう関係があるのか気になる方も多いと思います。
免責とは、自己破産の手続後、債務の支払義務を免除してもらうことです。ただし、自己破産の手続を進めても免責許可の決定がされない場合というのも定められています。
この記事では自己破産における免責とは何か、免責がされないのはどういうケースかなどについて紹介します。
自己破産の免責の仕組みを知り、免責の見通しを立てた上で破産手続を進め、生活再建を目指しましょう。
1.自己破産の免責とは
自己破産の免責とは、債務を支払う義務を免除されることをいいます。
免責の許可を出すのは裁判所です。
裁判所から出された免責許可決定が確定すれば、借金を支払う必要がなくなります。
ここからは自己破産の免責の趣旨や、免責が得られるまでの流れなどを紹介します。
(1)自己破産の免責制度の趣旨
自己破産手続では破産者の財産を換価して債権者へ配当します。しかし、配当にあてられるような財産が一切ないという破産者もいます。
そのような場合、破産後も債務の支払義務が残ってしまうとしたら、破産者は自己破産の手続をすることなく、残った借金返済のために闇金などに手を出すしかなくなってしまいます。
そうなると、債務者の経済生活の再生の機会を確保するという破産法の趣旨(破産法1条)を達成することはできなくなってしまいます。
そこで、破産手続とともに設けられた制度が免責です。破産手続により財産を配当しても残ってしまった債務について、免責制度で支払義務を免除できるようにしたのです。
債務者を借金の負担から解放し、生活再建の助けとするのが免責制度の趣旨です。
(2)免責許可が決定するまでの流れや期間
自己破産手続をしてから免責許可を得られるまでの流れを把握しておきましょう。
- 破産手続開始の申立て
- 破産手続開始決定
- 財産の配当・債権者集会(管財事件および少額管財のみ)
- 破産手続終了(または廃止)、免責審尋、免責許可決定
裁判所に自己破産の申立てをすると、裁判所が申立書類を確認し、必要があれば補正を行ったり、裁判所によっては裁判官との面談が行われます。
補正、面談の結果、申立人の状況を把握し、破産手続をどのように進めるかを判断した上で破産手続開始決定が出されます。
自己破産の進め方は、以下の3種類です。
- 同時廃止
- 管財事件
- 少額管財
上記3つの中でも、少額管財は管財事件の中で条件に当てはまると適用される手続です。どの種類になるかは破産手続開始決定時の申立人の財産状況により決まります。
破産者に財産がある場合は管財、少額管財事件となります(財産換価型)。また、破産者に免責不許可事由があるかどうか調査する必要がある場合にも同様です(免責調査型)。
破産者に財産がある場合の管財事件や少額管財では、裁判所によって選任された破産管財人が破産者の財産の調査や換価をし、債権者への配当が行われます。
また、3か月に1回程度の頻度で、財産の換価状況や今後の方針などを報告する債権者集会が開かれます。
財産の換価および配当、または免責の調査が終了したところで、管財事件や少額管財の手続は終了となります。
同時廃止については財産の換価や配当がないので、破産手続開始とともに破産手続も終了(廃止)となります。手続開始と同時に廃止となるため、同時廃止事件と言われているのです。
破産手続終了後、免責審尋(裁判所による申立人からの聞取り)の上、裁判所から免責許可をしてもよいかの判断が下されます(免責許可決定または免責不許可決定)。
免責許可決定が出されてから、2週間以内に債権者から異議が出なければ、免責許可決定が確定します。
破産申立てから免責許可の確定が得られるまでの期間については、以下のとおりです。
手続方法 | 免責許可決定までの期間の目安 |
同時廃止 | 1~3か月 |
少額管財 | 4~6か月 |
管財事件 | 6か月~1年 |
以上の期間はあくまで目安ですので、事件の内容によって変動があります。
(3)免責許可決定を受けても免責されない債権がある
自己破産手続によって免責許可が決定した場合、借金の支払義務はなくなりますが、一部の債務は免責されません。この債務を「非免責債権」と呼びます。
非免責債権は破産法253条1項各号に規定されている以下の債権です。
一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく 損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
四 次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法752条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務(婚姻費用)
ロ 民法760条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務(同上)
ハ 民法766条(同法第749条、第771条及び第788条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務 (養育費)
ニ 民法877条から第880条までの規定による扶養の義務(親族間 の扶養義務)
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
五 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
六 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続 開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
七 罰金等の請求権
出典:破産法 第二百五十三条(免責許可の決定の効力等)|e-Gov法令検索
以上の債権を具体的に示すと以下のようなものになります。
- 国民健康保険や国民年金の保険料
- 固定資産税や住民税などの税金
- 窃盗や詐欺をおこなったことによる損害賠償金
- 暴行をして傷害を与えた被害者に対する損害賠償金
- 罰金や科料
- 追徴金や過料
債権者がいることを知りながら、申立て時にその債権者を債権者一覧表に記載しないと、その債権も非免責債権となってしまいます。
これらの非免責債権には免責の効力が及ばないため、自己破産で免責許可決定がされても返済義務は残り続けます。
2.自己破産で免責が不許可になるケース
自己破産では非免責債権以外の債権は免責が許可されれば返済義務はなくなりますが、免責が許可されない場合もあります。
免責が認められないケースを免責不許可事由といい、破産法252条第1項各号に規定されています。
ここからは免責不許可事由になる事例を紹介します。
(1)借金をした理由がギャンブルや浪費である
借金の原因がギャンブルなどの射幸行為や浪費であった場合、免責が認められない可能性があります。
具体的にはパチンコや競馬などのギャンブル、過度な信用取引を行ったFXや株式投資などが射幸行為に該当することがあります。また、収入に比して大きな額の趣味への支出、高級品の購入などは浪費と判断されることがあります。
(2)自己破産することを見越して借金をした
自己破産をするような状況にあることを認識しながら、そのような事実がないと信じさせるために虚偽の事実を告げて信用取引をした場合、免責が認められなくなります。
たとえば、収入や資産について実際より多く申告したり、債務があるにもかかわらずほかに債務はないと申告したりしてクレジットカードを作ったり、借入れをしたりした場合、これに該当する可能性があります。
これは、免責が不許可となるだけではなく、詐欺罪に問われる可能性もある行為ですので、絶対にやめてください。
(3)財産の価値を減少させる行為をした
債権者への配当を減少させる目的で財産を隠匿、損壊したり、債権者に不利益な処分をすることは、免責不許可事由に該当します。
たとえば、不動産などを低価格で売却する行為などはこれにあたります。
故意に財産を隠匿、損壊した場合は免責が不許可となるだけでなく、詐欺破産罪(破産法265条)にも該当する行為です。刑事処分を受ける可能性がある行為であることを知っておいてください。
(4)裁判所に虚偽の申告をした
裁判所に対して虚偽の申告や説明をすると免責が許可されません。
たとえば、自己破産手続の申立て時に特定の債権者を記載しなかった、裁判所の調査時に嘘をついたという場合です。
このようなことを行う事例として考えられるのは、保証人がついている借金や家族からの借金について、保証人や家族に迷惑をかけたくないという理由で債権者一覧表に載せないという事例です。
(5)裁判所や管財人の調査に協力しない
自己破産手続の申立てをすると、裁判所や管財人から債務や財産についての調査を受ける場合があります。この調査に対して真摯に協力しなければ免責は許可されません。
また、破産管財人や保全管理人などの職務を妨害するような行為がある場合も同様です。
たとえば、破産管財人に対する説明を拒否する、破産管財人が引き渡すように要求した財産を引き渡さないなどが該当します。
(6)前回免責を受けてから7年経過していない
自己破産は回数に制限がないので、複数回申立てをすることができます。しかし、原則として前回の免責許可決定が確定した日から7年を経過していなければ免責は認められません。
ただし、前回の免責から7年を経過していない場合でも、病気で働けず借金の返済ができなくなったというように、やむを得ない事情があるときには、後記の裁量免責を認めてもらえることがありますが、かなり限定的であると言わざるを得ません。
3.免責不許可事由がある場合の対処法
免責不許可事由があると、原則として自己破産をしても免責許可は下りません。
しかし、実際には、免責不許可事由があっても裁量免責という制度で免責が得られるケースがほとんどです。
日本弁護士連合会の調査によると、免責不許可の確率は2017年は0.57%となっています(注1)。
また、2014年は0%です(注2)。このようにほとんどの人は免責許可決定を受けており、免責が不許可となるケースは実際にはめったに見られません。
(1)裁量免責が認められる可能性
自己破産手続で免責不許可事由に該当しても、裁量免責という制度(破産法252条2項)によって免責が許可される可能性があります。裁量免責とは諸般の事情を考慮して、裁判所の判断で免責を認めるものです。
裁量免責が認められるのは、免責不許可事由に該当する行為があるものの悪質とまではいえず、破産手続後は反省して手続に協力しているというような場合です。
一方、裁量免責が認められないのは、免責不許可事由に該当する行為が悪質(浪費の程度がはなはだしい、高額な財産隠しをしているなど)で、免責不許可事由に該当する事実に関する破産管財人の調査にも協力しない、というような場合です。
免責不許可事由に該当していても裁量免責となるケースがほとんどですので、自己破産を諦めるよりも、まず弁護士に相談しましょう。
(2)免責が不許可になったら即時抗告をする
免責が不許可となった場合、その決定に対して異議申立てをおこなうことができます。即時抗告(破産法252条5項)といい、異議が認められれば裁判所の決定は覆り、免責は許可されます。
ただし、そもそも免責が不許可となるのはかなり限定的であり、十分な検討が行われたうえでの判断であることが多いため、翻って即時抗告が認められるケースは相当少ないと思われます。
(3)免責が許可されないなら個人再生を検討する
裁量免責、即時抗告のいずれも認められなかった場合でも、個人再生であれば可能かもしれません。
破産でいう免責不許可事由のようなものは、個人再生には規定されていませんので、これにより、債務全額ではないものの、その支払義務を減縮できる可能性があります。
ただし、個人再生では減縮した債務を返済していく必要があるので、安定した収入を得ていることが条件となります。
自己破産の免責が許可されなかった際には個人再生ならば可能なのかどうか、弁護士に相談してみるとよいでしょう。
まとめ
自己破産手続は免責許可が決定することで借金の返済義務がなくなります。つまり、免責許可を得ることが自己破産手続の最終的な目標と言えます。
免責許可が決定しても、非免責債権に関しては返済義務がなくなることはないので注意しましょう。
また、免責不許可事由に該当すると免責されない可能性があります。
しかし、裁量免責という制度が設けられているので、自己破産手続で免責が不許可になることはほとんどありません。
ご自身が免責許可決定を受けられるか不安な方は、まず弁護士に相談してみましょう。
出典:注1 2017年破産事件及び個人再生事件記録調査 28ページ|日本弁護士連合会
注2 2014年破産事件及び個人再生事件記録調査 47ページ|日本弁護士連合会
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