破産管財人に選ばれる弁護士の役割とは?管財人が選ばれたときの注意点
「破産管財人の弁護士にはどんな役割があるのか」
「破産管財人が選ばれたときは、どのようなことに気を付けるべきなのか」
自己破産を検討している方の中には、破産管財人がどんな役割を果たしているのか気になっている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、破産管財人の弁護士の役割や破産管財人の主な活動内容、管財事件になったときの注意点についてご紹介します。
1.破産管財人の弁護士の役割
破産管財人とは、破産手続上、破産財団に属する財産を管理し処分する権利を有する者のことをいいます(破産法2条12号)。
破産管財人が担う役割は、主に次のようなものが挙げられます。
- 債務者の負債額の調査
- 債務者の財産状況の調査(債務者が財産を隠していないか、意図的に流出させていないか等)
- 債務者に対する債権者の調査
- 債務者の生活状況等の調査
- 最終的に借金の免除を認めても良いかどうかの調査、裁判所への報告、意見陳述
- 破産財団の管理及び換価処分等
これら幅広い役割を担っているため、破産管財人には法的知識があることに加え、公正中立であることが求められます。
なお、破産管財人は裁判所の判断で選ばれることになりますので、債務者が選ぶことはできません。
破産管財人に選任されるのは、その裁判所が管轄する地域を担当する弁護士会が管理する破産管財人候補者名簿に登録されている弁護士です。
裁判所は、破産管財人候補者名簿に登録されている弁護士の中から、事案の内容に応じて適切だと思われる弁護士を破産管財人として選任します。
2.破産管財人の破産管財業務
破産管財人の破産管財業務についてご紹介します。
(1)破産財団の管理に関する業務
破産管財人の破産管財業務の一つは、破産財団の管理に関する業務です。
破産管財人のメインの業務は、破産財団に属する財産を換価処分し、債権者に対して配当または弁済に充てられる原資を増大させることです。
#1 破産財団の調査
破産財団とは、「破産者の財産又は相続財産若しくは信託財産であって、破産手続において破産管財人にその管理及び処分をする権利が専属するもの」をいいます(破産法2条14項)。
破産管財人は、破産財団に属する財産の管理処分権を持っています(破産法78条1項)。
そこで、債務者がどのような財産を有しているのかを破産管財人は正確に把握する必要があります。
そのため、破産管財人は、破産財団の調査を行います。
#2 否認権の行使、取戻権行使への対応
破産財団を適切に確保するために、否認権行使や取戻権の行使に対応する必要があります。
たとえば、破産手続きの開始直前に、債務者が重要な財産を売り払っている場合があります。
この場合、破産管財人は、否認権を行使して、当該売買契約をなかったことにし、流出した財産を取り戻すことができます。
また、破産財団を構成するようにみえた財産が、実は第三者の財産だった場合があります。
このような場合、本当の所有者は取戻権を行使して、自己の財産を回復しようとします。
破産管財人は、この取戻権の行使に対応して、本来の所有権者に財産を返還することができます。
#3 破産財団の管理・換価処分
破産管財人は、破産財団を管理処分する権限を有しますが、その目的は、上述したように、破産財団に属する財産を換価処分し、債権者に対して配当または弁済に充てられる原資を増大させることにあります。
そのため、破産管財人には、ただ単に破産財団を占有するだけではなく、適切に管理すること、適正価格で換価処分をすることが求められます。
たとえば、破産財団の減少を招くような契約が存在する場合には、財産の減少を最小限に食い止めるために、破産管財人には、契約関係を解消することが求められます。
また、回収が可能な債権を有する場合には、当該債権を行使して、破産財団を増大させることが求められます。
(2)債権の調査・債権者対応・配当に関する業務
形成された破産財団を、破産法の定めるところによって公平に弁済または配当を行うのが破産管財人の重要な業務です。
そのため、破産管財人は、債権調査を行い債権を確定させ、さらにその債権の優劣を整理し、それに基づいた弁済または配当を行います。
#1 債権調査
破産手続が開始すると、裁判所は各債権者に対し、債権届出書や交付要求を提出するように求めます。
破産管財人は、提出された債権調査票等をもとに調査をし、その債権の認否を判断します。
たとえば、債権者は債権があると主張しているけれども、客観的な資料によって金銭的なやり取りがあったことを確認することができない場合は、債権があるとは判断できないケースもあります。
このように破産管財人は債権疎明資料をもとに債権を調査して認否し、確定させていきます。
#2 債権者対応
破産管財人は、債権者からの問合せ対応も行います。
破産手続を経ると、最終的に債権者の債権が履行されないことになります。
そのため、債権者は最大の利害関係を有します。
また、破産管財人は、総債権者の利益を図るべきであるとされています。
そこで、破産管財人は、債権者からの問合せに対して情報提供をする、求められる届出を作成するなどの業務を担うこともあります。
特に、労働債権を有する労働者に対しては、未払賃金立替制度のための手続書類の発行に協力するという業務もあります。
#3 債権者に対する弁済または配当
破産財団が形成され、債権が確定すると、破産管財人はそれらに基づいて、債権者に対して弁済または配当を実施します。
このとき、債権の性質によって、優先的に弁済を受けられる債権や公平に配当を受ける債権に分かれます。
具体的には、もっとも優先順位が高いのは財団債権です。
財団債権は、破産財団の中から優先的な弁済を受けることができます。
そのほかは、破産債権に分類されます。破産債権の中でも優劣があり、優先的破産債権、一般の破産債権、劣後的破産債権の順に配当を受けることができます。
(3)裁判所への報告、意見陳述
破産管財人は、債権者集会に出席し、破産管財業務の進行状況等を報告します。
また、裁判所が債務者の免責を許可すべきか否かを判断する際、管財人としての意見を述べます。
ほかにも、自由財産拡張申立に対する意見を述べるなど、中立的な立場で意見をする役割を担います。
3.破産管財人が選ばれたときの注意点
破産管財人が選ばれたときに気を付けなければならないことがいくつかあります。
主な注意点は以下の4つです。
- 管財人費用を払わなければならない
- 説明義務が発生する
- 活動に制限がかかる
- 郵便に制限がかかる
(1)管財人費用を払わなければならない
管財事件になった場合、管財人費用を払わなければなりません。
管財人費用は、基本的に破産の予納金に含まれています。
具体的な金額に関しては、以下の記事にまとめているので、そちらをご参照ください。
(2)説明義務が発生する
債務者には、管財人からの調査や質問に応じる義務があります。
債務事情や財産関係など答えたくない質問であっても、誠実に回答しなければなりません。
たとえ嘘を述べたとしても、調査によって明らかにされます。
また、協力する姿勢が無いとして免責不許可事由に該当する可能性があるため、調査や質問には正直に応えるようにしましょう。
(3)活動に制限がかかる
破産手続期間中は、活動に制限がかかります。
たとえば、引っ越しや旅行をするためには、破産管財人や裁判所の許可を得なければなりません。
破産管財人や裁判所の許可無しに活動した場合、更生の意欲が低いとみなされ、免責許可が下りないことも十分に考えられます。
破産手続が終了すると、自由に活動できるようになるので、手続期間中は必ず破産管財人や裁判所から許可を得るようにしましょう。
(4)郵便に制限がかかる
破産手続期間中は、郵便物を直接受け取ることができません。
債務者の元に郵送される郵便物は、一度破産管財人の元に転送され、隠匿財産がないか等を調査するために、中身を確認されることとなります。
郵便物は調査が完了してから債務者に渡されるので、郵送元から手元に郵便物が届くまで時間がかかります。
なお、速やかに確認する必要のある公共料金や携帯電話などの請求書は、破産管財人に取扱いを相談しましょう。
まとめ
破産管財人の弁護士は、債務者の財産の調査を行ったり、免責許可をすべきか否かについて裁判所に意見を述べたり、債権者に対する弁済または配当をする役割を担っています。
破産管財人には様々な管財業務がありますが、債務者には、これに協力すべき法的義務があります。
破産管財人が選任されたときには、債務者の活動や郵便等に制限がかかりますので、破産手続きの申立代理人や破産管財人に相談しながら過ごしましょう。
弁護士法人みずきでは、自己破産に関する相談を無料で受け付けておりますので、自己破産を検討している方はお気軽にご相談ください。
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