個人再生手続きの依頼中でギャンブルをするとどうなる?影響と解決策

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「個人再生の手続を弁護士に依頼しているのにギャンブルをしてしまって、手続がどうなるか心配」
「ギャンブルが原因で借金をしてしまった場合、個人再生はもうできない?」

個人再生の手続の依頼中にギャンブルをしてしまった、あるいは、ギャンブルをしてしまいそうという場合、個人再生手続にどのような影響が生じるのか気になると思います。

実は、個人再生の手続を弁護士に依頼したあとでギャンブルに手を出してしまった場合、その事実は手続の中で不利に扱われることとなり、最悪の場合、手続を進めることができなくなってしまうのです。

本記事では、ギャンブルによる借金について個人再生手続を行うことができるのか、個人再生の依頼中にギャンブルをしてしまうとどのような影響を受けるか、もしギャンブルをしてしまった場合の解決策などについてご説明します。

この記事が、ギャンブルが個人再生の手続にどのような影響を与えるのかを知って、個人再生の手続を成功させる参考となれば幸いです。

1.ギャンブルによる借金でも個人再生は可能なのか

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個人再生は、債務整理の方法のうちのひとつです。

債務額を5分の1程度に減額した内容で再生計画案を作成し、裁判所の認可を経てその計画どおりに借金返済することで、残りの借金が免除されます。

個人再生手続の特徴はいくつかありますが、ギャンブルから生じた借金であっても整理することができるというのも特徴のうちのひとつです。

以下では、個人再生手続を利用できる理由、個人再生の手続について簡単にご説明します。

(1)ギャンブルによる借金でも個人再生手続が可能な理由

債務整理の中でのギャンブルはあまり好ましいものではないと考えられています。

なぜならば、債務整理の目的は多重債務に陥った債務者の経済的更正にあるためです。

本来得られるはずだった債権者の利益を犠牲にして債務者を救済することになりますので、債務整理中の方が経済的更正以外のことにお金を使うことは好ましいこととは考えられていません。

債務整理手続の中で一番ギャンブルと相性が悪いのは自己破産です。

自己破産は、借金返済が困難であることを認めてもらった上で、一定以上の価値のある財産を手放して債権者への配当にあてたあと、借金の支払義務の免除(免責)を受ける手続です。

この手続において、ギャンブルは、免責を受けられなくなる事情(免責不許可事由)とされています。

実際は、「裁量免責」といって裁判所の判断によって免責されることはありますので、ギャンブルがあった場合は一切免責されないというものではありません。

しかし、ギャンブルがある方の場合は裁量免責を狙える範囲なのかをよく検討したうえで自己破産を選択する必要があります。

もっとも、ギャンブルによって多重債務に陥った方も経済的更正の機会は与えられるべきです。

そこで選択肢としてあがるのが個人再生です。

個人再生は以下の要件に該当する方がとることができる手続です。

借金の理由によって、申立てが棄却されたり再生計画が不認可となったりする定めはありません。

浪費やギャンブルによる借金であっても、個人再生の対象として申立てをすることができる、ということになります。

  • 将来的に継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあること
  • 債務総額が5000万円以下であること
  • 債務者が自然人である(法人でない)こと

(2)個人再生手続を利用する条件と借金の返済額

#1:個人再生手続を利用する条件

繰り返しになりますが、個人再生手続を行うには、

  • 将来的に継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあること
  • 債務総額が5000万円以下であること
  • 債務者が自然人である(法人でない)こと

という条件を満たす必要があります。

債務者の雇用形態は問われませんので、アルバイト、パート、個人事業主であっても「継続的かつ反復した収入の見込みがある」と裁判所に判断されれば、個人再生をすることは可能です。

また、借金の理由が問われないことも、(1)でご説明したとおりです。

そのほか、再生計画が認可されるまでにはいろいろと細かい条件がありますが、それらについては以下の記事をご覧いただければと思います。

個人再生の条件とは?手続方法やメリット・デメリットについて解説

#2:個人再生を利用した場合の返済額

個人再生手続には、「小規模個人再生」と「給与所得者個人再生」の二つがあります。

小規模個人再生の手続においては、債務額に従って定められる最低弁済額か申立人の財産額から算定した清算価値総額のいずれか高い方を原則3年、事情により5年で返済する再生計画を定め、これに従った返済をしていくことになります。

最低弁済額は以下のとおりの区分で定められます。

債務の総額 最低弁済額
100万円未満 債務全額
100万円以上500万円以下 100万円
500万円を超え1500万円以下 債務額の5分の1
1500万円を超え3000万円以下 300万円
3000万円を超え5000万円以下 債務額の10分の1

一方、清算価値総額は、20万円以下(現金については99万円以下)の財産を除いた、住宅、自動車、預金、有価証券、保険解約返戻金、退職金(見込額の8分の1)などの財産の価値を合わせた金額によって決まります。

給与所得者等再生では、可処分所得の2年分の額以上の金額を返済額として定める必要があります。

「可処分所得」とは、債務者の税引き後の所得から必要最低限の生活費を差し引いたもののことです。

このようにしてそれぞれの手続で決められた金額まで借金を減額し、返済していくことにするのが個人再生の手続です。

2.ギャンブルが個人再生手続中に及ぼす影響とは

交通事故発生から示談交渉までの流れ

ご説明したとおり、ギャンブルによる借金でも、個人再生手続の対象とすることができます。

しかし、個人再生の依頼中にギャンブルをしてしまうと、以下のように、手続の中で不利な影響を受けることになってしまいます。

最悪の場合、個人再生が失敗に終わってしまいますので、依頼中のギャンブルは厳禁というべきでしょう。

(1)再生計画案が不認可に終わる可能性がある

先にご説明したとおり、個人再生では、最終的に、減額した借金を原則3年間で返済していくことになります。

しかし、弁護士に依頼した後にギャンブルをしてしまった場合、ギャンブルや浪費をやめられないことにより返済にあてるお金を確保できず、再生計画どおりの返済ができないと判断され、裁判所に再生計画を認可してもらえない可能性があります。

再生計画が不認可となれば、個人再生は失敗となります。

このように、依頼中のギャンブルは、個人再生の失敗につながることがあります。

弁護士への依頼後、裁判所への申立て前であれば、申立ての際、依頼後にギャンブルをしてしまったことを反省し二度と繰り返さないことを約束することにより、再生計画の不認可はされずに済むかもしれません。

しかし、その場合も次の(2)のように、再生計画によって定める返済額が高額にされてしまう可能性が残っています。

(2)返済額が増額される可能性がある

先にご説明したとおり、個人再生手続では、申立人の財産から算定した清算価値総額を再生計画に定める返済額とするケースがあります。

このように財産がある程度ある場合に、依頼後にギャンブルにお金を使って財産を目減りさせていると、残っている財産にギャンブルで消費した金額を上乗せして返済計画を定めなければならないとされることがあります。

この場合、ギャンブルで消費した分を今度は債権者に対して支払わなければならなくなります。

ギャンブルによって返済額が増額となってしまう可能性もありますので、依頼中のギャンブルは避けるべきです。

3.個人再生依頼中にギャンブルをしてしまった場合の解決策

2でご説明したとおり、個人再生の手続の依頼中にギャンブルをしてしまうと、再生計画が不認可となる可能性があります。

個人再生手続が失敗に終わった場合、再度個人再生手続を弁護士に依頼し、今度こそ依頼中にギャンブルしないようにして手続を進めるということは可能です。

しかし、せっかく手続をとるのですから1度で成功させたいものです。

もし弁護士に依頼した後にギャンブルをしてしまった場合は、すぐに依頼している弁護士に打ち明けるようにしましょう。

ギャンブルをしたことは、裁判所に提出する家計収支表や通帳等の記載からバレてしまいます。

ギャンブルをしたことをすぐに弁護士に相談し、申立て前に二度とギャンブルをしないことを誓約し、申立て後もギャンブルを行わずにいれば、裁判所もギャンブルによる家計圧迫の可能性は低いと判断することになり、再生計画の認可につなげることができるかもしれません。

逆にギャンブルをしたことを黙っていてそれが裁判所の指摘により発覚したという場合、反省がなく、その後もギャンブルを繰り返す可能性が高いと判断され再生計画が不認可とされてしまうことにつながりかねません。

そうなることを避けるためにも、早めに弁護士に相談し、どのように手続を進めていくかしっかり相談しましょう。

このように、個人再生の依頼中のギャンブルは悪い影響しかなく、不利益を避けることが困難です。

個人再生を弁護士に依頼した場合は、依頼中のギャンブルは絶対に避けるべきですし、万が一依頼中にギャンブルをしてしまった場合は、正直に弁護士に相談するようにしましょう。

まとめ

本記事では、ギャンブルによる借金でも個人再生手続ができること、その一方で弁護士に個人再生手続を依頼中のギャンブルは手続に悪影響を及ぼすことをご説明しました。

依頼中にギャンブルをしてしまうと、負担なくリカバリーすることは難しくなってしまいます。

ギャンブルを理由とした借金について、弁護士に個人再生の手続を依頼する場合は、弁護士の指示をよく聞いて、依頼中のギャンブルなどによって手続が失敗に終わらないよう、十分に気を付けて手続を進めましょう。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。