個人再生をすると退職金は没収されるのか?退職金をもらうタイミングによる影響
「個人再生をすると退職金はもらえなくなってしまう?」
「個人再生を考えているが手続に入る前に退職金をもらった方がよい?」
個人再生を検討している方の中には、退職金がどのような影響を受けるのか不安になっている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、個人再生と退職金との関係についてご紹介します。
1.個人再生をすると退職金は処分されるのか
結論から述べると、個人再生をしても退職金を処分されることはありません。
個人再生は、裁判所に債務の支払が困難であることを認めてもらい、債務をその金額に応じて一定の割合で圧縮してそれを原則3年で返済する返済計画案を作成し、裁判所にその認可決定を受けた上で、計画どおりの返済を行い、残りの債務の免除を受ける手続です。
個人再生では、自己破産と異なり、退職金を含む財産を処分する手続が予定されていません。
そのため、退職金が処分されるということはありません。
一方で、個人再生では、自己破産をした場合に、財産の配当をしたときよりも多くの金額を債権者が受け取るようにしなければならないという原則(清算価値保障原則)があります。
退職金も破産手続で配当される財産に含まれるため、退職金の支払を受けられるという状況だと、個人再生後に返済していく金額が大きくなるという影響を受けることがあります。
退職金を受け取るタイミングによって、個人再生手続の中で退職金のうちどれくらいを財産と扱うかどうかが変わってきます。
次は、その分類パターンを見てみましょう。
2.退職金を受け取るタイミングによる影響
退職金を受け取るタイミングは、3つのパターンが考えられます。
- 当分退職予定がない
- 近いうちに退職金を受け取る予定がある
- 個人再生の認可決定前にすでに退職金をもらっている
先ほど述べたように、どのタイミングで退職金を受け取るかによって退職金のうちどれくらいを財産と扱うかが変わります。
以下、順に説明します。
(1)当分退職予定がない
まず、退職予定がない場合は、退職金を受け取ることが明らかとはいえません。
将来会社が倒産するなど、退職金を受け取れなくなる可能性もあるからです。
しかし一方で、その時点で退職すれば受け取れるというものである以上、まったく財産として扱わないというのも難しいと考えられます。
そこで、裁判所では、個人再生の認可決定時点での退職金見込額の8分の1を所有財産とする傾向があります。
地方裁判所によっては、8分の1以外の割合で評価するということもあるため、この割合は目安として考えておくとよいでしょう。
また、8分の1とした金額が一定の金額を超えるかどうかによっても扱いが変わる可能性があります。
たとえば、東京地裁では、退職金の8分の1を資産としますが、その金額が20万円を超える場合にのみ退職金を財産に計上することになっています。
そのため、退職金が160万円未満であれば、退職金は個人再生において財産と扱わないことになります。
(2)近いうちに退職金を受け取る予定がある
法律上、退職金債権の内4分の3は差押えを受けない財産とされています(民事執行法152条)。
そのため、個人再生手続においても、上記の範囲は債務者の手元に残すべき、ということになっています。
以上のような法律があることから、退職が確定しており、退職金の受け取り日が決まっている場合は、受け取り予定の退職金の4分の1を財産に計上します。
たとえば、受け取る退職金が200万円の場合、個人再生の手続では、50万円の財産を持っていると判断されることになります。
(3)個人再生の認可決定前に退職金をもらっている
個人再生の認可決定前に退職金を受け取っている場合は、現金または預貯金として扱われます。
受け取った退職金は退職金債権ではなくなり、(2)でご説明した法律が適用されなくなるためです。
退職金を受け取った直後だと、所有している財産が多額となり、返済額が大きくなってしまう可能性があります。
そのため、退職金の受け取り時期が迫っている場合は、急いで申立てを行った方がよい場合もあるでしょう。
申立てを急ぐべきかどうかを検討するにあたっては、弁護士への相談をお勧めします。
受け取った後の現金や預貯金についても、裁判所によってどの程度が財産とされるかが変わります。
たとえば、東京地方裁判所では、現金は99万円を除いた残りの金額、預貯金は20万円を超えた場合は全額が財産に計上されます。
預貯金は、20万円を超えなければ財産に計上されない扱いとなっています。
3.清算価値に計上されないケース
退職金として支払われるものの中には、個人再生の手続で、財産としての価値(清算価値)がないとされるものがいくつかあります。
たとえば、以下の退職金は財産として計上されません。
- 確定拠出年金
- 確定給付企業年金
- 厚生年金基金
- 中小企業退職金共済法に基づく退職金
- 社会福祉施設職員等退職手当共済法に基づく退職金
- 小規模企業共済制度に基づく退職金
これらの資産は、それぞれの根拠となる法律によって差押禁止財産とされています。
そのため、個人再生の手続においても、債権者に配当すべき財産として扱われることはありません。
退職金の内訳をチェックして、上記に該当するものがあれば、財産として計上されないことを覚えておきましょう。
4.退職金を証明する方法
個人再生の手続においては、退職金の金額を証明する必要があります。
この証明は、退職金見込額証明書や退職金の明細を提出することによって行います。
退職金を受け取っていない場合は、会社に退職金見込額証明書を発行してもらいましょう。
退職金を受け取っている場合は、退職金支給通知書を用意すれば問題ありません。
退職金が発生する勤続年数は、企業の就業規則によって異なります。
一般的には、最低勤続年数が3年と設定されている企業が多いですが、それぞれの企業によって異なっているのが実情です。
そもそも退職金の支払を受けられない場合は、そのことを証明しなければなりません。
就業規則や雇用契約書に記載があればその写しの提出で足ります。
明確な記載がなければ、会社に退職金がないことを記載した書類を用意してもらいましょう。
まとめ
個人再生をしたからといって、退職金が処分されることはありません。
ただし、退職金は再生手続において財産として扱われ、個人再生後に支払う金額に影響を及ぼすことはあります。
一方で、退職金の中には個人再生の手続上、財産に計上されないものもあるので、退職金の内訳について調べておきましょう。
退職金が個人再生後の返済額に与える影響は、各地方裁判所によって異なるため、詳細は弁護士に相談するのがおすすめです。
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