個人再生手続きではやってはいけないこととは?手続きを無事に終えるためのポイントを紹介
個人再生手続きをご検討の方の中には「何かやってはいけないことがあるのでは」、「自分はやってはいけないことをしていて個人再生手続きはできないのではないか」とご不安に思われている方もいらっしゃるかと思います。
この記事では個人再生手続きを進めるうえでやってはいけないこと、注意点をご説明します。
この記事の内容を事前に知っていただき、無事に個人再生の手続きを進めていただけたら幸いです。
1.個人再生でやってはいけないこととは
個人再生手続きで裁判所から債務圧縮を認めてもらう認可を受けるため、やってはいけないことをご説明いたします。
こちらに記載していることを行っていた場合、裁判所から認可の決定をうけられない(民事再生法174条)、再生手続きが廃止される(民事再生法191条から193条)可能性がありますのでご注意ください。
(1)不認可事由に該当すること
#1:継続的な返済ができない
民事再生法174条2項では再生計画の不認可事由として「再生計画が遂行される見込みがないとき」という項目が定められています。
再生計画が遂行される見込みがない、つまり継続的な返済ができない可能性があるとみなされると、再生手続きは不認可となります。
再生計画が遂行される見込みがあるかを裁判所が判断するために「履行テスト」というものが設けられることがあります。
「履行テスト」とは個人再生手続きの開始決定後に裁判所から指示されるもので、毎月の返済相当額を捻出できるかどうか、裁判所が確認するためのものです。
各裁判所によって異なりますが、再生委員もしくは申立代理人の口座へ振込にて毎月入金する方法がよくみられます。
万が一履行テストの入金ができていなかったり、遅れてしまったりすると個人再生の認可がおりない可能性があるためご注意ください。
#2:手続き中に新たな借入れを行う
個人再生の手続きを行うということは、すでにある借金を返済することができない、つまり支払不能の状態です。
支払不能の状態にもかかわらず新たな借入れを行うと、悪意をもった行為と裁判所が判断する可能性があります。
その場合新たな借金は「悪意による不法行為に基づく損害賠償請求権」とみなされ、個人再生手続きに含められない「非減免債権」(民事再生法229条3項1号及び2号)となります。
「非減免債権」は個人再生手続きにおいても圧縮できる債権とはならないため、借入れた全額を返済しなければなりません。
せっかく再生手続きを行っても毎月の返済額が大きく、返済が継続できない可能性があるとみなされると再生手続きの不認可事由となってしまうためご注意ください。
#3:特定の債権者に優先して返済を行うこと
個人再生には「債権者平等の原則」というルールがあります。
債権者平等の原則とは、借金をしているカード会社、銀行や個人の方を含め、全ての債権者を平等に扱わなければならないというルールのことをいいます。
しかし、それに背いて特定の債権者に優先して返済を行うことは「偏波弁済(へんぱべんさい)」といい、裁判所から指摘を受ける行為です。
万が一偏波弁済が発覚した場合は、個人再生の申立てを棄却されてしまう可能性があります。
また偏波弁済は「否認対象行為」にあたります。
否認対象行為とみなされた場合は、偏波弁済した金額を清算価値に含めなければなりません。
清算価値が上がると毎月の返済金額が上がってしまう可能性があります。
毎月の返済金額を捻出できない場合は、再生計画が不認可になってしまうことにもつながりますのでご注意ください。
(2)再生手続きの廃止事由に該当すること
#1:再生計画案の提出期限を守らない(民事再生法191条1項及び2項)
個人再生手続きの開始決定が出されると、裁判所が定めた期限に従い各書類を提出しなければなりません。
特に返済計画を定める「再生計画案」については期限までに提出しなければならないことが条文でも定められています。
万が一期限までに提出できなかった場合は個人再生手続きが廃止されてしまうため期限は必ず厳守しましょう。
(3)罰則に該当すること
#1:裁判所に対して虚偽の申告を行うこと(民事再生法第258条1項)
個人再生手続きの申立て時や手続きの間には、収支の状況や資産の状況などを正確に申告する必要があります。
万が一虚偽の申告があった場合は罰則に該当する可能性もあるため、裁判所には必ず事実を申告するようにしましょう。
2.個人再生の注意点
個人再生を検討するうえでは、やってはいけないこと以外にも注意するべきポイントがあります。
ここでは個人再生の注意点についてご説明します。
(1)再生債権総額が5,000万円以上は手続きできない
個人再生手続きでは、開始決定の要件として再生債権総額が5,000万円を超えていないことが定められています。
再生債権とは個人再生手続きの中で圧縮される対象となる債権のことです。
なお再生債権に含まれない債権として、住宅資金特別条項を利用する場合の住宅ローン債権や税金等の公租公課などがあります。
ご自身の借金は再生債権に含まれるかどうか、判断に迷われた場合は弁護士に一度ご相談ください。
(2)個人再生をしても借金がゼロになるわけではない
個人再生手続きは、借金の総額や資産の保有状況に応じて、決められた割合で圧縮した借金を分割で返済していく手続きです。
個人再生によって圧縮された借金はゼロにはならず、個人再生の認可を受けた後は、返済が継続していく点は自己破産と異なる点になります。
(3)住宅が保持できないケースもある
個人再生を検討されている方には「住宅ローンがあるが、自宅は失わずに債務整理をしたい」というご希望の方も多くいらっしゃるでしょう。
個人再生手続きの特徴として「住宅資金特別条項」というものがあります。
住宅資金特別条項とは、住宅ローンなどの住宅資金貸付債権については従来どおり返済を継続し、その他の借金のみ個人再生手続きにおいて圧縮して返済をすることで、ご自宅を失わずに個人再生手続きを進めていくものです。
ただしこの住宅資金特別条項を利用するには要件が定められており、それらを全て満たしていなければ利用することができません。
利用要件は下記の通りです。(民事再生法198条)
- 個人再生の開始要件を満たしていること
- 対象となる建物を再生債務者が所有し、居住していること
- 床面積の1/2以上が再生債務者の住居であること
- 対象となる債権が住宅資金貸付債権であること
- 住宅資金貸付債権を保証会社に代位弁済し6か月経過していないこと
- 対象となる住宅に住宅資金貸付債権以外の担保がついていないこと
このように住宅資金特別条項には複数の利用要件がありますので、ご自身が住宅資金特別条項を使えるかどうかについてはぜひ一度弁護士にご相談ください。
(4)個人再生手続きは6か月から1年以上の期間を要する
個人再生は申立後すぐに認可が下りる手続きではありません。
東京地方裁判所の場合、申立後は下記のようなスケジュールで進んでいくことが多いです。
①個人再生手続きの申立
↓3日~1週間
②個人再生委員の選任
※個人再生委員:個人再生手続きを監督する役割を担う人物です。申立後に裁判所が選任します。
↓1週間程度
③個人再生委員との打ち合わせ
↓1週間程度(案件によって前後します)
④個人再生開始決定
↓約1か月
⑤債権届出期限
※債権者が裁判所へ債権額を届け出る期限を指します。
↓約2週間
⑥債権認否一覧表及び報告書(民事再生法124条2項、125条1項)の提出期限
一般異議申述期間の開始
※債権認否一覧表:債権者が届け出た債権額のうち、認める金額と認めない金額を示し一覧にした書面を指します。
※報告書(民事再生法124条2項、125条1項):再生手続き開始時の資産状況や再生手続きに至った事情、勤務状況などを報告する書面を指します。
※一般異議申述期間:債権者、債務者ともに債権額に異議がある場合に、裁判所に異議申立をすることができる期間を指します。
↓約3週間
⑦一般異議申述期間の終期
↓約3週間
⑧評価申立期限
※評価申立期限:一般異議申述期間で異議を述べられた債権者が、裁判所に再生債権評価の申立をすることができる期間を指します。
↓約3週間
⑨再生計画案の提出期限
↓約1週間
⑩書面決議に関する個人再生委員の意見書提出
※書面決議:提出した再生計画案を債権者集会を開催して決議するのではなく、書面により債権者に回答を求める方法で進める旨を決定することを指します。
↓約1週間
⑪書面決議に付する決定
↓約2週間
⑫回答書提出期限
※回答書:債権者が再生計画案に同意するか否かの意見を記すものを指します。
↓約1週間
⑬認可の可否に関する個人再生委員の意見書提出
↓約1週間
⑭再生計画の認可・不認可決定
上記はあくまでも一例です。
案件によっては個人再生委員が追加調査を必要と判断し、開始決定が出されるまでに時間がかかることもあります。
さらに申立て前の債権調査、申立書の作成や必要書類の準備期間が上記に加わるため、トータルで1年近く手続きに時間を要する可能性もあるのです。
もしご自身で1年近く手続きを進めるとなると、ご負担もかなり大きくなるのではないでしょうか。
弁護士にご依頼いただくことで申立て前の準備、申立て後の裁判所や個人再生委員とのやりとりを弁護士に任せ、手続きを進めていくことができます。
個人再生手続きをご検討の際はぜひ一度弁護士にご相談ください。
まとめ
今回は個人再生手続きでやってはいけないこと、注意点をご説明しました。
個人再生を終えるうえでは押さえておくべきポイントがたくさんあります。
この記事で紹介した内容を事前に確認し、無事に手続きを終えられるようにしましょう。
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