個人再生をして家族や勤務先にバレるのはどんなケース?
家族に内緒の借金があり個人再生をしたいと思っていても、個人再生をすることで家族や勤務先にバレてしまうのではと思うと手続をためらってしまうのではないでしょうか。
個人再生をしても裁判所から家族や勤務先に直接連絡がされることはありません。
しかし、直接の連絡がなくとも様々な理由により家族等にバレてしまう可能性があります。
この記事では、個人再生の事実が家族にバレる可能性のあるケースと勤務先にバレる可能性のあるケースをそれぞれご説明します。
1.個人再生が家族や職場にバレる可能性は低い
個人再生は裁判所に申し立てて行う債務整理手続ですが、申し立てたこと自体によって家族や職場にバレるケースは少ないです。
その理由としては、以下のようなものが挙げられます。
(1)官報が一般の人にあまり知られていない
個人再生の手続においては、個人再生中の各段階に達したことと個人再生をした人の氏名、住所などが官報に掲載されることになっています。
官報とは、政府が発行する機関紙であり、行政機関の休日を除いて毎日発行されています。
官報には、法令の公布や公務員の人事異動といった国の行為についての広報や、各省庁、裁判所、会社などの公告に関する事項が掲載されます。
個人再生の手続においては、公告すべき事項が定められており、その定めに従って官報に個人の情報が掲載されるのです。
この公告は、申立人が把握していない債権者に権利を行使する機会を与える目的で行われるものです。
なお、個人再生で官報に掲載されるタイミングは3回あります。
- 再生手続開始の決定時(申立てから約1か月後)
- 書面決議または意見聴取の決定時(申立てから約3~4か月後)
- 再生計画の認可決定時(申立てから約5か月後)
3回も氏名や住所が載るなら家族や勤務先にバレるのではと思うかもしれませんが、官報は一般の書店で販売されているものではなく、一般の人が日常的に見ることはまずありません。官報の存在すら知らない人も多数います。
官報を日常的に見ているのは、税務署や市区町村役場の税金担当者、信用情報機関などです。
そういった職場にお勤めの方でない限り、職場の方に官報掲載事項がわかってしまうことはまずありません。
よって、官報に掲載されることによって、家族や職場の方に個人再生をしたことがバレてしまうことはほぼないと言ってよいでしょう。
(2)個人再生の手続自体は家族や職場への通知されない
裁判所へ個人再生手続の開始を申し立てた際に、裁判所から家族や勤務先に通知されることはありません。
また、申立てを弁護士に依頼した場合、弁護士には職務上知り得た秘密を第三者に漏らしてはならないという守秘義務がありますので、たとえ家族であっても、申立ての内容などを伝えることはありません。
家族に内緒にしたいという場合には、連絡手段等を配慮し、家族に知られることのないような対応も行います。
弁護士に依頼して申立てをしていれば、裁判所からの書類も弁護士事務所に届くため、自宅に送付されてバレてしまうこともありません。
2.個人再生が家族にバレるケース
個人再生は家族に知られずに進められる手続ですが、以下の二つのケースは確実に家族にバレることになります。
- 家族が保証人になっている借金がある
- 家族からの借金がある
また、以下五つのケースは、バレることが確実とは言えないものの、家族に知られずに手続を進めることが難しくなるケースです。
- 家族が家計を管理している
- 生活費の支払にクレジットカードを使用している
- ローンを組もうとする
- ローン返済中の車がある
- 官報を見られた
これらのケースについてご説明します。
(1)家族が保証人になっている借金がある
保証人がついている債務を対象に個人再生を行うと、債権者は債務者本人に請求できなくなった債務について、保証人に対する支払請求を行います。
つまり、配偶者や家族の誰かが保証人になっている借金がある場合、家族が支払請求を受けることになるため、返済ができなくなってしまったことがわかり、個人再生をしたこともバレてしまうのです。
なお、個人再生によって債務の支払義務が軽減されるのはあくまで申立てをした本人だけなので、保証人の保証債務は軽減されません。
保証人も支払が難しい状況なら、保証人も債務整理をする必要があります。
(2)家族からの借金がある
個人再生ではすべての借入先を記載した「債権者一覧表」を裁判所に提出する必要があり、ここに記載された債権者には裁判所から通知が届きます。
家族から借金をしている場合、その家族も債権者の一人として扱わざるを得ないため、裁判所から通知が届くことにより確実にバレてしまいます。
なお、家族に知られたくないことを理由に、故意に債権者一覧表に家族からの借入れを記載しないことは虚偽の申請となり、個人再生手続を進められないことになる可能性があるので絶対にやめましょう。
(3)家族が家計を管理している
個人再生では債務者に借金返済の能力があるかどうかを確認するため、裁判所から家計収支表の提出を求められます。
家計収支表には家族の収入を含めて、世帯全体の収支を記載しなければなりません。そのため、家族が家計を管理しているならば家族の協力が必要不可欠です。
また、自分が家計を管理している場合でも、配偶者に収入があるなら明細書を渡してもらう必要があります。
家計収支表については、申立て前の直近2~3か月分の作成が求められますので、その間の給与明細などが必要となると家族から疑われてしまうことが考えられます。
申立人が家計全体の収支を管理しているのであれば家族の協力なく家計収支表を作成できますが、そうでなければ個人再生することを家族に打ち明けなければならない場合もあるでしょう。
(4)生活費の支払にクレジットカードを利用している
クレジットカードを利用している場合、クレジットカード会社を債権者に含めることになるので、個人再生手続を行うとクレジットカード会社へ個人再生手続の開始が通知されてしまいます。
個人再生手続に入ったことがわかればクレジットカード会社はクレジットカードの利用契約を強制解約しますので、クレジットカードの利用はできなくなります。
クレジットカードによる公共料金や携帯電話料金などの支払ができなくなりますし、家族カードを発行していればこれも使えなくなります。
支払方法の変更などが必要になってしまいますので、これにより、家族に疑われてしまうことがあり得るでしょう。
なお、強制解約となるのは個人再生を申立てする本人名義のクレジットカードであり、家族名義のクレジットカードへの影響はありません。
(5)ローンを組もうとする
個人再生を行うと、信用情報機関に事故情報が登録されることにより、ローンが組めなくなってしまいます。
信用情報機関とはクレジットやローンの契約情報や借入れ、返済の情報を管理している機関です。個人再生を含め、債務整理をした事実は借金を返済できない金融事故を起こした情報、すなわち事故情報として信用情報機関に登録されます。
金融機関は融資をする際、信用情報機関に照会し融資を依頼してきた人の信用情報を調査します。
照会した結果事故情報が登録されていることがわかると、ローン契約を申し込んでも返済を続けていく能力に疑いがあると判断され審査で否決されてしまうのです。
車やマイホームをローンで購入しようと考えた場合、なぜローンを組めないのかと家族に不審に思われてしまうでしょう。
ただし、個人再生をしても一定期間が経過すれば事故情報は削除されるので、ローンが組めないのは一定期間だけです。
また、信用情報機関に事故情報が登録されるのはあくまで個人再生をした本人だけなので、家族の名義であればローンは組めます。
(6)ローン返済中の車がある
車をローンで購入している場合、ローンを完済するまではローン会社を所有者にしておき(「所有権留保」といいます。)、ローンが返済できない場合には車を引き上げて売却し、その代金を返済にあてる仕組みをとっていることがほとんどです。
個人再生の手続を行うということは約束どおりにローンを返済することができなくなったことになりますので、ローンの残っている車がある場合には引き上げられてしまいます。
車が引き上げられると同居している家族にはその理由を説明しなければならないでしょう。これにより、個人再生の申立てをしたことがバレる可能性があります。
ただし、車のローンを完済している場合や、ローンを家族名義で組んでいる場合には個人再生で引き上げられる心配はありません。
(7)たまたま官報を見られた
個人再生をすると官報に氏名や住所が掲載されるので、たまたま家族が官報を見てしまった場合は言い逃れできません。
官報は紙面のほかインターネット版もあり、直近30日分は誰でも無料で閲覧することができるようになっています。
ただし、一般の方が官報に興味を持って閲覧することはほとんどありませんので、官報に掲載されることを過剰に不安がる必要はありません。
3.個人再生が勤務先にバレるケース
生活を共にしている家族の場合と異なり、個人再生が勤務先にバレるケースは少ないといえます。
個人再生をすることが勤務先に確実にバレるケースは以下のケースです。
- 勤務先からの借金がある
また、以下の場合に個人再生をすることがバレる可能性があります。
- 勤務先が官報をチェックする業種である
- 退職金がある
これらのケースについてご説明します。
(1)勤務先からの借金がある
社内貸付制度で会社から借金をしていたり、公務員で共済組合から借入れをしていたりすると、個人再生の事実は確実に勤務先に知られてしまいます。
前記のとおり、個人再生では債権者一覧表を提出する必要があり、勤務先からの借金も記載しなければならないからです。
債権者一覧表に勤務先から借金があることを記載して申立てをすれば、当然勤務先に裁判所から通知が届きます。
勤務先に知られたくないからといって、債権者一覧表に勤務先からの借金を記載しないと、個人再生の手続が途中で終了することになりかねませんので、本末転倒です。
(2)勤務先が官報をチェックする業種である
個人再生をすると官報に氏名や住所が記載されますが、普通の会社であれば官報をチェックしているようなことはないので、官報の記載から個人再生をしたことがバレることはほとんどありません。
ただし、以下のような職場で働いている場合は、勤務先の担当者が官報を日常的に確認していることがあり、個人再生をしたことがバレる可能性があります。
- 税務署
- 市区町村役場
- 信用情報機関
- 金融機関
- 警備会社
- 保険会社
(3)裁判所へ退職金見込額証明書の提出をする
勤務先に退職金支払の規定がある場合、裁判所から「退職金見込額証明書」という書類の提出を求められる場合があります。
個人再生の手続後も勤務を継続し退職金を受け取ることになるかどうかは不確定ですが、一部については受け取れる蓋然性が高いということで、退職金の見込額の8分の1を申立人の資産に含める扱いとなっています。
そのため、裁判所から退職金見込額証明書の提出を求められることになります。
これは、勤務先から発行してもらう書面ですので、当然勤務先にその発行を依頼することになります。
このような書類の発行を依頼されると、勤務先としては退職するつもりなのかと考え発行の理由を聞いてくることもあります。こういった経緯で勤務先に個人再生の申立てをすることがバレてしまう可能性があります。
裁判所によっては勤務先に知られたくないと伝えれば、退職金見込額請求書の提出を免除してくれる場合もありますが、確実に免除してもらえるとまではいえません。
まとめ
個人再生をしても家族や勤務先に連絡がいくことはないので、バレる可能性は低いです。
また、官報に計3回は氏名や住所が掲載されますが、一般の人に見られる機会はほとんどありません。
ただし、手続の性質上、以下の場合は確実にバレてしまいます。
- 家族や勤務先から借金をしている
- 家族が借金の保証人になっている
また、家族については、クレジットカードの利用停止やローンが組めなくなることで疑われる可能性があるので注意しましょう。
バレるケースに多数該当しているなら、家族に隠さず、個人再生をするにあたって協力してもらうことを検討すべきでしょう。
家族や勤務先にバレることが気になっているのであれば、まずは弁護士に相談しましょう。
内緒にしたまま個人再生の手続を進められるかどうか、弁護士と一緒に協議して、ふさわしい方法を考えましょう。
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