借金の元金のみを返済する方法とは?任意整理についても解説

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「借金の元金だけを返済する方法はあるのか」
「借金の元金だけを返済する条件は何か」

多額の借金を抱えている人の中には、負担を減らすために借金の利息部分をカットして元金だけを返済するようにできないかと考えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、借金の元金のみを返済するようにする方法やできないときの対処法についてご説明します。

1.借金の元金だけを返済する方法

借金の元金だけを返済する方法

利息をカットして元金だけの返済とすることは、任意整理によって実現できる可能性があります。

任意整理とは、債権者との交渉により借金の利息の全部または一部の免除や返済期間の再設定により、支払の負担を軽減する手続のことをいいます。

利息の免除について交渉することにより、借金の元金だけを支払う形にできる可能性がある、ということになります。

残債から利息の全部または一部を取り除いた分を、5年前後かけて分割返済することになるため、月々の支払の負担を軽減することができます。

任意整理は債務整理の手段の一つで、一定期間クレジットカードやローンの利用ができなくなるというデメリットは発生しますが、返済額を減らせることは大きなメリットとなります。

利息分の支払が大きいために借金の返済が苦しいという方は、任意整理を検討してみましょう。

2.任意整理をする条件

任意整理をする条件

任意整理は誰でもできるわけではなく、いくつかの条件を満たす必要があります。

主な条件は以下のとおりです。

  1. 圧縮した返済額を返済できる収入がある
  2. 返済実績がある

順にご説明します。

(1)圧縮した返済額を返済できる収入がある

任意整理によって利息分を減額した残りの返済額を返済していける収入が必要となります。

任意整理で借金を減らしたとしても、残った借金を5年前後で返済できる見込みがなければ、任意整理による解決はできないということです。

元金部分であれば返済していけるという収入がある方は任意整理が可能ですが、あまりにも借金の金額が大きく、任意整理によって借金を減額しても返済し切れない人は、任意整理を実行できません。

たとえば、減額後の借金が100万円で毎月2万円返済できる人は、4年2か月で完済できる見込みがある、任意整理によって解決できる可能性があります。

残った元金が今の返済能力で最低でも5年以内に返済できるか確認してみましょう。

(2)返済実績がある

返済実績がないと、債権者に対して任意整理の交渉をしても受け入れてもらえない可能性があります。

一度も返済がないまま任意整理によって利息の支払を免除してしまえば、債権者に利益が発生しませんから、交渉に応じることはできないと判断することにつながってしまいます。

そもそも返済実績がない人が任意整理を依頼した場合、初めから踏み倒す気で借入れをしたと判断され、話すら聞いてくれないこともないわけではありません。

返済実績がないと、任意整理をお願いしても債権者が交渉の場に出てくれないケースがあることを頭に入れておきましょう。

3.問題なく返済できる人は任意整理のメリットがない場合がある

問題なく返済できる人は任意整理のメリットがない場合がある

上記に述べた条件に該当する方でも、必ずしも全員に任意整理をおすすめできるわけではありません。

借金の額が膨大に膨れ上がり、返済が現実的に困難な人でなく、借金の額を減らしたいという方でも任意整理自体を行うことは可能です。

しかしながら、任意整理を弁護士に依頼すれば弁護士費用が掛かります。

返済を継続できる方にとっては、弁護士費用を払っても経済的なメリットがあるという場合でなければ任意整理を行っても損をしてしまいますから、その場合に任意整理をおすすめはできません。

任意整理を行うことで利息がカットされるというメリットはありますが、信用情報機関に事故情報が登録され、一定期間ローンやクレジットカードの利用ができないといったデメリットも生じます。

借金の額が多額ではないものの利息だけはカットしたいという場合にはデメリットが上回ってしまうこともあるため、おすすめできないこともあるということを覚えておきましょう。

4.任意整理ができない場合は?

任意整理ができない場合は?

借金の額が多額であり、多少減額しても支払っていく収入がないという場合には任意整理による解決は困難となってしまいます。

このような場合にとりうる手段としては、個人再生と自己破産の二つが挙げられます。

個人再生とは、裁判所に返済が困難であることを認めてもらった上で、一定の割合で減額した債務を原則5年かけて支払う内容の再生計画案の認可を受け、返済計画どおりに返済することを条件として、残りの債務の支払義務を免除してもらう手続をいいます。

また、自己破産とは、裁判所に現在の財産や収入では債務の支払が困難であることを認めてもらい、支払義務を裁判所に免除してもらう手続のことです。

個人再生と自己破産のメリット・デメリットには以下のようなものがあります。

救済措置 メリット デメリット
個人再生
  • 一定の割合で借金の減額が可能となる
  • 住宅資金特別条項を利用してローンが残った自宅を残すことも可能となる
  • 資格の制限がない
  • 借金の理由、原因を追及されることが少ない
  • 債務総額5000万円を超えると対象外になる
  • 継続的な収入がある人しか申立てできない
  • 保証人は支払請求を受ける
  • 官報に申立人の氏名や住所が掲載される
自己破産
  • 借金の支払義務が免除される(免責)
  • 自己破産後の収入は自由に使える
  • 所有している自宅や自動車など資産価値の高い財産は手放さなければならない
  • 資格の制限により一時的に就けなくなる職業がある
  • 保証人が支払請求を受ける
  • 官報に申立人の氏名や住所が掲載される

債務者の借金の金額や収入の状況によって、個人再生と自己破産のどちらを行うのかが決まります。

任意整理も含め債務整理には専門的知識が必要となるので、どの手段を進めるにしても弁護士に代行してもらうのが無難です。

返済が苦しくなってしまい、借金を減額できないかをお考えの方は、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

借金の元金のみを返済するには、任意整理の手続を進める必要があります。

ただし、任意整理を行うにはいくつかの条件をクリアしなければなりませんし、必ず利息の全部をカットできるわけでもありません。

借金の金額や返済能力によっては、任意整理ではなく個人再生や自己破産を選択肢に入れなければならない場合があるので、借金の返済に困ったら、どのような方法で解決すべきか確かめるためにも弁護士に相談しましょう。

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。