財産が差し押さえられるときの流れとは?差押えを事前に防ぐ方法
「財産が差し押さえられるときの流れってどうなの?」
「差押えを事前に防ぐことってできないの?」
借入れなどの債務の支払を滞納してしまっている方の中には、どのような財産を差し押さえられてしまうのか、差押えはどのような流れで行われるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、財産が差し押さえられるまでの流れや差し押さえられる財産の種類、差押えを防ぐ方法についてご説明します。
1.差押えの流れ
財産が差し押さえられるときの流れについてご説明します。
一般的には、以下のように進められることが多いです。
- 債権者から督促される
- 債権者から期限内の支払を請求される
- 裁判所から書類が届く
- 差押えが実行される
差押えの流れを把握しておくと、自身が今どのような状況なのか判断できるようになります。
今のご自身の状況と照らし合わせながらチェックしてみてください。
(1)債権者から督促される
借金の返済が滞っている場合、まず債権者からの督促が行われます。
督促の方法は、電話や郵便などさまざまです。
債権者から督促されたにもかかわらず、これを放置していると、債権者は差押えに向けてかじを切ることになるので、放置してはいけません。
(2)債権者から期限内の支払を請求される
債権者からの督促を放置したままにしておくと、債権者から、残りの債務を定められた期限内に返済するように請求されます。
この時、残りの債務を一括で返済するように請求されることもあります。
この段階で債権者に連絡し、返済方法について話し合うことにより、債権者に差押えの実現を思いとどまってもらえる可能性はあります。
しかし、この時点でもなんの対応もしないでいると、債権者は差押えに向けて、裁判所を介した手続を開始し、差押えの実現に向けてかじを切ることとなります。
なお、(1)と(2)は同じタイミングでされることもあります。
(3)裁判所から書類が届く
債権者が裁判所を介した手続に着手すると、裁判所から訴状や支払督促などの書類が届きます。
裁判所を介した手続とは、訴訟の提起と支払督促の申立てのことをいいます。
支払督促とは、債権者の申立てによって、裁判所(簡易裁判所)が債務者に対し、借金などの支払を督促するという訴訟よりも簡易な手続のことです。
この支払督促の手続を受けた債務者は、2週間以内に異議を申し立てないと、仮執行宣言付き支払督促が出され、債権者のために差押えができる状態となってしまいます。
訴状についても何も対応しなければ、債権者の主張を裁判所が認めてしまい、欠席判決が出され、債権者は差押えがいつでもできるようになります。
そのため、裁判所から、訴状や支払督促が届いたら、早急に対応しなければなりません。
(4)差押えが実行される
上記のとおり、訴状や支払督促を放置すると、判決や仮執行宣言付き支払督促といった債務名義を取得されてしまい、債権者はいつでも差押えを実行できるようになります。
差押えが実行されると、財産を守ることは困難です。
財産の差押えを回避したい方は、債権者からの督促や、遅くとも裁判所から書類が届いた時点で無視せずにすぐに行動に移しましょう。
2.差し押さえられる財産の種類
差押えの対象となる財産の種類は、動産、不動産、債権です。
債権者が差押えに踏み切った場合、どのような財産が対象となるのかみていきましょう。
(1)動産・不動産
動産・不動産では、資産価値が高いものが差押えの対象となります。
たとえば、以下のようなものが差押えの対象です。
- 現金(66万円を超える部分)
- 自動車
- ブランド品等
- 宝石
- 土地
- 家・マンション
動産の差押えの対象となるのは、上記のとおり現金や自動車、ブランド品の他、絵画等様々なものが考えられます。
現金に関しては66万円までは差押禁止となっています。
また、ブランド品や宝石等の動産は、差し押さえたとしても中古品であることが多く、あまり価値がないことが多いため、動産の差押えは、高額な債権を回収する方法としては向いていません。
次に、不動産の差押えについて、一般的に不動産は財産的な価値が高く、その所在を特定することも難しくないため、高額な債権を回収するために、差し押さえられることがあります。
しかし、不動産を換価するまでの期間として半年以上かかることが多く、また、換価のための競売申立てに多額の費用が掛かるため、債権額が少額の場合に不動産が差し押さえられることは多くありません。
(2)債権
債務者が第三者に対して有する債権も差押えの対象となります。
債権者にとってみると、申立費用が低く、時間がかからないため、もっとも差押えの対象となりやすい財産といえます。
債権で差し押さえられることが多いのは、給与債権と預金債権です。
給料に関しては、手取り金額が44万円を超えない場合はその4分の3が、44万円を超える場合は33万円を超える部分がそれぞれ差押えを禁止されています。
3.差し押さえられる財産がない場合の注意点
現時点で差し押さえられる財産がなくても、今後、差押えがないとは言い切れません。
差押えが実行される段階で財産がなくても、差押えの対象となる財産を取得した段階で、債権者から差押えが申し立てられることも考えられます。
例えば、相続によって不動産を取得する場合が考えられるでしょう。
なお、家族名義の財産は差し押さえられることはありません。
しかし、差押えを回避する目的で自身の財産を親族に移転した場合は、その限りではありません。
このような財産移転行為は詐害行為として取り消されることもありますし、財産隠しの態様によっては刑事罰の対象ともなります。
4.差押えを事前に防ぐには
差押えを事前に防ぐことはできます。
以下のように差し押さえられる前に行動することが大切です。
- 債権者と直接交渉をする
- 債務整理で借金を減らす
債権者から督促状が届いている方は、すぐにでも行動に移しましょう。
(1)債権者と直接交渉をする
差押えを回避したいなら、債権者から督促された時点で、直接交渉することをおすすめします。
督促がされている時点では裁判所はまだ関与していないので、債権者と交渉の余地があるでしょう。
債権者も訴訟を起こすとなると時間や手間、費用がかかるため、なるべく簡便に処理するために交渉に応じてくれる業者もいます。
支払の意思を示して、新たに作り直した返済計画をもとに交渉すれば、交渉に応じてくれることもあります。
(2)債務整理で借金を減らす
債務整理をすることで、借金自体を減らすことも差押え対策として有効です。
また、個人再生や自己破産の申立てを行うと、手続開始の決定によって、給与の差押えなどが中止されることになります。
借金の金額や返済能力に応じて取れる手段は異なりますが、いずれにしても借金返済の負担を軽減できます。
借金返済の負担を軽減して、何とか生活を立て直したい方は、弁護士に債務整理を相談してみましょう。
まとめ
債権者から差押えを受けるまでにはいくつかの段階を経ることになります。
裁判所から届いた書類を無視すると、財産の差押えが実行されてしまうため注意が必要です。
財産を差し押さえられる前に行動すれば、事前に防ぐことができる可能性があるので、遅くても裁判所から書類が届いた時点で弁護士に相談しましょう。
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