差押えに家族の私物は対象に入る?差押えの対象物と対象外の物
「財産が差し押さえられるときは、家族の私物まで対象とされるのか」
「どんなものが差押えの対象となるのか」
財産を差し押さえられる可能性がある方の中には、家族の財産まで取られるのではないかと不安になっている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、家族の私物は差押えの対象となるのか、またどんな財産が差押えの対象となるのかについてご説明します。
1.差押えによって家族の私物まで取られるのか
結論から言うと、家族の私物は差し押さえられることはありません。
差押えの対象となるのは、本人の財産のみだからです。
たとえば、配偶者が自分の名義で購入した自動車は、原則差押えの対象となりません。
だからといって、差押えが決行される前に自分の財産の所有権を配偶者や子どもに移転することは「詐害行為」として取り消されるおそれがありますし、財産隠しの態様によっては刑事罰の対象にもなります。
したがって、財産隠しに当たる行為は行わないでください。
2.差押さえの対象のものと対象にならないもの
差押えの対象になる財産と対象にならない財産があります。
差押えといっても全ての財産が差押えられるわけではないのです。
ここでは、差押え対象となる財産とそうでない財産について具体的にご説明します。
(1)差押えの対象となる財産
差押えの対象となる財産は以下の通りです。
- 預貯金
- 給料
- 退職金
- 不動産
- 株式
- 自動車
- 生命保険
特に差押えを受けやすいのは、預貯金と給料です。
預貯金が差し押さえられると、借金の金額の限度で口座に預けている預金が差し押さえられます。
また、給料が差押えられると、借金がなくなるまで将来にわたって、毎月一定金額が給料から差し引かれてしまいます。
ちなみに、債務者の生活保障のため、給料については、差し押さえることができる上限額が決められているため、給料がゼロになることはありません。
差押えが可能な給料の上限は以下の通りです。
- 月の手取り金額が44万円以上の場合:手取り金額のうち、33万円を超える部分が差押えの対象になります
- 月の手取り金額が44万円未満の場合:手取り金額の4分の3は差押えの対象になりません
特に月の手取りが44万円を超えている方は、高収入であるほど差し押さえられる金額が高くなり、生活水準の変更を余儀なくされる可能性があります。
なお、不動産や株式、自動車なども差押えの対象となりますが、差押えにかかる費用や手続の負担が大きいため、債権が多額の場合以外はあまり差押えられることはありません。
したがって、差押え対象とされることが多いのは、預貯金や給料等の債権です。
(2)差押えの対象にならない財産
差押えの対象にならない財産も存在します。
債務者の生活保証の観点から、全ての財産が差し押さえられるわけではありません。
差押えの対象にならない財産には、上記の給料債権のうちの一定額の他に、以下のようなものがあります。
- 66万円までの現金
- 退職金の4分の3
- 債務者の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
- 債務者の1か月間の生活に必要な食料及び燃料
- 債務者の職業に応じて、その業務に欠くことができない器具等
- 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
- 仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に欠くことができない物
このように、財産が差し押さえられても、最低限の生活に必要な財産は残しておけるようになっています。
3.差押えを回避するための2つの方法
借金を滞納したとしても、直ちに財産を差押えられるというものではありません。
早めに対処することにより、差押えを回避できる可能性は高まります。
ここでは、差押えを回避する方法についてご説明します。
(1)早めに消費者金融の窓口に相談
消費者金融等の債権者への支払を滞納しないのが大前提ではありますが、それでも何かしらの事情により支払が困難なこともあるでしょう。
このような場合は、すぐに消費者金融の窓口等の債権者に相談することをおすすめします。
返済時期の延長や分割払いといった方法を提案してもらえる可能性があります。
差押えを受けないようにするためには、債権者に連絡せずに督促を放置するようなことは、絶対にしないようにしましょう。
(2)弁護士に債務整理の相談
債権者に連絡してみても相談に応じてもらえない場合、債権者からの提案をもらってもやはり支払が難しい場合など、解決に至らないときは、債務整理について弁護士に相談すべきでしょう。
弁護士に債務整理を依頼することにより、差押えを受ける前に借金の負担を減らすことができます。
また、弁護士に依頼し、弁護士から消費者金融等の債権者に受任通知が送られると、消費者金融等から債務者に対して直接の催告や電話連絡ができなくなるというメリットがあります。
債務整理には任意整理、自己破産、個人再生などがあり、返済額を減らすことができる可能性があります。
一方、これらの手続にはそれぞれメリット・デメリットがあるので、状況に応じて適切な手続を選択する必要があります。
また、これらの手続は債務者個人で行うこともできます。
しかし、専門知識のある弁護士に依頼したほうが、債権者との交渉や書類作成などを任せることができ、スムーズに解決できます。
どの制度を利用すべきかについても弁護士に相談してみるのがよいでしょう。
まとめ
差押えを受けても、家族の私物までは取られることはありません。
生活に必要な財産までは差し押さえられないため、いきなり一文無しになることはないので安心してください。
しかし、差押えを受けると多少の生活様式の変更が強いられるので、債権者から督促状が届いたらすぐに弁護士に相談し、支払い方法について交渉しましょう。
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