無職で借金返済が困難だと財産は差し押さえられる?督促が来たときの対応
「無職になり借金の返済が滞った場合は、財産が差し押さえられるのか」
「無職で借金の返済ができなくなったときは、財産の差押えを回避できないのか」
借金をしている方の中には、さまざまな理由で無職になり、返済が滞って財産が差し押さえられるのではないかと心配になっている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、無職で借金の返済が困難になった場合でも財産が差し押さえられるのか、財産を差し押さえられる前にどう対応すればよいのかについてご説明します。
1.無職で借金の返済が滞ると財産が差し押さえられるのか
無職になって借金の返済が困難になり、毎月の支払が滞ると財産を差し押さえられる可能性は高くなります。
借金をしている場合、債務者の就職状況は関係なく、決められた期日までに返済しなければなりません。
そのため、理由があろうと返済が滞っている状態では、自宅に督促状や一括請求書が送られてきます。
この段階で返済をできれば、特に大きな問題に発展することはありませんが、督促状を無視し続けると、債権者に訴訟を起こされる可能性が出てくるでしょう。
訴訟まで進んだにもかかわらず何もしないままでいると、債権者が債権を保全するために財産を差し押さえる可能性が高くなるのです。
差押えの対象には以下のようなものがあります。
- 預貯金
- 給料
- 退職金
- 不動産
- 株式
- 自動車
- 生命保険
これらの財産の内、特に差押えを受けやすいのは預貯金と給料といった債権です。
一方、家や自動車といった財産は、差押えのためにかかる費用や手続の負担が大きいため、債権が多額であったり、住宅ローンであったりする場合でなければ差押えを受けることは多くありません。
債権者から訴訟の提起や支払督促の申立てをされてしまい、、訴訟を起こされる前に行動する必要があります。
なお、財産の差押えは全ての財産が対象とされるわけではなく、債務者の生活のために差押えをすることができない財産(民事執行法131条、152条等。「差押禁止財産」といいます。)があり、これに該当するものは手元に残すことが可能です。
差押禁止財産には以下のようなものがあります。
- 66万円までの現金
- 33万円までの給料(給料が33万円以下の場合その4分の3)
- 退職金の4分の3
- 債務者の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
- 債務者の1か月間の生活に必要な食料及び燃料
- 債務者の職業に応じて、その業務に欠くことができない器具等
- 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
- 仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に欠くことができない物
生活に必要な財産については差押えの対象とならないようになっていますので、財産を差し押さえられたからといって、すべての財産を失うわけではありません。
2.財産が差し押さえられるときの流れ
財産が差し押さえられるまでには、複数の手続が行われます。
主な差押えまでの流れは以下のとおりです。
- 債権者からの連絡
- 裁判所からの連絡
- 差押え
順に紹介します。
(1)債権者からの連絡
借金を滞納すると、貸金業者などの債権者から借金返済を督促する電話連絡や郵便が届きます。
これらに対して対応をせず無視してしまうと、借金の残額を一括で請求する書面が届くことが多いです。
これらの債権者からの連絡を無視していると、債権者は支払督促や訴訟といった法的措置の申立てに移行します。
債権者から借金返済に関する督促などの連絡が来た場合、これを放置してしまうと法的措置をとられてしまう可能性があります。
債権者からの督促が来た段階で専門家に相談すべきでしょう。
(2)裁判所からの連絡
債権者が支払督促や訴訟を申し立てると、裁判所から、特別送達という方法で、債務者の住所に訴状などの書類が届きます。
まず、訴訟に対応しないままでいると、債権者の請求をそのまま認める内容の判決が下されることになります。
また、支払督促に対応しなかった場合は、債権者の申立てを認める内容の仮執行宣言付支払督促正本が届き、さらにこれを受領した日から2週間以内に督促異議の申立てをしない場合、仮執行宣言付支払督促が確定し、判決と同じ効力が認められてしまいます。
確定した判決や仮執行宣言付支払督促は債務名義と呼ばれ、これがあることによって強制執行を行うことができるようになります。
つまり、債権者は、判決などを得ることによって差押えの手続に移行できるようになります。
差押えは、突然行われるものではなく裁判所に対する申立てがされたのにもかかわらずそれらに対する対応をしなかった場合にとられる措置ともいえます。
そのため、遅くとも裁判所から書類が届いた段階で対応すべきでしょう。
(3)差押え
判決や仮執行宣言付支払督促が確定しても、借金の返済を行わない場合、債権者は強制的に債権を回収するほかありませんので、強制執行の手続をとられる可能性があります。
差押えは債権を回収する下準備として、債務者の財産の処分を禁ずるものですので、この段階で差押えを受けてしまう可能性が出てくることになります。
債権者が債務者の財産を把握していれば、差押えの申立てを裁判所に行い、裁判所がこれを認めれば、差押命令が出され、財産を差し押えられてしまいます。
このように、債権者が債務者に対して差押えなどの強制執行の手続をとる場合、その前に複数の手続が必要となります。
これらの事前の連絡や手続に対応しないでいると、財産を差し押さえられてしまう可能性があるということです。
差押えを受ける前の手続段階で専門家に相談し、債務整理による解決を検討すべきでしょう。
3.債権者から督促状が届いたときに取るべき行動
失業などが原因で返済が困難になり、債権者から督促が来た場合に、取るべき行動は以下の二つです。
- 弁護士に相談する
- 債権者と交渉する
順にご説明します。
(1)弁護士に相談する
法律の専門家である弁護士に相談しましょう。
弁護士であれば、どのような形での決着が相談者にとって利益となるかを考慮した上で、最善の手で債権者と交渉してくれます。
債権者が訴訟を起こす前であれば、債務整理など借金の負担を軽減する方法での解決も可能なので、自分一人で悩まずに弁護士を頼りましょう。
(2)債権者と交渉する
債権者から督促が来たら無視するのではなく、まずは連絡をとってみましょう。
訴訟を起こされる前に、債権者とコンタクトを取って返済の意思があることを示すことで、債権者も返済計画を見直してくれる可能性があります。
差押えまで行うとなると、債権者側にも少なからず負担がかかります。
そのため、債権者もなるべく話し合いで解決できるならばと交渉に応じてくれる可能性はありますので、無視だけしないようにしましょう。
もし、債権者と話をしても約束どおりの返済を求められるばかりで話にならないという場合には、弁護士に依頼して交渉してもらうことをおすすめします。
まとめ
無職で借金の返済が困難になり、財産の差押えを受けないか不安に感じている人も多いでしょう。
財産の差押えは、判決や仮執行宣言付支払督促が確定しなければ行わませんので、訴訟の提起や支払督促の申立てに至っていないのであれば財産を差し押さえられることはありません。
しかし、債権者が裁判所に申立てをしたとの書類が裁判所から届いている方は、早急に対応しなければなりません。
裁判所から書類が届いてしまっている方は、財産の差押えを受けないために、弁護士に相談して適切な行動を取りましょう。
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