母子感染でもB型肝炎給付金を受給できるのか?給付金の受給要件と請求の流れ

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「母子感染でもB型肝炎給付金を受給できるのか」
「母子感染者がB型肝炎給付金を申請するにはどうしたらいいのか」

母子感染によるB型肝炎ウイルスの感染者の中には、給付金を受給できるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、母子感染による二次感染者もB型肝炎給付金を受給できるのかについてご紹介します。

1.母子感染でもB型肝炎給付金を受給できるのか

母子感染でもB型肝炎給付金を受給できるのか

結論から述べると、母子感染でもB型肝炎給付金を受給できる可能性があります。

いくつかの要件を満たす必要がありますが、受給対象であれば二次感染者でも給付金を受け取ることが可能です。

二次感染者である母親から生まれた三次感染者もB型肝炎給付金の対象になります。

2.母子感染による二次感染者のB型肝炎給付金の受給要件

母子感染による二次感染者のB型肝炎給付金の受給要件

母子感染による二次感染者のB型肝炎給付金の受給要件についてご紹介します。

二次感染者によるB型肝炎の給付金の請求が認められるためには以下の3つの要件を満たす必要があります。

  1. 母親が一次感染者と認められる
  2. 二次感染者が持続感染している
  3. 感染原因が母子感染である

B型肝炎ウイルスに母子感染した疑いがある方は、上記の要件を満たしているか確認しましょう。

なお、今回は二次感染者であることを前提にしています。

また、より具体的な受給要件に関しては以下の記事にまとめているので、そちらも合わせてご参照ください。

B型肝炎給付金の対象者とは?受給できる金額と請求方法

(1)母親が一次感染者と認められる

まず、母親が一次感染者であることを証明しなければなりません。

母親が一次感染者であることを証明するためには、以下の4つを満たす必要があります。

①B型肝炎ウイルスに持続感染している

詳細は(2)で説明します。

②満7歳になるまでに集団予防接種等を受けている

③集団予防接種等における注射器の連続使用があった

母子健康手帳または予防接種台帳の記載から昭和23年7月1日から昭和63年1月27日までの間に集団予防接種等を受けたことか、戸籍等により昭和16年7月2日から昭和63年1月27日までの間に出生していることを確認することが必要です。

④母親自身は母子感染でない

以下のいずれかが必要です。

・母親のHBs抗原が陰性 かつ HBc抗体が陰性(または低⼒価陽性)の検査結果

※母親が死亡している場合は、⺟親が80歳未満の時点のHBs抗原陰性の検査結果のみで可。

※80歳以上の時点の検査の場合は、HBs抗原の陰性化(持続感染しているが、ウイルス量が減少して検出されなくなること)が無視できない程度に発⽣することが知られているため、HBc抗体も併せて確認することが必要。

・ 年⻑のきょうだいのうち⼀⼈でも持続感染者でない者がいること(母親が死亡している場合に限る)

・その他、医学的知⾒を踏まえた個別判断により、母子感染によるものではないことが認められる場合には、母子感染でないことが推認される。

(2)二次感染者が持続感染している

二次感染者が持続感染していることも要件の1つです。

持続感染とは、B型肝炎ウイルスが体外に排出されずに感染が持続している状態のことです。

持続感染が認められるためには、以下のいずれかを満たすことが必要です。

① 6か月以上の間隔をあけた連続した2時点における、以下のいずれかの検査結果

・HBs抗原陽性
・HBV-DNA陽性
・HBe抗原陽性

② HBc抗体陽性(効力化)

1時点の検査結果しか残さないまま、6か月より短い診療期間で死亡してしまった場合などには、以上の要件を満たさないことがありますが、この場合も個別判断により持続感染と認められるケースがあります。

医療機関で検査を受けることにより、B型肝炎ウイルスへの持続感染の有無を調べることができます。

(3)感染原因が母子感染である

要件の3つ目は感染原因が母子感染であることです。

母子感染以外の経路でB型肝炎ウイルスに感染した場合は、給付金の対象外となります。

母子感染であることを証明するためには、以下の3つのいずれか満たす必要があります。

①二次感染者が出生直後にB型肝炎ウイルスに持続感染している

②母子感染者と母親のB型肝炎ウイルスの塩基配列が同定できる

③母子感染以外の感染原因が存在しない

以上のうち、③を満たすには、以下の条件をすべて満たすことが必要です。

・原告の出⽣前に母親の感染⼒が弱かったこと(HBe抗原が陰性であったこと)が確認されないこと

・原告が昭和60年12⽉31⽇以前に出生していること

・医療記録等に母子感染とは異なる原因の存在をうかがわせる具体的な記載がないこと

・父親が持続感染者でないか、又は父親が持続感染者の場合であっても、原告と父親のB型肝炎ウイ ルスの塩基配列が同定されないこと

・原告のB型肝炎ウイルスがジェノタイプAeでないこと

上記を証明するためには、いくつか証拠書類を揃えなければなりません。

具体的な必要書類に関しては、以下の記事にまとめているので、あわせてご確認ください。

B型肝炎給付金の申請に必要な書類とは?対象者ごとに解説

3.B型肝炎給付金の金額

B型肝炎給付金の金額

B型肝炎の母子感染による二次感染者は、一次感染者と同じ金額の給付金を受け取ることが可能です。

支給金額は病態によって定められており、該当する区分の金額の支払を受けることができます。

実際の給付金は以下のとおりです。

病態等 支給金額
死亡・肝がん・肝硬変(重度) 3,600万円
20年の除斥期間が経過した死亡・肝がん・肝硬変(重度) 900万円
肝硬変(軽度) 2,500万円
20年の除斥期間が経過した肝硬変(軽度)
(1)現在、肝硬変(軽度)にり患している方 など 600万円
(2)(1)以外の方 300万円
慢性B型肝炎 1,250万円
20年の除斥期間が経過した慢性B型肝炎
(1)現在、慢性B型肝炎にり患している方 など 300万円
(2)(1)以外の方 150万円
無症候性キャリア 600万円
20年の除斥期間が経過した無症候性キャリア
(特定無症候性持続感染者)
50万円

症状が重いほど、高い支給金額が定められています。

ご自身がどの区分に該当するかチェックしてみましょう。

4.B型肝炎給付金の請求の流れ

B型肝炎給付金の請求の流れ

B型肝炎給付金の請求の流れについてご紹介します。

基本的には流れは以下のとおりです。

  1. 弁護士に相談・契約
  2. 資料収集
  3. 訴訟提起
  4. 和解成立
  5. 給付金の受取り

まずは、弁護士に相談して、B型肝炎給付金の受給要件を満たしているか確認しましょう。

相談の結果、弁護士がB型肝炎給付金を受給できると判断できた場合は、そのまま契約に進むこととなるでしょう。

弁護士との契約後は、手続に必要な証拠書類を揃え、申請の準備を行うことになります。

給付金の申請には訴訟の提起が必要です。

訴訟を提起した後は裁判所での手続が行われ、そこで和解が成立すると和解調書が作成されます。

この和解調書を請求書等の必要書類とともに支払基金に提出することにより給付金が支払われます。

給付金の請求手続をご自身で行うことは可能ですが、B型肝炎給付金を請求するためには訴訟を提起する必要があり、平日に期日に出席することにもなるため、負担は大きくなります。

弁護士に依頼すれば、手続に必要な情報の提供を受けることができ、訴訟の提起等も弁護士が本人の代理人となって行うことができますので、給付金の請求のための負担を軽減することができます。

申請準備や訴訟手続などをすべて自分でやろうとすると大きな負担となりますので、不安のある方は弁護士に依頼することを検討してみましょう。

より具体的に給付金の請求の流れを知りたい方は、以下の記事をご参照ください。

まとめ

B型肝炎ウイルスに母子感染によって二次感染した方も、いくつかの要件を満たしていれば、国から給付金を受け取ることができます。

給付金を受給するためには、母子感染であることをはじめ、持続感染していることなどを証明しなければなりません。

必要な証拠書類がたくさんあるので、弁護士のサポートを受けながら給付金請求の準備を進めましょう。

弁護士法人みずきでは、B型肝炎ウイルスの給付金申請に関する相談を無料で受け付けておりますのでお気軽にご相談ください。

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。