離婚調停の実際② ~調停委員と話すときの要所~

1.調停委員とは

調停が、夫婦間のお話し合いの場であることは以前にもご説明しました。

そしてこの話し合いの調整をするのが調停委員会です。

調停委員会は、裁判官1名のほかに、男女1名ずつの調停委員によって構成されています。

調停は基本的には、この調停委員2名に対して、申立人側と相手方側が交互に自身の主張や相手への反論を述べていく形で進んでいきます。

調停という裁判所での手続きに関与するこの調停委員ですが、実は必ずしも法律の専門家というわけではありません。

調停委員は、以下のような人のうち、人格見識の高い40歳から70歳未満までの人が、最高裁判所から任命されています。

調停委員
①弁護士となる資格を有する者
②民事若しくは家事の紛争の解決に有用な専門的知識経験を有する者
③豊富な知識経験を有する者

①の弁護士は分かり易いですが、それ以外の方は少し抽象的ですね。

②は、たとえば弁護士以外の「士業」などが該当します。

税理士や不動産鑑定士などです。

③は、地域の学校の元校長先生や、民生委員、地元の有力者など、いわゆる「有識者」という方たちが該当します。

①の弁護士以外は、必ずしも婚姻関係に関する法律や判例を専門にしているわけではありません。

もっとも、裁判所によれば、できる限り2名の調停委員のうち1名は弁護士資格を有するものになるように調整されているようです。

2.調停委員と話すときの要所

離婚調停は、上述のとおり調停委員会という第三者が話し合いの調整をします。

これは基本的に裁判官1名と、男女1名ずつの調停委員から構成されます。

裁判官は多くの場合に話し合いの席には常駐せず、双方のお話を聞くのは調停委員の2名です。

また、親権や面会交流の方法などで争いがある場合には、家庭裁判所調査官という人も登場します。

訴訟の場合は、裁判官は黒い法衣を身に纏って厳かな雰囲気がありますが、調停の場合には登場人物はスーツ姿です。

また、場所も調停室というそれほど広くない部屋で、テーブルを挟んでお話をします。

その部屋に夫婦が順番に入って話をします。

3.離婚調停の進み方

調停は話し合いの場であり、上で見たような調停委員がその橋渡しをしてくれます。

そうすると、この橋渡しをする調停委員に、こちらの主張や意図をきちんと汲み取ってもらわなければなりません。

語弊を恐れずにいえば、「調停委員にも納得してもらう」ということが、離婚調停を自分の思っている方向へ終着させるためには重要になります。

つまり、調停委員に「こちらの言っていることはもっともだ」と思ってもらうことが大切なのです。

では、調停委員にも納得してもらうための要所を考えてみましょう。

(1)まずは、落ち着いてご自分の最も叶えたい思いを考える

ひとくちに「離婚調停」といっても、その内容はさまざまです。

  • 離婚をしたい
  • 離婚はしたくない
  • 親権がほしい
  • 慰謝料の支払いをしてほしい
  • 適切な財産分与をしたい

などなど、多様な思いがあります。

特に、離婚調停を起こされてしまった側としては、心の準備ができていないこともままありますが、そのように混乱したまま調停に望んでも、きちんとご自身の主張をすることが難しいと思います。

まずは落ち着いて、この調停の結果どうしたいのか、ということを整理しておくことが大切になります。

(2)事実や、感情だけではなく、両方のバランスをとる

法律の世界では、事実が重要です。

例えば、どれだけ嫌でも、契約したという事実があれば、その契約の内容は履行しなければなりません。

調停も、裁判所が関与する法的手続きなので、事実は大切です。

感情的な決め付けや、思い込みなどだけでは、調停委員もこちらの主張を全面的に信用することはできないでしょう。

しかし、調停は話し合いの場でもあります。

しかも、上記のように調停委員は必ずしも法律の専門家ではありません。

したがって、共感してもらうのもひとつの有効な手段なのです。

例えば、淡々と事実を主張して「だから離婚したいんです」といっている申立人に対して、涙をこらえながら、「離婚は嫌なんです」と相手方が言っていたら…やはり共感や同情は避けられないかもしれません。

このように、離婚調停は無味乾燥な法的な争いではなく、それぞれの感情にも配慮したお話し合いの手続きです。

私は以前、相手が明らかに無茶な主張をしてきたため「それは法的には通らないのではないか」と主張したところ、調停委員が「それはそうなんですが…」と食い下がってきたことがあります。

結局その際には、こちらも感情面に訴えることで、中間的な解決を得られましたが、事実や法律だけではいけないことを再認識させられました。

とはいえ、逆に、感情を爆発させるのも、あまり好ましくありません。

あくまで法的な手続きなので、前提となる事実はきちんと主張する必要はあります。

このバランスをとるというのが難しいですが大切なことなのです。

(3)相手に対する配慮も要求される場面がある

調停の最終目標は、合意に達することです。

すると、両者が言いたいことを言い合っているようでは、調停成立は困難になってしまいます。

こちらとしては、調停委員を通じて話をして相手からも合意を得る必要があります。

そうすると、相手からも合意を得るための事情や説明を調停委員に対してすることが効果的です。

これは、上で見たように、必ずしも法的に正しい必要はありません。

自分の望みが叶うことによって、相手にもメリットがあるということを示せれば、調停委員はそれを材料に相手を説得してくれます。

例えば、年齢によっては「早期に離婚を成立させたほうが、お互いに再婚の可能性が高まる」として、相手方の第二の人生に配慮する言い方をすることがあり得ます。

また、「このまま紛争が長引けば、子どもの精神的負担になってしまう」という可能性もあります。

自分がどうしたいかだけではなく、相手にとってもメリットがあることを示せれば、合意に達する道が開けてきます。

(4)誠実さを忘れない

調停委員も人間である以上、やはり人に対する印象に大なり小なり左右されます。

誰だって、嘘をついたり無礼な人の話は聞きたくないですし、味方になりたくないですよね。

口調や態度は丁寧にし、自分に非がある部分は認めましょう。

その上で、きちんと自身の主張ができれば、調停委員も真摯に耳を傾けてくれます。

まとめ

一般的な、離婚調停での調停委員との話し方の注意点をご紹介しました。

調停は、「法的な話し合い」という中間的な性質を持っているが故に、独特の注意点があります。

しかし、そのため「調停委員がどんな性格の人か」という点に大きく左右されることにもなりかねません。

不貞行為は断固悪だと感じている調停委員もいれば、ある程度寛容な考え方をする調停委員もいます。

事実に基づいて結論を下すべきだと考えている調停委員もいれば、両者の感情面へ最大の配慮をすべきだと考えている調停委員もいます。

したがって、自分の思いを適切に調停委員に届けるためには、目の前の調停委員がどんな考え方で調停に望んでいるのかを把握することが大切になりますが、一般には困難かと思われます。

そこで、家事事件の経験が豊富な弁護士を代理人とすることをお勧めします。

弁護士による冷静な主張と、ご依頼者様によるお気持ちのこもった主張の二人三脚で、より良い解決を得ることができるでしょう。

調停委員にうまく伝えられるか不安がある、そんなときはぜひご相談ください。