債務整理とはどんな手続?それぞれの手続についてご説明

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「借金の負担を軽減するのに債務整理という手段があると聞いた」
「債務整理を検討しているがどのような手続かわからない」

借金の負担を軽くする方法として債務整理があります。

債務整理とは、借金の負担を軽くするいくつかの手続の総称です。

そのため、一口に債務整理といっても具体的にどのような手続かわからないことも多いと思います。

この記事では、債務整理の手続の種類、それぞれの手続のメリット・デメリットについてご説明します。

1.債務整理とは

繰り返しになりますが、債務整理とは、債務の負担を軽くするために借金を減額したり免除を受けたりする手続の総称です。

複数ある手段の内、状況にあったものを選択して、借金返済の負担を軽くすることができます。

対象となる借金には、カードローンや消費者金融からの借金、クレジットカードの残債務など、様々なものが含まれます。

毎月の返済を減らしたい場合や多重債務に陥ってしまい返済が難しい場合は、メリット・デメリットを理解の上、債務整理を進めることを検討してみましょう。

2.債務整理の3つの手続

債務整理には、主に3つの手続があり、それぞれ借金をどれだけ少なくできるかや手続を行うための条件が異なります。

これらを理解した上、ふさわしい手続を選ぶことが大切です。

以下、順にご説明します。

(1)任意整理

任意整理とは、債権者と直接交渉し、将来利息のカットや、長期の返済スケジュールを設定して和解をするという方法です。

これにより、月々の返済負担を軽減し、債権者に支払っていくお金の総額の減額をすることができます。

裁判所を通さずに行う手続であるため、債務整理の中では債務者側の負担が小さく、また、和解までにかかる時間が比較的短い手続です。

#1:メリット

任意整理のメリットは、他の手段よりも生活への影響を抑えながら借金を減額できる点です。

車や自宅など資産価値の高い財産を所有している場合でも、それらを取り上げられることなく債権者と交渉することができます。

また、車や自宅のローンが残っている場合でも、ローン会社以外の債権者と任意整理を進めることによって、車や自宅を債権者に取り上げられずにその他の借金を減額することができます。

#2:デメリット

任意整理では減らせる可能性があるのは将来発生する利息部分のみであり、少なくとも元本は返済する必要があります。

それを5年程度で返済することが一般的ですので、元本を60回で分割した金額を毎月支払う余裕がない場合や分割しても支払うことが困難なほど元本が高額になっているという場合は、任意整理による解決は難しくなってしまいます。

このように、大幅な減額は期待できないというのが任意整理のデメリットといえるでしょう。

(2)個人再生

個人再生は、裁判所に申立てを行い、借金の返済が困難であることを認めてもらった上で借金の減額を受け、原則3年で返済していく計画案を裁判所に認可してもらう手続です。

#1:メリット

個人再生では借金の総額に応じて以下のように最低弁済基準額が定められています。

手続の中で作成する再生計画案では、原則としてこの金額を弁済する金額として定めることになっています。

借金総額 最低弁済基準額
100万円未満 借金総額と同等
100万円以上500万円以下 100万円
500万円超え1500万円以下 借金総額の5分の1
1500万円超え3000万円以下 300万円
3000万円超え5000万円以下 借金総額の10分の1

上記の表のとおり、例えば借金総額が3000万を超えて5000万円以下の場合の最低弁済額は借金総額の10分の1となっており、減額幅は大きくなっています。

個人再生の場合は元本部分についても減額ができるため、任意整理に比べると大幅な負担軽減を期待できます。

また、個人再生には住宅資金特別条項という制度があります。

この制度を利用すると、住宅ローンの返済はそのまま続けて住宅を手元に残し、それ以外の借金について減額する、ということができます。

#2:デメリット

個人再生では、借金の総額が5000万円以内でなければならないという制限があります。

また、個人再生では返済のための期間を原則3年、特別な事情がある場合でも5年以内とする必要があります。

この間、返済が滞らないよう債務者には安定した収入があることが求められます。

無職、不定期のバイトなど、収入が安定していない場合は再生計画が認可されず、個人再生がうまくいかない可能性もあるのです。

(3)自己破産

自己破産は裁判所に申立てを行い、借金の返済が困難であることを認めてもらった上で、一部の財産を除いてお金に換えて債権者へ分配した上、残りの借金の支払義務の免除を受けるという手続です。

#1:メリット

自己破産のメリットは、なんといっても借金の支払義務が免除され、毎月の返済がなくなる点です。

税金等一部の債務については免除の対象になりませんが、それでもほとんど支払義務の免除を受けることができるので、返済の負担はほとんどなくなるでしょう。

また、個人再生のように債務総額について上限も設けられていません。

多重債務に陥り返済が困難になってしまい、返済が考えられないような場合には次に説明するデメリットもご確認の上、自己破産を検討するのがよいでしょう。

#2:デメリット

自己破産では、自宅や車など資産価値の高い財産は換価処分されてしまうため、原則として手元に残すことができません。

しかし、一定の価値以下の財産、99万円以下の現金、20万円以下の預貯金などは手元に残すことができるようになっているため、何もかもなくなってしまうということはありません。

どれだけの財産を残せるかは、破産手続を行う裁判所によって異なりますので、弁護士に相談されるのがよいでしょう。

また、弁護士などの士業、警備員や保険外交員など、一部の資格・職業については破産手続の開始後、免責許可決定の確定までの間、制限されてしまいます。

転職する、一時的に休職するなどの対応が必要な場合がありますので注意しましょう。

3.債務整理をする時の注意点

債務整理は借金の負担が軽くなるというメリットがありますが、手続をするにあたって注意しなければならない点もあります。

・信用情報機関に事故情報が登録される

・保証人・連帯保証人に対して一括請求される

・手続が複雑である

順に説明します。

(1)信用情報機関に事故情報が登録される

任意整理・個人再生・自己破産のどの手続によっても、信用情報機関に事故情報が登録されます。

信用情報とは個人のローンの借入履歴や金融事故の情報を指し、これらの情報を管理するのが信用情報機関です。

債務整理をすると、その事実が金融事故として信用情報機関に登録されます。

借金を完済した後も一定期間事故情報が残り、その期間は新たに借入れをしたりクレジットカードを作ったりできません。

この借入れには、住宅や自動車のローンももちろん含まれますので注意が必要です。

事故情報が登録される期間は、以下のように定められています。

債務整理の手続方法 CIC(株式会社シー・アイ・シー) JICC(株式会社日本信用情報機構) KSC(全国銀行個人信用情報センター)
任意整理 完済から5年 完済から5年

(ただし2019年9月30日以前の契約は受任通知の送付日から5年)

完済から5年
個人整理 完済から5年

 

完済から5年
(ただし2019年9月30日以前の契約は手続開始決定日から5年)
手続開始決定日から10年か、完済から5年のいずれか遅い方
自己破産 免責許可決定確定日から5年 免責許可決定確定日から5年 手続開始決定日から
10年

(2)保証人・連帯保証人に対して一括請求される

個人再生や自己破産によって借金の減額や免除がされるのは債務者本人のみです。

保証人・連帯保証人がいる場合、そちらが保証債務の一括弁済を請求されてしまいます。

家族が保証人・連帯保証人になっている場合もこれは変わりません。

任意整理であれば、保証人・連帯保証人がついている債務を対象から外すことで回避できます。

個人再生や自己破産では債務を選ぶことができませんのでこちらの手続を選択する際は注意が必要です。

(3)手続が複雑である

債務整理の中でも、裁判所を通して行う個人再生と自己破産は手続が複雑です。

書類や提出資料に不備があると手続が進まなくなってしまう場合があります。

また、破産者自身で行う場合、自己破産では管財人、個人再生では再生委員が就任し、それらの報酬を裁判所に予納する形で負担することになるため、出費も大きくなってしまいます。

手続を行うのに不安がある方は、弁護士に依頼するようにしましょう。

まとめ

借金が増えて返済が困難になってしまった場合は、債務整理を検討してみましょう。

債務整理には、これまで説明してきたように、3つの方法があり、それぞれメリット・デメリットがあります。

どの手続が自分に適しているかわからないという方は、弁護士に相談して、アドバイスを受けることをおすすめします。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

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