個人事業主が債務整理を行う際の注意点とは?主な債務整理の方法も紹介
「個人事業主は債務整理を行うことはできるのか」
「個人事業主が債務整理を行う際の注意点について知りたい」
会社などに所属せずに個人で事業を行っている方の中には、資金繰りが悪化し、債務整理を行うべきか迷っている方もいると思います。
個人で事業を営んでいる方は運転資金などを金融機関から借入れしている場合が多い反面、安定した収入の確保が難しく、返済のために新たな借入れを行う、いわゆる「自転車操業」に陥る可能性があります。
本記事では、個人事業主が債務整理を行う上での注意点を債務整理の手段ごとに解説します。
1.個人事業主は債務整理を行えるか
結論から言うと、個人事業主であっても債務整理を行うことはできます。
債務整理とは、裁判所への申立てや債権者との交渉によって、借金を減額または免除する法的手続の総称です。
一般的に、債務整理を行う債務者は会社員やアルバイトなどの給与所得者であることが多いですが、個人事業主も一個人であるため、給与所得者と同じように債務整理を行うことができます。
しかし、会社から給与を受け取って生活をしている給与所得者と違って、個人事業主は会社組織ではない形で事業を営んでいるため、債務整理を行うことで直接事業に影響が出る可能性があります。
どのような影響が生じる可能性があるのかについては、次項で詳しく取り上げます。
2.債務整理の方法と個人事業主が注意すべきポイント
債務整理には、主に3つの方法があります。
具体的には、以下のとおりです。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
それぞれの概要や個人事業主が債務整理の方法として選択した場合に生じうる影響について、順に解説します。
(1)任意整理を行う際の注意点
任意整理とは、裁判所を介さずに債権者との間で借金の返済方法(将来利息の免除や返済スケジュールの再設定など)を交渉し、借金の返済をしやすくする手続です。
将来利息の一部または全部の免除を受けられることが多く、着実に借金を減らすことができます。
また、任意整理を行う債務をこちらで選ぶことができるため、事業継続に影響のある債務を対象外とすることで、事業継続に影響がでないように債務整理を行えるなどのメリットがあります。
もっとも、任意整理を行った事実が信用情報機関に事故情報として登録される(いわゆるブラックリスト)ことから、新たな借入が難しくなるなど、事業へ影響が生じることもあります。
個人事業主が任意整理を行うにあたっては、以下の点に注意が必要です。
- 事業の継続は可能
- 一定期間は新規のローンや借入れができない
順にご説明します。
なお、任意整理のメリットやデメリットなどについては、以下の記事でも取り上げていますので、合わせてご参照ください。
#1:事業の継続は可能
任意整理では、対象とする債務を選択することができます。
例えば、車のローンを完済しておらず、所有権留保などの担保権が設定されている場合、ローン会社を債務整理の対象とすると、車がローン会社に引き上げられます。
しかし、任意整理では対象とする債務を選択できるので、事業に車が必要な場合、車のローン会社を任意整理の対象から外すことで、車が引き上げられることはなく引き続き事業を営むことは可能です。
また、後述する個人再生や自己破産とは異なり、未回収の売掛金債権がある場合でも、それが最終的な返済額に上乗せされたり債権者に換価・配当されたりすることはありません。
そのため、売掛金を事業を継続するための資金として活用することも可能です。
もっとも、取引がある銀行のローンを任意整理の対象とすると、その銀行口座が凍結され、口座の中身が動かせないなど事業に影響が出るため、事業継続を視野に入れて債務整理を行う場合には、銀行のローンを対象から外す必要があります。
#2:一定期間は新規のローンや借入れができない
任意整理に限らず、債務整理を行うと、信用情報機関に債務整理を行った事実が事故情報として登録されます。
信用情報機関とは、各金融機関から顧客情報の提供を受けて管理し、反対に各金融機関から信用情報の照会を求められたときにはこれを提供するという業務を行う機関です。
各金融機関は、新規のローンなどの申込みがあった場合には、信用情報機関に照会を行うため、事故情報を知られてしまうことになります。
事故情報が登録されている場合には、新たなローンや借入れを行うことができなくなってしまうことに注意しましょう。
また、クレジットカードについては、任意整理の対象とした場合には利用できなくなります。
任意整理の対象としていないカード会社のものであっても、更新の際に信用情報機関への照会が行われるため、利用できなくなる場合がほとんどです。
そのため、クレジットカードを利用して事業に必要な仕入れなどを行っている場合には、事前に銀行口座引き落としなどの支払方法に変更しておくことが重要です。
(2)個人再生を行う際の注意点
個人再生は、裁判所に申立てをして借金の返済が困難であることを裁判所に認めてもらった上で、借金をその金額に応じた割合で減額し、原則3年間で返済する再生計画案について裁判所の認可を受けたら、その計画どおりに返済していく手続です。
任意整理よりも大きく債務額を減らすことが出来る手続であり、一般的には、ギャンブル等の浪費で借金を作ってしまい破産が難しい場合や、住宅ローンの残った自宅を手元に残したい場合に検討することが多い傾向があります。
もっとも、任意整理と同様に、信用情報機関に個人再生を行った事実が登録されるため、新たな融資や借入れを行うことはできなくなります。
個人事業主が個人再生を行う上での注意点は、以下のものがあります。
- 事業の継続は可能
- 返済額が高額になる可能性がある
- 安定した収入が必要
なお、個人再生の手続の流れについては、以下の記事が参考になります。
#1:事業の継続は可能
個人再生では、後述する自己破産とは異なり、債務者の財産が換価され、債権者に配当されることはありません。
そのため、個人再生を行っている間も事業に必要な什器や車などを手元に残して事業を継続することができます。
もっとも、車のローンが完済できておらず、車に所有権留保などの担保権が設定されている場合には、ローン会社に引き上げられてしまいます。
所有権留保とは、ローンの完済までは車の所有権をローン会社に留めることをいい、ローン会社は債務者に車を利用させながら、返済が滞ったときの担保とすることができます。
事業に必要な車を手元に残すためには、車のローンを自身で返済するのではなく、親族や知人の援助を受けるなどして完済してもらい、そのまま使用し続けることが考えられます。
もっとも、以後の債務整理手続に影響が生じる場合もあるため、上記対応ができるかどうかは弁護士に相談・確認するのが望ましいです。
#2:返済額が高額になる可能性がある
個人再生では、住宅ローンを除いた5000万円未満の借金について、債務総額に応じて最低弁済額が定められます。
もっとも、個人再生には債務者が自己破産を選択していた場合に債権者へ配当される金額を下回ってはならない「清算価値保障原則」という考え方があり、最低弁済額基準で算出された金額とこれを比べたときに、金額が高い方で返済をしなければなりません。
清算価値保証原則は、自身の所有する財産をお金に換えたときにいくらになるのかという基準で算出されるので、不動産や預貯金、未回収の売掛金債権など、高額になりそうな財産がある場合には、最終的な計画弁済額が高額になり、個人再生を行うメリットが損なわれる可能性もあるので注意が必要です。
「清算価値保障原則」の概要や計算方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
#3:安定した収入が必要
減額を受けた債務の返済は、裁判所へ提出する再生計画に従って行う必要があります。
具体的には、毎月一定額の金額を原則3年(最長5年)にわたって継続して支払いを行うことが求められます。
そのため、個人再生を行うためには継続的に安定した収入を得られることが前提です。
また、過去の収入などから、再生計画に基づく返済を行うことができることを裁判所に証明することが必要です。
個人事業主が収入を証明するためには、確定申告書等の公的書類が必要となりますので、確定申告を怠らないようにしましょう。
(3)自己破産を行う際の注意点
自己破産は、裁判所に借金の返済が不可能であることを認めてもらい、税金などの一部の債務を除いたすべての返済義務を免除してもらう方法です。
借金の返済負担から解放される一方で、不動産や車などの高額な財産は換価しなければならないことには注意が必要です。
また、手続が終了し復権するまでは各種士業や警備員などの職業に資格制限がかかるため、一時的に休職や転職を行わなければならないケースもあります。
個人事業主が自己破産を行う際の注意点は、以下のとおりです。
- 事業は継続できない
- 取引先の信用を失うリスクがある
それぞれ見ていきましょう。
#1:事業の継続は困難になる可能性がある
自己破産では、高額な財産は手続の中で換価され、場合によっては債権者へ配当されます。
もっとも、法律で差押えが禁止されている一定の財産については換価処分の対象外となり、事業に使用していた什器や機材などのすべてが換価されるわけではありません。
しかし、ローンを完済できていない車両や機材などについては、ローン会社に引き上げられてしまいます。
また、什器や機材なども資産価値が認められれば、換価・配当の対象となるため、場合によっては事業に必要な什器や機材などを失い、事業継続が困難になる可能性は残ります。
#2:取引先の信用を失うリスクがある
個人事業主が事業に必要な材料や資材を業者(売主)から仕入れており、その業者(売主)に対して負債が残っている場合には、自己破産手続を進めるにあたりその業者(売主)を破産債権者として裁判所に報告しなければなりません。
そうすると、代金の支払いができないことが取引先に知られてしまいますので信用を失い、取引を打ち切られるリスクがあります。
ただ、このような事態を回避しようと上記債権者のみに返済を行うことはできません。
これは、破産手続上、偏頗弁済という免責不許可事由に該当し、最終的に免責を受けられない事態が生じてしまうからです。
最終的に免責不許可となれば、借金の免除を受けることができなくなってしまいます。
自己破産手続を行っている以上、ある程度の影響は避けられませんが、その他の債務整理への方針変更も含めて対応できることもありますので、弁護士に相談することをおすすめします。
3.弁護士に相談するメリット
債務整理を検討している場合には、まずは弁護士に相談することがおすすめです。
弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。
- 無料で専門的なアドバイスを受けられる
- 債務整理の手続を依頼できる
- 債権者からの督促や取立てを止めることができる
順にご説明します。
(1)無料で専門的なアドバイスを受けられる
弁護士に相談することで、無料で専門的なアドバイスを受けられることが大きなメリットと言えます。
借金問題や債務整理の相談については、相談料を無料としている法律事務所が多いです。
そのため、費用を気にせずに相談することができます。
また、事業継続を視野に入れた債務整理の方法など、相談者の希望に合わせた最適な方法についてのアドバイスを受けることも可能です。
弁護士法人みずきでは、借金問題や債務整理の相談について、相談料を無料としています。
個人事業主の方にも、借金や収入の状況に合わせた最適な解決策の提案を行いますので、ぜひご相談ください。
(2)債務整理の手続を依頼できる
相談から債務整理の手続の依頼まで、スムーズに進めることができるのもメリットの1つです。
債務整理手続のうち、任意整理の場合は債権者との交渉が必要であり、個人再生と自己破産では裁判所への申立てが必要となります。
債権者との交渉も裁判所を介したやりとりは、経験がなければスムーズに行うことはできません。
また、個人再生や自己破産の場合は裁判所へ提出する書類の作成や収集など、煩雑な手続が数多くあります。
弁護士に手続を依頼することで、これらすべての対応を一任しスムーズにお悩みを解決することができます。
(3)債権者からの督促や取立てを止めることができる
弁護士が受任すると、各債権者に受任通知を送付します。
債権者が受任通知を受け取った後は、債務者に対して督促や取立てを行うことが禁止されます。
そのため、債権者からの督促や取立てが止まることもメリットの1つです。
個人再生と自己破産は裁判所を介して手続が進行するため、弁護士費用のほかにも裁判所へ納付する費用が必要です。
督促や取立てが停止している間に、必要な裁判所費用を捻出することもできます。
まとめ
本記事では、個人事業主が債務整理を行う際の注意点などについて解説しました。
個人で事業を行っている場合には、選択する債務整理の方法によっては事業の継続に困難が生じる可能性があります。
資金繰りが悪化している場合には、なるべく早期に弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士法人みずきでは、これまでに数多くの債務整理の手続に対応してきました。
経験豊富な弁護士が丁寧にお話を伺いますので、債務整理を行うべきかにお悩みの個人事業主の方はお気軽にご相談ください。
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