自己破産のその後はどうなる?生活への影響や制限を受けないことについても解説

「自己破産を行った後にはどのような影響があるのか」
「自己破産を行うことによってできなくなることにはどんなものがある?」
「手続を行う際にはどんなことに注意すればよいのか知りたい」
自己破産を行うことを検討されている方の中には、このような疑問をお持ちの方もいるかと思います。
自己破産の手続は裁判所を介して行い、免責許可決定を受けることで借金の返済義務が免除されます。
ほかの債務整理の手続である任意整理と個人再生では、借金の返済を継続していく必要があるため、これらと比較すると大きなメリットがあるといえます。
もっとも、自己破産を行った後にはいくつかの制限や影響を受けることがあるため、それらについてあらかじめ把握しておくことが大切です。
本記事では、自己破産を行った後に生じる影響について解説します。
自己破産を行うことで、その後の生活などにいくつかの影響が生じますが、中にはそれまでと同じように行うことができることもあります。
なお、自己破産は裁判所を介して行われる透明性の高い手続であるため、手続中にも様々な影響や注意点があります。
本記事では自己破産の手続を行う際の留意点などについても合わせて解説しています。
これから自己破産を行うことを検討されている方の参考となれば幸いです。
1.自己破産後にできなくなること
自己破産は、借金の返済が困難であることを裁判所に認めてもらい、免責許可決定を受けることで借金の返済義務を免除してもらう手続です。
債務者が一定以上の財産を有している場合には、その財産について換価処分が行われ、債権者へ配当が行われます。
そのため、高額な財産を所有している場合には、手続の中で換価処分が行われるため、それらの財産を手放さなければならなくなることはデメリットといえます。
また、裁判所から免責許可決定を受けることができても、以下のようなことは一定期間にわたって行うことができなくなってしまうというデメリットもあります。
- クレジットカードの利用や新規申込み
- 新たな借入れ
- ローンの利用
- 分割払いの利用
- 保証人になること
- 7年以内の再度の自己破産
上記のうち1~5は、債務整理を行うと信用情報機関(ブラックリスト)に登録されるためです。
もっとも、これは自己破産に限ったことではありません。
滞納している方、自己破産以外の債務整理手続きをする方も同様に、信用情報機関にその事実が登録されます。
自己破産における事故情報の登録やその期間については、以下の記事もご参照ください。
(1)クレジットカードの利用や新規申込み
自己破産後は、一定期間にわたってクレジットカードの利用や新規申込みを行うことができません。
これは、自己破産をすることで信用情報機関、いわゆるブラックリストに自己破産をしたことが事故情報として登録されることが理由です。
信用情報機関は、各金融機関から顧客情報の提供を受けて管理し、各金融機関から信用情報の照会を求められたときにはこれを提供するという業務を行う機関をいいます。
自己破産を行ったという事実は、その人の返済能力に問題があるということを示す事故情報となり、信用情報機関への照会により各金融機関がこれを知ることになります。
そのため、事故情報があると、金融機関が行うクレジットカードの審査に通らなくなってしまうのです。
また、すでに利用しているクレジットカードを更新する際にも、信用情報機関への照会が行われるため、これらについても使えなくなる可能性があることに注意が必要です。
もっとも、事故情報の登録が削除された場合にはクレジットカードの利用や新規申込みができるようになります。
自己破産とクレジットカードの利用の関係や事故情報の登録期間などについては、以下の記事も合わせてご参照ください。
(2)新たな借入れ
上記と同様の理由から、事故情報が登録されている期間は新たな借入れを行うことができなくなります。
なお、自己破産を行う前に借入れを行っていた金融機関や貸金業者からは、事故情報の登録が削除されても、原則として借入れを行うことは難しくなってしまいます。
これは、金融機関や貸金業者が独自に作成する「社内ブラック」と俗に呼ばれるものに登録・管理されることがその理由です。
そのため、自己破産後は事故情報が削除されるまでは新規の借入れを行うことができず、登録が削除された後であっても、過去に取引を行っていた金融機関などからは借入れができなくなる可能性が高いです。
このほか、自己破産後に新たに借入れを行う際の注意点については、以下の記事も参考になります。
(3)ローンの利用
自己破産を行うと、一定以上の価値がつく財産を所有している場合には、手続の中で換価処分が行われ、債権者に配当が行われます。
代表的なのは、不動産・車・バイクなどで一定以上の市場価値があるものです。
そのため、それらの財産を所有している場合には、自己破産を行うことで失ってしまう場合があります。
もっとも、これらの財産を自己破産を行うことで手放すことになった場合は、免責許可決定を受けた後であれば、新たに購入することは可能です。
しかし、住宅や車を購入する場合にはローンを利用するのが一般的であるものの、事故情報が登録されている間はローンを組めなくなってしまいます。
そのため、自己破産後に住宅や車などを購入するためにローンを組む必要がある場合には、事故情報が削除されてから行うなどの対応が必要となります。
なお、事故情報が削除された後も、自己破産前に利用していた金融機関やその関連業者でローンを利用できないため、注意が必要です。
自己破産後にローンを利用する際の注意点や事故情報の確認方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
また、自己破産後に住宅ローンを組む方法や注意点については、以下の記事も合わせてご参照ください。
なお、自己破産の手続と車のローンの関係については、以下の記事も参考になります。
自己破産後に車を購入する方法については、以下の記事も合わせてご覧ください。
(4)分割払いの利用
分割払い(割賦払い)も一定の期間は与信審査が通らず利用できない場合があります。
代表的なのはスマホなどの端末を分割払いで購入することです。
自己破産後にスマホなどを購入するためには、一括払いで購入するなどの対応が必要となります。
もっとも、携帯キャリアの乗り換えや新規契約については、自己破産後であっても問題なくすることができることを押さえておきましょう。
なお、自己破産後に携帯端末を購入する際の注意点などについては、以下の記事でも解説しています。
(5)保証人になること
事故情報が登録されている期間は、保証人や連帯保証人になることができません。
保証人とは、主債務者が支払えないときに代わりにその債務を支払う義務を負う立場の人です。
そのため、保証人となる人は経済的な信用が重要であり、審査が必要になっています。
当然、事故情報の照会は行われるため、事故情報が登録されている間は、家族から住宅ローンや教育ローンの保証人となるように依頼されても、これをすることができなくなってしまう可能性があります。
このような場合には、保証会社やほかの親族に保証人となることを依頼するなどの対応が必要です。
(6)7年以内の再度の自己破産
免責許可決定が確定してから7年以内の免責許可決定は、免責不許可事由にあたるため、自己破産をしても免責を得ることができません。
免責とは、借金の支払義務が免除されるということです。
つまり、7年間は自己破産しても免責されないので、自己破産をする意味がなくなってしまいます。
免責不許可事由があったとしても、裁量免責といって裁判所の判断で免責になる可能性もあります。
しかし、7年以内の破産は、その他の免責不許可事由に比べて裁量免責のハードルがかなり高くなっているので注意しましょう。
もっとも、自己破産をしてから10年ほどはクレジットカードの作成や新たな借り入れをすることは基本的にできないので、7年以内に自己破産しなければならない状況になることはあまりありません。
なお、7年以上経過していても、同様の理由で自己破産をした場合には、1回目の破産で反省していないと思われてしまい、免責が認められにくくなるので、期間に関係なく2回目の破産にならないようにしましょう。
免責不許可事由と裁量免責については、以下の記事も合わせてご覧ください。
2.自己破産後にもできること
上記のように、自己破産を行うことで生活に影響が生じるケースがいくつかあることに注意が必要です。
もっとも、自己破産後であっても、特に問題なく行うことができるものもあります。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- デビットカードの利用
- 自己破産前と同じ仕事をすること
- 新たに取得した財産を管理・処分すること
- 年金を受給すること
それぞれについてご説明します。
(1)デビットカードの利用
デビットカードは、利用と同時に登録している銀行口座から利用金額が引き落とされる決済手段です。
クレジットカードとは異なり、デビットカードの利用にあたって信用力は問題とはならないため、自己破産を行った後にも引き続き利用することができます。
また、自己破産後に新規でデビットカードの利用申込みを行うことも可能です。
もっとも、銀行口座から直接引き落としとなるため、利用する際には残高の確認を定期的に行うなどの対応も必要となります。
自己破産後のデビットカードの利用に関する注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。
(2)自己破産前と同じ仕事をすること
自己破産を行ったことが会社や就業先に知られることはほとんどなく、自己破産を理由に解雇されることもありません。
そのため、自己破産後も同じ仕事を続けることができます。
なお、会社に対して借入れがある場合などには、債権者である会社にも通知が届くため、自己破産を行ったことを知られるケースがあります。
このほか、自己破産と仕事の関係や注意点については、以下の記事も参考になります。
(3)新たに取得した財産を管理・処分すること
自己破産は、原則自己破産手続開始前の財産を対象とする手続ですので、自己破産の手続が開始してから取得した給与や財産は「新得財産」と呼ばれ、破産手続において換価処分の対象とはされません。
そのため、自己破産後に取得した財産については自由に管理・処分を行うことが可能です。
(4)年金を受給すること
自己破産を行ったことは、年金の受給要件に影響を及ぼしません。
そのため、年金を受給する権利が制限・停止を受けることはなく、受給要件を満たせば支給を受けることが可能です。
また、すでに年金を受給している方も、自己破産を理由に支給を打ち切られることはなく、今後も継続して支給を受けることができます。
なお、年金の受給権については差押禁止債権とされており、自己破産の手続の中で換価処分の対象となることはありません。
自己破産と年金の関係については、以下の記事も参考になります。
3.自己破産を行う際の注意点
以上のように、自己破産を行い、免責許可決定を受けた後には、制限を受けることもあるほか、今までと同じように行うことができるものもあります。
もっとも、自己破産を行う際には、注意すべき点があります。
具体的には、以下の点について把握しておきましょう。
- 一定額以上の財産は換価処分される
- 保証人に一括請求がなされる
- 氏名や住所が官報に掲載される
- 一時的に制限が加わる資格・職業がある
- 裁判所の許可を得なければ転居や出張などが行えない
- 免責を受けられない可能性がある
- 免責されない債務がある
順にご説明します。
(1)一定額以上の財産は換価処分される
先ほども述べたように、住宅や車、一定額以上の預貯金などの高額な財産を所有している場合には、手続の中で換価処分が行われ、債権者に配当が行われます。
そのため、一定以上の財産を所有している場合には、これを手放さなければならないことに注意が必要です。
例えば、99万円以上の現金を有している場合や20万円以上の価値がある財産を所有している場合には、原則として換価処分が行われます。
なお、すべての財産が換価され、債権者に配当されるわけではなく、引き続き手元に残すことができる財産もあります。
もっとも、どのような価値があれば換価処分が行われるかについては裁判所の運用が異なるケースもあります。
そのため、自己破産を行うことによって生じる影響については、まずは弁護士に相談・確認するのがおすすめです。
自己破産における住宅や不動産、車の取り扱いについては、以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご参照ください。
また、預貯金などの現金の取り扱いや手元に残すことができる財産の具体例については、以下の記事も参考になります。
(2)保証人に一括請求がなされる
自己破産では、任意整理とは異なり、手続の対象とする債権者を選ぶことができません。
任意整理の場合には、保証人を立てている債務を手続の対象から除外することで、保証人に対する影響を回避することができます。
これに対して、自己破産ではすべての債権者が手続の対象となるため、保証人を立てている債務については、保証人に対して一括請求がなされてしまいます。
そのため、自己破産を行うことで、保証人に負担を強いることとなってしまうことには注意が必要です。
また、債務額が大きい場合には、保証人も債務整理の手続を行わなければならないケースもあるため、自己破産を行う際には保証人に対して誠実に説明することが大切です。
自己破産が保証人に与える影響や注意点については以下の記事でも詳しく解説しています。
なお、家族が保証人となっていた場合の影響や自己破産が家族に与える影響については、以下の記事も合わせてご参照ください。
(3)自己破産したことや氏名、住所が官報に掲載される
自己破産を行うと、官報に自己破産したことや氏名、住所が掲載されます。
すでにご説明したとおり、官報を購入する人はほとんどいないので、会社の人や知人などに自己破産を行ったことを知られるケースはほとんどありません。
もっとも、特定の業種や職種では官報を閲覧しているケースがあるため、そこから知られてしまう可能性も否定はできません。
なお、官報に氏名や住所などの個人情報が掲載されるのは、自己破産手続が開始されたとき以外にもいくつかのタイミングがあります。
官報に個人情報が掲載されるタイミングなどについては、以下の記事もご参照ください。
(4)一時的に制限が加わる資格・職業がある
士業や警備員のように破産手続中は資格が制限されることを法律で規定している一部の仕事については、自己破産手続きの申立てをしてから廃止決定か免責決定が確定するまでの間は、その資格が制限されます。
破産手続が終わって「復権」という状態になるまでは、その資格を使った業務ができなくなるため注意しましょう。
復権とは、破産申立てをした方は破産者として法律上の制限を受けることになるところ、その制限が法律上解かれることをいいます。
復権については破産法255条に規定されています。
第255条(復権)
破産者は、次に掲げる事由のいずれかに該当する場合には、復権する。次条第1項の復権の決定が確定したときも、同様とする。 一 免責許可の決定が確定したとき。 二 第218条第1項の規定による破産手続廃止の決定が確定したとき。 三 再生計画認可の決定が確定したとき。 四 破産者が、破産手続開始の決定後、第265条の罪について有罪の確定判決を受けることなく10年を経過したとき。 2 前項の規定による復権の効果は、人の資格に関する法令の定めるところによる。 |
該当する資格・職業に就いている方は、自己破産の手続の間は資格者でなくともできる業務を行う、休職や転職をするなどの調整が必要になります。
制限が加わる職業・資格の詳細については、以下の記事も合わせてご覧ください。
(5)裁判所の許可を得なければ転居や出張などが行えない
これも(4)と同様に、破産者が自己破産手続中に法律によって制限される事柄のひとつですが、破産者は裁判所の許可を得なければ居住地をはなれることができません。
そのため、転居や旅行・出張などの移動を伴う行動をする際には裁判所や破産管財人の許可を得ることが必要となります。
これは、破産手続中に破産者が逃亡や財産の隠匿などを行って手続が遅延することを防止する必要があるからです。
自己破産手続中の転居や旅行などの注意点については、以下の記事もご参照ください。
(6)免責を受けられない可能性がある
すでにご説明したとおり、自己破産では、裁判所の免責許可決定を受けることで借金の返済義務の免除を受けられます。
そのため、裁判所から免責許可決定を受けることができなければ、自己破産の手続を行ったとしても借金の返済を引き続き行わなければならないことに注意が必要です。
具体的には、破産法上で定められた「免責不許可事由」に該当する場合、免責許可を受けることができない可能性があります。
もっとも、免責不許可事由に該当する場合であっても、破産者が真摯に反省し、更生の余地があると裁判所が判断した場合、免責を受けられる「裁量免責」の制度もあります。
そのため、免責不許可事由に該当しても、裁量免責を受けられる可能性があるかについて弁護士に相談・確認することが重要です。
免責不許可事由の具体的なケースについては、以下の記事もご参照ください。
(7)免責されない債務がある
自己破産を行い、免責許可決定が出たとし免責許可決定が出たとしても、一定の債務については引き続き支払義務が残るため、注意が必要です。
具体的には、滞納していた税金や社会保険料などがこれにあたり、「非免責債権」と呼ばれています。
非免責債権に該当するものに関しては、免責許可決定を受けることができたとしても、その支払義務が残るため、訴訟や差押えなどの法的手続をとられる可能性があります。
そのため、どのような債務が自己破産後に支払義務が残るのかについても、あらかじめ把握しておくことが重要です。
非免責債権の概要や具体例については、以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
まとめ
本記事では、自己破産を行う際の注意点や行った後の影響などについて解説しました。
自己破産後には、一定期間にわたってクレジットカードやローンの利用ができなくなるため、注意が必要です。
また、手続中に制限が加わる事項もあるため、自己破産を行うことを検討されている方はこの点についても把握しておきましょう。
弁護士法人みずきでは、これまでに数多くの自己破産の手続に対応してきました。
経験豊富な弁護士が丁寧にお話を伺いますので、自己破産を行うことにお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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