過払金が発生する期間とは?過払金請求の時効について解説
「過払金請求ができるのは、いつからいつまでの借入れが対象なの?」
「過払金の時効は、いつからカウントされるの?」
ご自身の今までの借入れについて過払金が発生しているとお考えの方には、このような疑問もあることかと思います。
過払金が発生している可能性のある期間は、一概にいつからの借入れが対象だと断言することができませんが、2006年ごろまでの借入れであれば、過払金が発生している可能性があります。
また、過払金返還請求の時効は債権者との最終取引から10年ですので、請求手続をご検討の場合は、なるべく早く対応する必要があります。
本記事では、過払金が発生する期間とその条件、過払金請求の時効、過払金返還請求を早急に進めるためのポイントなどについて順にご説明します。
1.過払金が発生する期間とその他の条件
過払金が発生する期間とその条件は、以下の3点です。
・2006年(平成18年)頃までの債権者との取引
・利息制限法上の金利を超える取引
・債権者との最終取引から10年以内
それぞれ順に詳細をご説明します。
(1)2006年(平成18年)頃までの債権者との取引
2006年頃までに債権者と取引をしていた場合、過払金が発生している可能性があります。
債権者との取引には、消費者金融からの借入れ、カードローン、クレジットカードのキャッシング枠の利用なども含まれます。
2010年6月18日に出資法および貸金業法が改正されるまでは、利息制限法の上限金利20%と出資法の上限金利29.2%の間での金利で貸付けが行われていました。
このような金利は、「グレーゾーン金利」と呼ばれていました。
これは、出資法の上限を超えなければ刑事罰を受けなかったこと、利息制限法の上限を超えた場合は無効となるものの、貸金業法の「みなし弁済」の規定により有効となると解釈されていたためです。
しかし、法改正により出資法の上限金利は20%となり、貸金業法からはみなし弁済の規定が撤廃されました。
この改正のきっかけは、2006年に最高裁判所がグレーゾーン金利について、みなし弁済は無効であると判断したことにあります。
この判決が出たことにより、上記の法改正以前に、自主的に上限金利を利息制限法の上限金利の範囲内へ引き下げた貸金業者が多数存在します。
ですので、金利の引き下げが行われるようになった2006年頃までに、貸金業者から借入れを行っている場合は、過払金が発生している可能性が高いのです。
貸金業者の中には2006年の最高裁判所判決が出た後も、利息制限法の上限金利を超える金利で貸付けを行っているケースもあります。
そのため、2006年頃までというのはあくまでも目安ではあります。
この前後の時期から貸金業者と取引をしているという方で、過払金発生の有無を確かめたいという場合は、弁護士へご相談ください。
(2)利息制限法上の金利を超える取引
上記のとおり、2006年頃までに取引を開始していた場合には過払金が発生している可能性があります。
これは、その頃までの取引は、利息制限法上の上限金利を超える金利で債権者と取引を行っていた可能性があるからです。
上限利率は、元金によって異なり、以下のとおりです。
元金 | 上限金利 |
10万円未満 | 20% |
10万円以上100万円未満 | 18% |
100万円以上 | 15% |
以上の表を超えた利率で利息を支払っている場合、過払金が発生したことになります。
もっとも、銀行の取引については適用される法律が違い、2006年以前の取引であっても上限金利を超える利率ではないなど、借入れをした業者によって上限金利を超えているかは異なります。
そのため、ご自身が借入れを受けた業者に過払い金があり得るのか気になったら、弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
(3)債権者との最終取引から10年以内
過払金があるとしても、債権者との最後の取引の日から10年以内に、返還を請求する必要があります。
過払金の返還を請求する権利は、原則10年が時効とされているため、それを超える月日が経っている場合は過払金の返還請求ができません。
ですので、ご自身の借入れについて過払金が発生しているかもしれないと思われた場合は、お早めに弁護士にご相談ください。
弁護士へご依頼いただければ、債権者との最後の取引がいつ頃終了したかが分からない場合にも、債権者へ取引履歴の開示請求を行って確認することができます。
2.過払金請求の時効について
先ほどもご説明した通り、過払金の返還請求ができる時効は、原則債権者との最終取引から10年となります。
ただし、最終取引から10年以上が経過していても、場合によっては過払金請求の時効が成立しないケースもあります。
それぞれについて順にご説明します。
(1)過払金請求の時効は10年
過払金は、債権者と債務者が最後に借入れや返済をした日を起算点として、10年が経つと時効が成立します。
例えば、2012年4月1日に借金の返済が完了し、その後同じ貸金業者との間で何の取引もなかった場合は、10年後の2022年4月1日に時効が成立します。
そのため、15年前に借入れを行っていたとしても、借金を完済したのが10年以内であれば、過払金の返還請求ができるのです。
過払金請求をご検討中の方の中には、時効がまだ成立していないにもかかわらず、古い借入れだからと請求を断念してしまう方もいらっしゃいます。
ご自身で判断せずに、まずは過払金の有無や請求できるのかどうかを知るためにも、専門家にご相談いただくことをおすすめします。
(2)過払い金請求の時効が成立しないケース
先ほど、過払金は債権者との最終取引から10年が経過すると時効が成立してしまうとお伝えしました。
しかし、場合によっては最終取引から10年が経過していても請求が認められることもあります。
#1:同じ貸金業者から再度借入を行った
一度完済した後に、同じ貸金業者から再び借入れを行っていた場合は、完済後10年を経過していても過払金を請求できる可能性があります。
同一の業者で再度借入れを行っていた場合、複数の借金が一連のものとして処理されます。
そのため、ひとつの借金の完済日が10年以上経っていたとしても、時効が成立しないケースがあります。
例えば2012年4月1日に完済した借金Aの本来の過払金時効は、2022年4月1日となります。
しかし、2012年の最終取引後に同一の貸金業者から別の借金Bを借りていた場合は、借金Aと借金Bが一連の借入金と判断されることがあります。
そうすると、借金Aの時効である2022年4月1日ではなく、借金Bの取引終了時から10年間が時効の完成日となります。
ただし、複数の借金が連続した一連のものであると認められるためには、複数の要素を総合的に判断されることになります。
要素1:それぞれの取引の長さはどの程度か
要素2:1つ目の最終取引日から2つ目の借入までの期間はどの程度か
要素3:1つ目の取引条件と2つ目の取引条件は同一又は類似しているか
要素4:2つ目の取引開始時に与信審査が行われているか
など、様々な点を確認していく必要があります。
そのため、完済後に再度取引を行っているような場合には、これらを一連のものと考えることができるか、弁護士にご相談ください。
#2:貸金業者から不法行為を受けていた
10年の消滅時効になるのは、あくまで取引関係に基づくものです。
そのため、例えば業者側が違法な取立て等の不法行為を行っている場合には、その不法行為について別途時効を考えることとなります。
・暴行や脅迫などを伴う督促行為
・深夜や早朝など社会生活をする上で非常識な時間帯の督促行為
・電話や訪問での取立を1日に複数回行う行為
・違法金利であることを知りながら行った督促行為
もっとも、立証の困難さや不法行為による損害が必ずしも過払金全額とはならない可能性があります。
そのため、請求の可否については専門家にご相談ください。
3.過払金請求に関する手続の準備について
過払金の返還請求は、原則債権者との最後の取引から10年以内に行う必要があります。
ですので、できるだけ早く手続の準備をすることが賢明と言えます。
過払金の請求は、自分で行うこともできます。
しかし、過払金の返還請求を行う際、実際に過払金が発生しているのか、発生している場合どのくらいの金額の過払金を請求できるのかを調査・計算する必要があります。
これらの調査を行うためには債権者へ過去の取引履歴の開示請求を行ったり、過払金の具体的な金額を計算するために複雑な引き直し計算をしたりする必要があります。
準備には時間と手間がかかるため、準備を進めている間に時効が成立してしまう危険性あります。
また、実際に請求を行ったとしても、貸金業者がすぐに返還に応じることは少ないでしょう。
場合によっては、本来認められるべき金額よりも大幅に低い金額で和解してしまっていることもあります。
過払金の対応に実績があったり精通していたりする弁護士であれば、スムーズに過払金の調査や計算を行い、適正な請求を行うことができます。
弁護士法人みずきでは、過払金返還請求の実績豊富な弁護士が在籍しておりますので、一度ご相談ください。
まとめ
2010年6月18日に貸金業法の法改正があったことで、利息制限法の上限金利を超える金利で借入れが行われることがなくなりました。
貸金業者の中には、2006年の最高裁判所の判決から、自主的に上限金利を利息制限法の上限金利以下へと変更しました。
ですので、2006年ごろまでに利息制限法の上限金利を超える利率で借入れを行っていた場合は、過払金が発生している可能性が高いです。
過払金の返還請求権は、原則10年で時効が成立しますので、できるだけ早急に手続の準備を始めることが鍵となります。
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