国が認めた借金救済制度とは?返済に困ったときの対処法

国を被告とするアスベスト訴訟で受給できる賠償金

執筆者 青山 侑源 弁護士

所属 東京弁護士会

法律トラブルというものは、いつも身近に潜んでいるものです。
はじめのうちは「大したことないだろう」と思っていたことが、そのうち大事になってしまうというケースも多くありますので、少しでも「法律トラブルに巻き込まれたかもしれない」と感じている場合には、お早めにご相談いただくことをおすすめいたします。
法律トラブルへの対処方法や解決方法は、個人の方、法人の方ごとに千差万別ですが、お早めにご相談いただくことで、選べる選択肢も多くなります。
どのような解決方法があなたにとって最適な選択となるのか、一緒に検討していきましょう。

「国が認めた借金救済制度があるって聞いたけど本当なのか」
「返済に困ったときはどうしたらいいのか」

借金の返済に困っている方の中には、借金の救済制度について詳しく調べている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、借金の救済制度や返済で困ったときの対処法についてご紹介します。

1.借金救済制度とは

借金救済制度とは、債務者の借金問題を解決する法的に認められた手続のことです。

主に債務整理を指すことが多く、一定の要件のもとで借金の減額や免除などを受けることができます。

ただし、債務整理のうち任意整理は債務者と債権者が直接交渉を行う手続で、裁判所を介したやり取りをしないため、厳密に言うと任意整理は国が認めた救済制度とはいえません。

個人再生や自己破産は裁判所のもと法律に則って手続を行うので、これらの方法は国が認めた制度と捉えることができます。

2.借金の返済で困ったときの対処法

時効が完成しそうになったときの対応

借金の返済で困ったときの対処法はいくつかあります。

主な方法は以下の6つです。

借金の返済で困ったときの対処法

1.任意整理
2.個人再生
3.自己破産
4.特定調停
5.過払い金返還請求
6.消滅時効の援用

順にご紹介します。

(1)任意整理

任意整理は債務整理の1つで、債権者と直接交渉を行って借金の減額をしてもらう制度です。

借金の利息をカットしてもらい、返済スケジュールを調整してもらうことで借金の完済を目指します。

元本については減額されることは多くありませんが、利息の支払いについては免除されることが多いため、返済によって着実に元本を減らして完済に近づくことができる点がメリットです。

また、元本については3~5年かけて返済をしていくことが一般的です。

(2)個人再生

個人再生は、借金の返済が困難であることを裁判所に認めてもらうことで、借金を減額してもらえる手続です。

任意整理は利息のカットのみですが、個人再生は以下のように借金の総額に応じた減額率が定められており、任意整理と比べると利息だけでなく元本の減額も受けられること、後述の自己破産と比べると一定の要件のもとで自宅不動産を残せること、がメリットとして挙げられます。

借金総額 最低弁済額
100万円未満 借金総額
100万円以上500万円以下 100万円
500万円超え1500万円以下 借金総額の5分の1
1500万円超え3000万円以下 300万円
3000万円超え5000万円未満 借金総額の10分の1

もっとも、個人再生を行うにあたっては、満たすべき要件が定められており、たとえば借金総額が5000万円を超える場合には、個人再生を行うことができません。

また、高額な財産を所有している場合は、一定の基準額以上が最低弁済額に計上されるので、個人再生を行うメリットが失われてしまいます。

任意整理と個人再生のどちらを選択するかは、弁護士に相談・確認をして検討してみましょう。

(3)自己破産

自己破産は、裁判所に返済が不可能であることを認めてもらい、全ての借金の返済義務を免除してもらう手続です。

家や車など資産価値の高い財産は換価され、債権者に配当されるデメリットもありますが、全ての財産が処分されるわけではなく、生活に必要な一定の財産を残すことができます。

また、借金の返済に関するストレスから解放されるため、人生をやり直すきっかけになることは確かです。

個人再生でも借金トラブルを解消できない方は、弁護士に相談した上で自己破産を検討してみましょう。

(4)特定調停

特定調停は、裁判所が債権者と債務者を仲介し、直接交渉を行う場を用意して借金の減額を図る手続です。

任意整理と類似点が多く、利息制限法上の上限金利による引き直し計算が行われ、超過した分の利息や将来の利息がカットされます。

もっとも、債務者が直接債権者と交渉しなければならない点が任意整理と異なる点で、書類作成や裁判所の出廷なども債務者自ら行う点に注意が必要です。

また、調停が成立した場合には調停調書が作成され、これは確定判決と同一の効力を有する債務名義となります。

そのため、調停成立後に支払いが滞ると、債権者が調停調書にもとづいてただちに強制執行を行うリスクがあります。

特定調停に関しては弁護士に依頼することができない点を考慮した上で、実行するのか検討してみましょう。

(5)過払い金返還請求

過払い金返還請求は、法律の上限を超えて支払っていた利息の返還を求める手続です。

過払い金が発生するのは、以下のような条件に当てはまる場合です。

  • 2010年6月17日以前にグレーゾーン金利で借入れを行っていた
  • 借金を完済してから10年以内

この手続は厳密には借金を減らすためのものではありませんが、返還された利息を借金に充当することで、借金を減らしたり完済ができたりする場合があります。

(6)消滅時効の援用

消滅時効とは、一定期間権利が行使されない状態が継続した場合、権利が消滅する制度です。

債務者が債権者に対して、時効によって借金の返済義務が消滅したので支払いを行わないと意思表示をすることによって、その効果が発生します。

消滅時効が成立すると、借金の元本だけでなく、利息や遅延損害金も消滅します。

なお、時効期間は借入れを行った時期や業態によって異なり、2020年4月1日以降に借入れを行った場合は5年、2020年3月31日以前の借入れは5年あるいは10年です。

もっとも、時効には期間の進行がストップする場合やリセットされる場合もあります。

時効の援用の際には、要件を満たしているかも含めて一度弁護士に相談することがおすすめです。

3.弁護士に手続を依頼するメリット

過払い金返還請求の主な流れ

特定調停を除いた救済制度を利用する場合は、弁護士に手続の代行を依頼するのをおすすめします。

その理由は以下の4つです。

弁護士に手続を依頼するメリット

1.債権者からの督促がストップする
2.適切な手段で解決できる
3.交渉を一任できる
4.手続の手間を省ける

順にご紹介します。

(1)債権者からの督促がストップする

債務整理の依頼を受けた弁護士は、受任通知を債権者に送付します。

受任通知を受け取った債権者は、債務者に対して督促状を送ったり返済を要求したりすることができなくなります。

そのため、返済の催促や督促が止まり、精神的な負担から一時的に解放されることになります。

(2)適切な手段で解決できる

借金トラブルの解決に強みを持つ弁護士に手続を依頼することで、適切な手段で解決を図ることができる点もメリットです。

債務整理には3つの方法があり、借金の状況や返済能力などによって選択すべき手段が異なります。

専門的な知識がない状態では適切な選択ができない可能性があるので、自身の状況に合った適切な解決を図りたい方は弁護士に相談するのがおすすめです。

(3)交渉を一任できる

弁護士に手続や交渉を一任できるため、債務者にかかる負担を大きく軽減することができます。

特に債権者や裁判官を相手に交渉を進めることは、法的知識や法的交渉に不慣れな状態では困難が生じるでしょう。

弁護士は法的交渉の専門家であることから、弁護士に依頼することで、交渉や手続がスムーズに進むだけではなく、有利に進めることも期待できます。

(4)手続の手間を省ける

債務整理の手続をするためには、多数の書類作成や収集を行うことになるため、手続に不慣れな場合は自力で進めるのは難しいでしょう。

また、書類によっては、提出期限を1日でも経過すれば手続が終了してしまうようなものもあり、スケジュールの把握なども含めて一人で対応することには限界もあります。

経験豊富な弁護士であれば、書類作成から提出まで、不備なく手続を進めることが可能です。

弁護士は手続において何が必要なのか把握しているので、効率良く解決を目指すことができます。

まとめ

借金の救済制度には様々なものがあり、裁判所を介して行うものや債務者が自ら債権者と交渉を行うものもあります。

借金の返済に困っている方は弁護士に相談して、どう対処すべきなのか提案を受けることをおすすめします。

弁護士法人みずきでは、借金に関する相談を無料で受け付けておりますので、救済制度の利用を検討している方はお気軽にご相談ください。

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執筆者 青山 侑源 弁護士

所属 東京弁護士会

法律トラブルというものは、いつも身近に潜んでいるものです。
はじめのうちは「大したことないだろう」と思っていたことが、そのうち大事になってしまうというケースも多くありますので、少しでも「法律トラブルに巻き込まれたかもしれない」と感じている場合には、お早めにご相談いただくことをおすすめいたします。
法律トラブルへの対処方法や解決方法は、個人の方、法人の方ごとに千差万別ですが、お早めにご相談いただくことで、選べる選択肢も多くなります。
どのような解決方法があなたにとって最適な選択となるのか、一緒に検討していきましょう。