夫が多重債務者になっているときの対処法とは?夫の借金を放置するリスク

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「夫の多重債務状態をどうにかする方法はないのか」
「夫の借金を放置するとどのようなことが起こるのか」

夫が多重債務に陥っていることを知って、どうすればよいのか困っている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、多重債務を放置するリスクや多重債務状態を解消する方法についてご紹介します。

1.夫の借金は配偶者は支払わなければならないのか

結論からいいますと、原則として、配偶者が夫の借金を返済する義務を負うことはありません。

借金の返済義務を負うのは、あくまでも借りた人(夫)なので、たとえ夫婦関係があっても、妻には無関係です。

しかし、配偶者が返済しなければならないケースもあります。

たとえば、以下のようなケースは配偶者にも返済義務が生じる可能性があります。

配偶者にも返済義務が生じる可能性のあるケース

  • 配偶者が連帯債務者・保証人・連帯保証人になっている
  • 借金が日常家事に使われたものである(日常家事債務)

配偶者が夫の保証人等になっていたり、借金の目的が生活のためであったりすると夫婦揃って債務を負うことになります。

そのため、夫の借金が発覚した場合には、借金をするに至った理由や原因について確認することが大切です。

2.夫の多重債務を放置するリスク

夫の多重債務状態を放置するのはいくつかのリスクが伴います。

主なリスクは以下のとおりです。

夫の多重債務状態を放置するリスク

  1. 借金が雪だるま式に増えていく
  2. 住宅ローン等が利用できなくなる
  3. 訴訟・差押えのリスクが高まる

順にご紹介します。

(1)借金が雪だるま式に増えていく

多重債務状態が続くと借金が雪だるま式に増えていきます。

複数の債務を負っているとその分利息も多くなるため、月々の返済の負担が大きくなりがちです。

返済金額が高くても家計の中から支払ができれば借金も徐々に減っていきます。

しかし、家計では賄えなくなってしまうと、返済のための借金をする、いわゆる「自転車操業」の状態になりがちです。

支払ができずに新たな借入れを繰り返すことになれば、負担しなければならない利息もますます増えていき、結果として借金全体の金額が雪だるま式に増えることになるのです。

(2)住宅ローン等が利用できなくなる

返済期日を過ぎても返済ができない場合には、信用情報機関に事故情報が登録される可能性があります。

信用情報機関は、各金融機関から顧客情報の提供を受けて管理し、各金融機関から信用情報の照会を求められたときにはこれを提供するという業務を行う機関です。

借金の返済を滞納した事実は、その人の返済能力に問題があるということを示す事故情報となり、信用情報機関への照会により各金融機関がこれを知ることになります。

事故情報があると、金融機関が行うクレジットカードやローンの審査に通らなくなってしまいます。

そのため、将来、住宅ローンや自動車ローン等の利用を考えている場合、審査に通らず、利用ができないリスクが生じてしまいます。

(3)訴訟・差押えのリスクが高まる

多重債務により返済不能に陥り、返済が滞っている状態が続くと、訴訟・差押えのリスクも高まります。

延滞が続くと、まずは、電話、メール、手紙等による督促が行われるようになります。

この督促は、最初は未払分を支払ってくれという内容ですが、そのうち、裁判手続への移行を警告するものとなっていきます。

この督促を放置し続けると、支払督促申立て、訴訟提起といった法的手続に移行するリスクが高まります。

これらの手続に移行しても放置を続け、仮執行宣言付き支払督促や判決が確定してしまうと、債権者は、それらを債務名義として差押え等の強制執行手続を行うことができるようになります。

そうなると、給与や預金などの財産が差し押さえられてしまう可能性があります。

特に、裁判所から書面が送られてきた場合には、放置せずに早期に弁護士に相談することがおすすめです。

3.夫の借金が判明したときにすべきこと

夫に借金があることが判明したら、落ち着いて借金の全容を確認しましょう。

夫本人も借金の返済に悩んでいる可能性が高く、借金の全容を隠してしまう可能性もあるので、相談に乗るくらいの気持ちで話を聞くことが大切です。

借入先はどこか、それぞれの借入先からいくらずつ借金しているのかなどを確認し、借金の総額等を把握できるようにしましょう。

4.夫の多重債務状態を解消する方法

夫の多重債務状態を何とかしたいと考えているのであれば、以下の2つの方法を検討してみてください。

夫の多重債務を解消する主な方法

  1. 家計から返済原資を捻出する
  2. 債務整理をする

特に債務整理を選択する場合は、本人で手続を行うのは困難となりますので、まずは当事者だけで抱え込まずに弁護士に相談してみましょう。

(1)家計から返済原資を捻出する

1つ目の選択肢は、家計から返済原資を捻出することです。

借金を家計から返済していくことで、完済を目指していきます。

主に借金の総額が少なく、家計から現実的に返済できる場合や信用情報を傷つけたくない場合に適している方法です。

家計からの返済が可能な場合には、各金融機関のおまとめローンを利用することにより、さらに負担を軽減できる可能性もあります。

余裕をもって約定どおりに返済できれば、デメリットも少なくなりますので、家計から返済原資を捻出できないか見直してみましょう。

もっとも、借金総額が大きく返済の負担が大きくなってしまう場合やすでに返済が滞っている場合には、無理をせず、後述する債務整理の手続を行うことを検討しましょう。

(2)債務整理をする

家計から返済原資を抽出することが困難な場合は、債務整理を検討してみましょう。

債務整理とは借金の返済の負担を軽減する方法で、借金で困っている方を救済する制度です。

以下のように3つの方法があり、借金の金額や返済能力によって使い分けることになります。

債務整理の方法

  1. 任意整理
  2. 個人再生
  3. 自己破産

それぞれの方法の概要について順にご紹介します。

なお、以下の記事で各方法のメリット・デメリットについてまとめているので、あわせてご確認ください。

借金の救済制度には何があるの?利用するメリットとデメリットを解説

#1:任意整理

任意整理は、債権者と返済スケジュールの見直しや将来分の利息のカットなどを交渉して、返済の負担を軽減する方法です。

将来利息のカットが実現するだけでも利息が膨れ上がっていくという多重債務の問題点を解消できるため、任意整理は効果的な解決方法といえます。

一方で、元本までの減額が認められることは少なく、それを原則は5年で分割して返済できる程度の資力が必要となります。

そのため、利息のカットをしてもなお、返済が困難という場合には、個人再生や自己破産を検討することになります。

#2:個人再生

個人再生は、裁判所に借金返済が困難であることも認めてもらい、一定の割合で減額した借金を原則3年で返済する計画について裁判所の認可を受け、そのとおりに返済することを条件として、残りの債務を免除してもらう方法です。

減額割合は借金の総額に応じて決められており、最大で10分の1まで減額されることとなります。

減額割合は以下のとおりです。

借金総額 最低弁済額
100万円未満 借金総額
100万円以上500万円以下 100万円
500万円超え1500万円以下 借金総額の5分の1
1500万円超え3000万円以下 300万円
3000万円超え5000万円未満 借金総額の10分の1

なお、個人再生を行うためには以下のような要件を満たさなければなりません。

個人再生を行うための主な要件

  • 借金総額が5000万円以下
  • 将来的に継続又は反復した収入が見込める

個人再生の具体的な要件などについては以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご参照ください。

個人再生のための要件とは?弁護士が解説!押さえておきたい様々な要件

#3:自己破産

自己破産は、裁判所に返済が困難であることを認めてもらい、手続の中で一定以上の価値のある財産は売却して債権者への支払にあてた上で、残りの借金の支払義務を免除(免責)してもらう方法です。

手続を進めて免責許可決定を受けられれば借金の支払義務が免除されます。

ただし、資産価値の高い財産は換価されるほか、手続中は一定の資格が制限されるため転職の必要が出てくる、ギャンブル、FX等の射幸行為によって借金を作った場合には免責を受けられない可能性があるといったデメリットもあり、自己破産を利用できないケースがあることには注意が必要です。

まとめ

夫が多重債務状態に陥っている方は、なるべく早めに対応することが大切です。

まずは落ち着いて借金の状況について確認し、多重債務から脱却するための対策を考えましょう。

まずは家計から返済原資を捻出することを検討してみて、解決が困難だなと思ったら弁護士へ相談し債務整理の手続を行うことをおすすめします。

弁護士法人みずきでは、借金に関する相談を無料で受け付けておりますので、夫の借金でお困りの方はお気軽にご相談ください。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。