差押通知書が届いた時の4つの対処法|差し押さえられたときの対処法
「借金の返済を滞納していたら、自宅にとうとう差押通知書という書面が届いてしまった」
「なんだか深刻そうだけれども、どうすればよいのかわからない」
このような不安を抱えていらっしゃる方や今現在借金の返済が滞ってしまっている方に対して、本記事では、差押通知書についてご説明いたします。
差押通知書が送られることの意味、差押通知書が届いた後はどうなるのか、どう対処すればよいのか、を中心にご説明します。
本記事を読んで、差押通知書が届くことの意味や今後とるべき対応を理解して、適切な対応をとってもらえればと思います。
1.差押通知書とは
まず、差押えとは何か、からご説明します。
差押えとは、債権者(貸金業者等)の申立てに基づいて、裁判所が債務者(お金を借りている人)の財産を、自由に処分することをできなくする強制的な手続をいいます。
要するに、差押えとは、裁判所が貸金業者のために債務者の給料等の財産を強制的に取り上げてしまい、借金の返済に充ててしまう、という手続です。
裁判所によって、債務者の財産である預金や給料等が差し押さえられると、預金を引き出したり、給料をこれまで通りに受け取ることができません。
差押えには債務者の財産を取り上げてしまうという強力な効力がありますので、ひとたび預金や給料等の財産が差し押さえられてしまうと、生活が立ち行かなくなるおそれがあります。
このように、差押えは債務者の生活に深刻な影響を与えるので、返済が滞っていても、差押えだけは何としてでも避けたいところです。
次に、本題である差押通知書とは何か、についてご説明します。
差押通知書とは、債権者から債務者に対し、期限までに借金の返済をしないと、差押えの申立てをすることを予告する通知です。
したがって、差押通知書が届いたにもかかわらず、これを放置していると、債権者は、裁判所に対して差押えの申立てをするための手続を開始し、最終的には、債務者の財産が差し押さえられてしまうおそれがあります。
差押通知書が届いたら、くれぐれも放置してはいけません。
(1)差押通知書の内容
差押通知書は、裁判所に対して差押えの申立てをすることを、債務者に対して予告する通知ですので、この通知自体には差押えの効力はありません。
そのため、この通知が届いたから直ちに給料や預金等の財産が差し押さえられるわけではないです。
しかし、この差押通知書は、期限内に借金を返済しなければ、差押えの申立てをすることを予告する通知であり、単なる脅しではありません。
予告があっても必ず差し押さえを行うわけではありませんが、実際にこの通知を放置すると、貸金業者は支払督促や訴訟の提起に踏み切ります。
そのため、差押えの実現に向けて動き出す可能性は高いといえます。
(2)差押通知書を放置するとどうなるか
差押通知書を放置すると、債権者は約1か月程度の期間をおいて、訴訟の提起(裁判)や支払督促という裁判所を介した手続を申し立て(開始して)、債務名義を取得して差押えの実現に向けてかじを切ります。
既に債権者が判決等の債務名義を取得している場合はそのまま差し押えの申立てに動くことになります。
なお、裁判と異なって支払督促という手続は聞き慣れないものですが、支払督促とは、債権者の申立てによって、裁判所(簡易裁判所)が債務者に対して、借金等の支払を督促するという通常の裁判よりも簡易的な手続です。
この支払督促を受けた債務者は、2週間以内に督促に対して異議を申し立てないと、(仮執行の宣言が付され)、債権者のために差押えができる状態になってしまいます。
したがって、支払督促を受けて2週間以内に異議を申し立てないと、給料等の財産が差し押さえられてしまうので、支払督促を放置してはいけません。
支払督促に対して異議を申し立てると、支払督促という手続から通常の裁判手続に移行します。
このように、債権者からの差押通知書を放置すると、支払督促を申し立てられたり、裁判を提起されてしまい、裁判所を介して借金の返済を迫られることになってしまうのです。
そして、支払督促に対して異議を申し立てなかったり、裁判で債権者の債権が認められると(通常は認められることが多いです。)、裁判所による強制執行手続である差押えがいよいよ実現してしまいます。
2.財産が差し押さえられるとどうなるか
差押えは、債務者が所有する財産に対して行われます。
以下では、財産が差し押さえられるとどのようになるのかについてご説明します。
(1)預金や給料を差押えされる
差押えの対象となる債務者の財産の例として、まず、債務者の預金や勤務先への給料(の請求権)が挙げられます。
差押えの対象としては、債務者の勤務先からの給料(正確には、債務者が勤務先に対して給料の支払を請求する権利)が最も多いです。
貸金業者としては、お金を貸すときに、債務者に土地や建物等の資産がなくても、債務者の勤務先からの給料を引当てとすることが多いからです。
給料が差し押さえられてしまいますと、勤務先と債務者に差押命令という通知が裁判所から送達されます。
そして、原則として月々の手取額の4分の1が、借金の完済まで勤務先から受け取ることができなくなります。
(2)家や車といった財産が競売にかけられる
債務者に不動産(土地、建物)や車等の比較的高価な資産がある場合は、これらも差し押さえられる可能性があるので注意が必要です。
差し押さえられたこれらの資産は、強制競売に掛けられて金銭に換価され、借金の返済に充てられてしまいます。
(3)差押禁止財産等一定の財産は手元に残る
以上のとおり、実際に財産が差し押さえられてしまうと、差し押さえられた財産を自由に処分したり、給料については支払を受けることができなくなり、預金については引き出すことができません。
もっとも、債務者の財産の中には、差押えが禁止されている財産もありますし、差押えができるとしてもその範囲が制限されている財産もあります。
例えば、生活に欠かすことができない衣服、寝具や家具等の動産は差押えが禁止されています。
また、債権では国民年金・厚生年金を受給する権利や生活保護を受給する権利も差押えが禁止されています。
また、給料は差し押さえられる可能性が最も高い財産ですが、差し押さえることができる範囲は原則として、手取り額の内の4分の1です。
そのため、4分の3に相当する部分についてはこれまでどおり受け取ることができます。
3.差押通知書が届いた後の4つの対処法
差押通知書が届いた場合に、具体的にどのような対処方法があるのかを以下でご紹介します。
(1)架空請求でないかを確認する
差押通知書が届いたら、まず、この通知が架空請求でないかについて、通知の内容をしっかり確認しましょう。
架空請求とは架空の借金について督促を行う詐欺手法をいいます。
架空請求はハガキや封書、SMS等様々な手段で行われています。
詐欺の被害に遭わないために、通知の内容、特に請求対象となっている借金の内容について、ご自身が借りた借金であるかどうかをしっかり確認しましょう。
(2)消滅時効が完成しているかを確認する
消滅時効が完成しているか、についてもしっかりと確認しましょう。
消滅時効とは、権利を行使しないで一定期間経過した請求権(借金の返還請求)について、その一定期間経過後は権利を行使できなくなる制度をいいます。
そして、消滅時効のために必要な期間は原則最後に債権者に返済した時から5年間となります。
ただ、消滅時効には、完成猶予・更新という制度が用意されており、この制度は消滅時効を妨げるものなので、注意が必要です。
特に、更新という制度には注意しましょう。
時効の更新とは、一定の事由がある場合に、これまで進行してきた時効期間がなかったことになり、また振出しに戻って時効期間がスタートしてしまうという制度です。
この時効の更新が生じてしまう事由(更新事由)として、特に注意が必要なのは、債務の承認です。
債務の承認とは、債務者が債権者に対し、債務の存在(借金の存在)を認めることをいいます。
債務の承認をしてしまうと、せっかく進行していた時効期間が振出しに戻ってしまうので、消滅時効が完成している可能性のある借金については、安易に承認してはいけません。
以上のとおり、消滅時効の完成は頻繁に起こるものではありませんが、消滅時効が完成すると、消滅時効を債権者に通知することによって(これを時効の援用といいます。)、借金の支払義務がなくなります。
そのため、消滅時効期間が経過している借金は、債務の承認等の時効の更新事由がないかを債権者に確認し、これがなければ、消滅時効を債権者に通知しましょう。
(3)返済できる場合は債権者と返済について相談する
架空請求でないか、消滅時効が完成しているかを確認し、いずれにも当たらないのであれば、借金の返済について債権者と相談するべきです。
上記でご説明したとおり、差押通知書を放置すると、債権者は、差押えを実現するために、支払督促を裁判所に申し立てたり、裁判所に訴訟提起(通常の裁判)をする可能性があります。
債権者に電話等で返済方法について相談しても、借金を一括で支払うことを要求されることもありますが、現実的に借金を返済できるような期間の分割払いに応じてくれることもあります。
差押通知書を放置すると、差押えの可能性が高まるだけですので、すぐに債権者に連絡して、借金返済の意思を示しましょう。
債権者が借金の分割返済に応じてくれない等強硬な態度をとる場合の対処法は、次の項でご説明します。
(4)返済できない場合は弁護士に相談のうえ債務整理を検討する
次のようなケースでは、直ちに弁護士に債務整理について相談することをおすすめします。
①差押通知書が届いたが、これを放置して、債権者から支払督促を申し立てられたり、裁判所に訴訟を提起されてしまっているケース
②差押通知書が届いた後にすぐ債権者に連絡して返済方法を相談しても取り合ってもらえないケース
このようなケースは差押えが現実化する深刻なおそれがあるといえるでしょう。
裁判所による強制執行である差押えがなされてしまうと、上記でご説明した多くの不利益を被り、生活が立ち行かなくなってしまうこともあります。
①、②のような状況に陥ったら、ぜひ弁護士に相談して、自身の状況にあった債務整理の方法について相談をしましょう。
債務整理とは、任意整理、自己破産、個人再生という弁護士が介入する3つの手続のことをいいます。
弁護士と一緒に債務整理をすることで、差押えを回避できますし、仮に回避できずに差押えがなされたとしても、自己破産と個人再生の手続であれば、差押えを中止させたり効力を失わせることができるので、過度に差押えを恐れる必要はありません。
そのため、①、②のようなケースでは、早期に弁護士に相談し、適切な債務整理を進めることを強く推奨いたします。
まとめ
本記事では、差押通知書が届いた際の対処方法について解説しました。
以上のとおり、差押通知書が届くと、債権者から差押えがなされる直前の状態のため、そのまま放置せず早急に対応する必要があります。
差押えがされると財産が没収され、以前の水準の生活を維持できなくなるため、早めに弁護士に相談しましょう。
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