財産が無い場合でも差押えは行われるの?差押えを受ける財産や手続の流れを解説

執筆者 中越 琢人 弁護士

所属 第二東京弁護士会

弁護士は、スーパーマンではありませんが、他人が抱える紛争の解決のため、お手伝いをすることができます。私は、一件一件丁寧で誠実な対応を心がけ、問題解決のためにできることはやり尽くすという姿勢でおります。皆様の不安が解消され、平穏な生活を送ることができるようになるまで、紛争解決のお手伝いを致します。

「財産が無い場合は何が差し押さえられるの?」
「財産が無い場合の差し押さえはどうなるのか知りたい」

財産を差し押さえられる可能性がある方の中には、財産が無い場合は何が差し押さえられるのかと不安になっている方もいるのではないでしょうか。

一切差し押さえるものがない場合は、強制執行はできません。

ただし、自分では差し押さえられるような財産がないと思っていても、実際は差押えの対象となるものもある場合があるため、注意が必要です。

本記事では、差押えを受ける財産や差押えの流れについてご説明します。

1.差押えを受ける財産とは

差押えとは、債権者が債権を回収するために、法律に基づき、債務者による預金や不動産などの財産の処分を禁止することです。

差押え対象となる財産は、大きく分けて以下の三つがあります。

・債権
・不動産
・動産

これらのうち、財産が無い場合でも差押えを受ける可能性があるのは給与や預金といった債権です。

不動産や動産などの高価な財産を所有していない場合でも、給料や預金があれば差押え対象となることに注意が必要です。

2.債権の差押えとは

財産が無い場合でも、お仕事をされていれば給料を多くの場合は銀行振込で受け取ることになります。

債務者の給料や預金といった債権は差押えの対象となります。

勤め先や預金口座を持っている銀行、支店名が債権者に知られている場合は、給料や預金が差押え対象となってしまうことを覚えておきましょう。

なお、給料が差し押さえられることになると、裁判所から勤務先にも差押えの事実が共有されるので、会社に居づらくなる等の不都合が生じてしまうこともあるでしょう。

3.差押えを受ける債権の範囲

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ひとたび債務名義を債権者に取得されてしまうと、預金残高を差し押さえられるほか、債権残高に達するまで将来にわたって給与の差押えを受ける可能性があります。

差押えを受けると言っても、給与の全額を差し押さえられるわけではなく、一定の金額は手元に残すことができます。

借金など、一般の債権の回収のために給料の差押えがされる場合、以下のいずれかの金額は差押えの対象となりません(民事執行法152条1項、民事執行法施行令2条)。

・給料の手取り金額の4分の3
・手取り金額の4分の3が44万円を超える場合、33万円

これらのほか、以下も差押禁止債権に該当するため差し押さえられません。

・各種年金の受給権
・生活保護受給権
・児童手当受給権

給料が差し押さえられる場合、差押えの対象となるのは手取り額の4分の1であり、残りの4分の3は手元に残すことができます。

ただし、手取り額が44万円を超える場合は、33万円を超えた部分は全額差押えの対象となります。

たとえば、手取り金額が40万円の場合、差し押さえられる金額は4分の3の30万円を超える部分の10万円です。

一方、手取り金額が45万円の場合、差し押さえられる金額は33万円を超える部分の12万円となります。

4.差し押さえるものがない場合の影響

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差押えを受ける財産が無く、無職で将来にわたって一切差し押さえられるものがない場合、強制執行となっても何も差し押さえられることはありません。

つまり、強制執行が空振りに終わるということです。

ここからは、差し押さえられるものがない場合、どのような影響が生じるのかを詳しくご説明します。

(1)連帯保証人がいる債務は保証人に請求がいく

滞納している債務に連帯保証人をつけている場合は、その連帯保証人に対して保証債務の履行請求が行われます。

もし連帯保証人が返済できない状況であれば、連帯保証人の財産が差押えを受ける可能性が生じることになります。

連帯保証人は自身が保証債務を履行する義務を負っていますので、請求を拒むことはできません。

つまり、主債務者に差し押さえられるものがなかったとしても、連帯保証人が最終的に強制執行により財産を失う可能性がある、ということになります。

(2)強制執行は債権を回収するまで何度も行われる可能性がある

差し押さえる財産がなく強制執行が空振りに終わったとしても、その後に得た財産を差し押さえられる可能性があります。

債務名義がある限り、債権全額を回収するまでは、強制執行を続けて行うことができるからです。

一度目の強制執行で差し押さえられた口座に預金がなかったとしても、次のときには預金があるかもしれませんし、再就職した際に就業先を何らかのきっかけで知られてしまうこともあります。

債権者は、上記のような事情によりほかの財産があるとわかれば、再度の強制執行に及ぶこともあるのです。

このように強制執行の手続は繰り返される可能性があります。

5.債権が差し押さえられた場合の2つの対処法

先述したとおり強制執行の手続は繰り返される可能性があり、将来にわたって給与の差押えを受けることとなります。

差押えが続いた状態では生活が立ち行かない場合は、いくつかの対処法をとることができます。

順にご説明します。

(1)差押禁止債権の範囲の変更を申し立てる

給与等の差押えにより生活が立ち行かない場合は、裁判所に対して「差押禁止債権の範囲の変更」の申立てを行うことができます。

これにより、債務者の生活状況を考慮して範囲の変更が認められると、差押命令の全部または一部を取り消すことができます。

ただし、一部のみの取り消しとなった場合は差押えは続行します。

差押え自体を解除できるわけでは無いので、根本からの解決を図りたい場合は債務整理手続をとるほうがよいでしょう。

(2)自己破産や個人再生を申し立てる

自己破産や個人再生の申立てを行い、裁判所に強制執行の中止命令の申立てを行うことで、差押えを中止してもらえる可能性があります。

自己破産や個人再生の概要は以下のとおりです。

自己破産:現在の財産や収入では借金の返済が困難であると裁判所に認めてもらい、借金の支払義務を免除(「免責」といいます。)してもらう手続。

個人再生:借金返済が困難であることを裁判所に認めてもらった上で、借金を債務額に応じた一定の割合で減額して原則3年で返済していく再生計画案の認可決定を受け、再生計画に従って返済することと引き換えに残りの債務を免除してもらう手続。

自己破産や個人再生といった債務整理手続をとることで差押えを中止するほか、借金問題を根本から解決することにつながります。

債務整理を行う際は、弁護士に依頼して手続を進めることを推奨します。

まとめ

財産が無い場合でも、給与や預金口座といった債権は差し押さえられることとなります。

また、一度債権者が債務名義を取得すると将来にわたって差押えを受ける可能性があります。

差押えが続くと生活再建のめどが立たないことになりかねませんので、根本から借金問題を解決する場合は弁護士に相談し債務整理を行うことを推奨します。

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執筆者 中越 琢人 弁護士

所属 第二東京弁護士会

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