督促状の入金期限や納付書が期限切れだった時は?滞納した時の対処法

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「督促状の入金期限が過ぎてしまった場合どうなるのだろう」
「納付書の期限が切れてしまったが支払うことはできるのだろうか」

督促状は、借入れや社会保険料、税金の納付を滞納すると支払先から送られてきます。

入金期限が過ぎてしまった場合、差押えに発展する可能性があるため、早急に対応することが重要です。

本記事では、督促状の入金期限が過ぎた場合や納付書の使用期限が切れたときの支払方法、納期限を守らなかったときにどうなるのかについて解説します。

1.督促状はどこから届く?

督促状はどこから届くのか?

督促状とは、期限内に支払いが行われないときに返済や入金を促す書状のことです。

借入先(債権者)や自治体、税務署といった支払先から送られてきます。

どちらの督促状も無視していると、最終的に財産を差し押さえられてしまう可能性があるので、速やかに入金すべきです。

ただし、債権者から届く督促状と公的機関から届く督促状で内容や意味合いは異なるので、事前に違いを確認しましょう。

(1)借金の滞納による督促状

金融機関からの借入れやカードローンなどの借金を滞納すると、債権者から督促状が届きます。

借金の滞納による督促状は、あくまで未納の代金に対し入金を促すために通達する文書です。

そのため、借金の滞納による督促状には法的効力はなく、債務者に即座に不都合が発生する可能性は低いです。

ただし、督促状を無視し続けると、裁判所に訴訟を提起されたり、支払督促を申し立てられたりした後、差押えが可能になってしまうことがあります。

(2)税金・社会保険料の滞納による督促状

税金や各種保険料等などを滞納すると、納付すべき機関から督促状が送られてきます。

督促状の送付は法令に基づいて行われ、これらの督促状に記載された納期限を過ぎても支払いを行わない場合には、各機関による財産調査、差押えといった滞納処分が可能になります。

税金等の滞納に対する滞納処分は裁判所を通さなくても可能であり、事前の通知も不要とされています。

このような制度となっているため、金融機関からの借入れの滞納による督促状と比べると、督促状の発出から滞納処分による差押えまでの期間は比較的短く、また、滞納者にとって処分は突然行われるものになります。

2.債権者から届いた督促状の入金期限が切れてしまった場合

債権者から届いた督促状の入金期限が切れてしまった場合

債権者から届いた督促状の入金期限が過ぎると、だんだんと厳しい取り立てが行われるようになり、最終的に財産を差し押さえられてしまう可能性があります。

督促状の送付からいきなり差押えに発展することはないものの、裁判所に訴訟を提起されたり、支払督促を申し立てられたりしたあとも何もしなければ、債権者による差押えが可能な状況になってしまうので、無視を続けるわけにはいきません。

送られてきた督促状の入金期限が切れてしまった場合に知っておくべき情報を確認しましょう。

(1)遅延損害金が発生する

もともとの支払期日を経過しても支払いをしていなければ、支払期日の翌日から遅延損害金が発生します。

遅延損害金とは、約束した支払期日までに支払ができなかった場合の損害賠償金として債権者に支払わなければならない金銭のことです。

遅延損害金の金額は、滞納している元本の残額に、一定の利率と、滞納した日数を掛けて算出します。

そのため、滞納した期間に比例して遅延損害金の額も大きくなってしまいます。

なお、遅延損害金と利息は似ていますが、異なるものです。

利息は借りた日から支払期日までの間に発生するものですが、遅延損害金は支払期日以降に発生します。

また、契約によって定められる遅延損害金の利率は多くの場合利息よりも高い値に設定されています。

支払期日を過ぎてしまうとより多くの金額を債権者に支払わなければなりませんので注意が必要です。

(2)財産を差し押さえられる可能性がある

督促状を無視していると、最終的に財産を差し押さえられてしまうかもしれません。

借入れについての督促が行われている場合、いくつかの手順を踏んで差押えまで発展します。

滞納から差押えまでの流れは以下のとおりです。

  • メールや電話などによる連絡
  • 督促状や電話による督促
  • 裁判所から訴状や支払督促の送付
  • 仮執行宣言後に差押え

督促状や電話連絡などによる督促を行っても支払いがされる見込みがないと判断されると、債権者は、訴訟提起、支払督促申立てなどの法的手続を行います。

これらの手続に進むと、訴状や支払督促に関する書類が裁判所から特別送達という特殊な郵便で送られてきます。

特別送達による書類を受け取ると、書類を受け取ったことが記録されてしまいますから、「裁判所からの書類が届いていない」と言い逃れをすることはできなくなります。

特別送達による書類を受け取った後も何もしないままだと、裁判所から、訴訟においては判決が、支払督促においては仮執行宣言付き支払督促が出されます。

これらは債務名義といい、差押えを含む強制執行の実行を可能にする書類です。

したがって、この段階で、債権者による差押えが可能になってしまいます。

(3)督促状の入金期限が切れてしまった場合の対処法

督促状に記載された入金期限を過ぎてしまった場合、単に支払いを忘れていたということであれば、早急に借入先に連絡をして、支払期日や支払方法の確認をしましょう

多くの場合、銀行や郵便局からの支払いを行うことになります。

金銭的な余裕がなくてすぐに支払えないという場合は、早い段階で借入先に相談しましょう。

金融機関からの借入れであれば、一時的な返済猶予や支払期間の延長といった措置を受けられる可能性があります。

そもそも借入金額が膨れ上がってしまい支払いのめどが立たないという場合は、弁護士に相談して債務整理を検討するべきです。

任意整理、個人再生、自己破産といった債務整理の手続を行うことで、借金の減額、免除を受けて負担を軽減することができます。

入金期限を過ぎてしまった場合は、そのまま放置せず、借入先や弁護士に相談するといった行動をとりましょう。

放置しても差押えを招くだけであり、状況を悪化させることにしかなりません。

3.税金・社会保険料を滞納した場合はどうなる?

税金・社会保険料を滞納した場合はどうなる?

税金や各種保険料の支払いを滞納すると、早急に納付するよう督促状が送られます。

滞納後はペナルティーとして延滞金も加算されるため、もともとの金額よりも多く支払う必要が生じてしまいます

また、督促状も無視すると差押え等の滞納処分が行われることもあります。

督促状が送られるような場合、具体的にどのような状況になるのか確認しましょう。

(1)延滞金が発生する

まず、納期限を過ぎた翌日から延滞金が発生します。

こうなると、本来の税額に延滞金が加算されてしまうため、支払いの先延ばしにメリットはありません

延滞金は期限の翌日から納付日までの日数に対し、法律で定められた利率を掛けて計算します。

計算式は以下のとおりです。

延滞金=税額×延滞金利率(年利)×延滞日数÷365日

ただし、算出した延滞金の金額が1,000円未満となった場合、その全額が切捨てとなり、延滞金は発生しなくなります。

(2)強制的に滞納処分が行われる

督促状を無視していると、強制的に滞納処分が行われる可能性があります。

税金については、国税通則法47条以下、地方税法により督促状を発した日から10日を経過した日までに完納しないときは財産を差押えしなければならないと定められています。

また、健康保険、国民年金については督促を受けた者が指定の期限までに保険料等を納付しないときは、国税滞納処分の例によってこれを処分することができると定められています(健康保険法180条、国民年金法96条)。

滞納処分とは、不動産や預貯金、給料、有価証券等の財産を差し押さえて換価し、未納の税金、保険料等に充当することをいいます。

滞納処分は、期限内に納めた納税者との公平性を保つために行われるものであり、裁判所への申立てなく執行されます。

滞納処分の流れは以下のとおりです。

  1. 財産調査
  2. 差押え
  3. 換価(換金)

財産調査では、滞納者の勤務先や契約中の金融機関について調査を行います。

法律上、本人に事前の了解を得ずに行えるため、「突然勤務先に財産調査がきた」という事態に陥ることもあるでしょう。

自治体によっては不注意や何らかの事情により納付できなかった場合を考慮して、滞納処分前に催告書等を送付するところもあります。

ただ、催告書は自治体の義務ではないため必ず届くとは限りません。

(3)税金・社会保険料を滞納した場合の対処法

税金や社会保険料を滞納してしまったら、支払いが可能かどうか確認しましょう。

通常、税金等の滞納をしてしまい、催告や督促状が送られてくる場合、一緒に支払いをするための納付書が送られてきます。

この納付書の使用期限内であるならば、速やかに支払いを行いましょう。

使用期限を過ぎてしまって支払いができない場合には、自治体(地方税、社会保険料の滞納の場合)や税務署(国税の滞納の場合)に相談しましょう。

また、支払えない事情がある場合にはそのことも相談すべきです。

災害や病気、失業や事業の損失などのやむを得ない事情により支払えない状況に陥った方のために、減免や徴収猶予といった措置が用意されています。

もし、税金等のほかに借金も多く抱えているという場合は、弁護士への相談を検討してください。

税金等の支払いは減額できないものの、債務整理を行うことで借金の返済額を減らし、滞納した税金等を支払うようにできる可能性があります。

まとめ

督促状が届いた場合、無視するのは得策ではありません。

そのまま放置すると、財産を差し押さえられてしまうこともあります。

督促状に記載された入金期限が切れてしまっている場合は、借入先や地方自治体の担当窓口への相談など、早急に対応するようにしましょう。

返済のめどが立たない場合は、状況に応じた債務整理の手続を進めることで、借金の負担を軽減し、税金等の支払も行えるようになる可能性があります。

どのような手続をとるかについて、弁護士に相談されることをおすすめします。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。