遅延損害金の利率14.6%は法律の範囲内?民法改正のポイント
「契約書を見ると遅延損害金の利率が14.6%と書いてあるけど、これって大丈夫なの?」
「そもそも遅延損害金って何のこと?」
当事者間での取決めがなければ、遅延損害金の利率は3%と法律で定められています。
しかし、遅延損害金の利率が上記の3%を超える14.6%と定められていてもこれは違法ではありません。
本記事では、遅延損害金の利率が法律の定める3%を超える14.6%となっていても違法ではない理由や、民法改正についてご説明します。
1.遅延損害金の基本と計算方法
遅延損害金とは、金銭債務の不履行が生じたことに対する損害賠償金のことです。
お金を借りた際の契約書には、消費者が支払をしなかった場合に備えて遅延損害金の利率が定められています。
ここでは、遅延損害金の基本と遅延損害金の計算方法についてご説明します。
(1)法定利率と約定利率との違いは?
遅延損害金の利率には「法定利率」と「約定利率」の二つがあります。
法定利率は民法404条2項により年3%とされています。
そして、民法419条1項は、金銭債務の不履行があった場合の損害賠償の額は、法定利率によって定めると規定しています。
これらの規定により、当事者間で利率を決めていない場合は、遅延損害金の利率は法定利率の3%ということになります。
一方、約定利率は、当事者間で決めた遅延損害金の利率のことです。
民法419条ただし書は、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率によると規定しています。
この規定により、年3%を超える約定利率が定められている場合は、そちらが優先されることになります。
約定利率が優先されるからといっても、上限がないわけではありません。
遅延損害金の利率の上限は消費者契約法や利息制限法に定められていますので、後で詳しくご説明します。
(2)利率から遅延損害金を計算する方法
遅延損害金は次の計算式で求められます。
遅延損害金 = 元金残高 × 遅延損害金の利率(年利) ÷ 年間日数(閏年の場合は366)×遅延日数
たとえば、現在支払が100万円残っていて、遅延損害金の利率は14.6%、遅延日数は100日とします。
この場合の遅延損害金の金額は、
100万円×14.6%÷365×100日=4万円
となります。
当然のことながら、遅延日数が増えるごとに遅延損害金の額は大きくなっていきます。
遅延損害金の額を計算した結果、支払える状況にない、となってしまう方もいるかもしれません。
しかし、そのまま放置していても遅延損害金は増えていくばかりです。
早めに弁護士に相談して適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
2.遅延損害金の利率が14.6%になる理由
事業者と消費者の間で締結された金銭消費貸借以外の契約において、遅延損害金の利率を定める場合、その上限は14.6%とされており、これを超える部分は無効となります(消費者契約法9条2号)。
例えば、クレジットカードのショッピング利用などでは遅延損害金の利率を年14.6%と定めているケースがあります。
ただし、この14.6%という上限は金銭消費貸借契約には適用されません。
金銭消費貸借契約上の債務を履行しない場合の遅延損害金の利率は、利息制限法4条により、利息制限法1条に定める上限利率の1.46倍になります。
これは具体的には以下の数字になります(かっこ内は上限利率。)。
元本の額が10万円未満の場合・・・年29.2%(20%)
元本の額が10万円以上100万円未満の場合・・・年26.28%(18%)
元本の額が100万円以上の場合・・・年21.9%(15%)
この上限にはさらに例外があり、利息制限法7条1項により、金融業者による貸付けの場合には、20%が上限となります。
契約によって取り決めた遅延損害金の利率が、以上の上限を超えているようであれば、それは違法の可能性があります。
このような場合は、不当利得の返還を請求できる可能性がありますが、違法な利率を定めるような業者と直接やりとりするには不安があると思います。
そのような時はお一人で抱え込まずに、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
金銭消費貸借契約の遅延損害金の詳しい年率は下記の記事をご覧ください。
3.遅延損害金に関する民法改正のポイント
現行の法定利率を定めている民法には、大規模な改正があり、2020年4月1日から改正法が施行されました。
ここでは改正内容のうち、遅延損害金の法定利率の概要についてご説明します。
(1)法定利率の引下げと商事法定利率の廃止
現在の年3%という法定利率は、民法改正時にそれまでの利率から引き下げられたものです。
改正前は、一般の取引に対しては年5%の民事法定利率が適用されていました(旧民法404条)。
さらに、商行為によって生じた債務には年6%の商事法定利率が別途適用されていました(旧商法514条)。
しかし、民法改正の際、商事法定利率の規定は削除され、法定利率は一律に年3%と定められたのです。
(2)固定金利制から変動金利制に変更
民法改正により、固定金利制から変動金利制に変更されたのも注目すべき点です。
従来の民事法定利率の年5%や商事法定利率の年6%は、市中金利と乖離しているという批判がありました。
改正では民事・商事にかかわらず一律3%と定められましたが、これは固定金利ではなく3年ごとに見直される変動金利とされました(民法404条3項)。
将来、市中金利のさらなる変動がないとも言い切れません。
このような状況を踏まえて、柔軟に対応できるよう変動金利が採用されたのです。
まとめ
遅延損害金の利率には法定利率と約定利率があり、法定利率は年3%とされています。
一方、当事者間で約定利率を定めていて、これが法定利率を超えるときは約定利率が優先されることになります。
ただし、例えば消費者契約法上では遅延損害金の利率の上限は14.6%と定められるなど、約定利率にも上限が定められています。
契約書に遅延損害金についてどう書かれているのか改めて確認してみましょう。
違法な利率が定められていないか、見直しができるよい機会です。
契約書にサインをしたものの、内容に疑問を感じたら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
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