借金を任意整理するとどうなる?対象となる債務ごとに弁護士が解説
「任意整理で返済の負担を減らすことができるのはどんな借金?」
「車や住宅のローンの債務を任意整理の対象に含めた場合の影響は?」
「借金を任意整理する際にどのような点に注意すべきか知りたい」
借金の返済に苦労をされている方の中には、任意整理を行うことを検討される中で、このような疑問や不安をお持ちの方もいると思います。
任意整理は、毎月の返済金額の減額や利息のカットを債権者と直接交渉することで、借金の返済負担を軽減しながら着実に完済を目指す手続きです。
また、手続きの対象とする借金を債務者が選べる点でも、ほかの債務整理の手続きと違いがあります。
もっとも、任意整理の対象に含めることができない債務もあり、また債務によっては任意整理を行うことで生活などに影響があるものもあります。
本記事では、任意整理の対象に含めることができる債務や任意整理の対象とした場合の影響について解説します。
また、任意整理の対象を選ぶ際の注意点についても解説していますので、これから任意整理を行うことを検討されている方の参考となれば幸いです。
1.任意整理とその対象
任意整理は、借金の返済負担を軽減しながら完済を目指すための手続きです。
借金の返済期間を長期に組み直すことや、借金につく利息のカットを債権者と交渉することで、月々の返済負担を軽減することが可能です。
もっとも、任意整理の対象に含めることができない債務もあるため、まずは任意整理を行うことができる債務について把握しておくことが重要です。
以下では、任意整理の概要や任意整理の対象となる債務について解説します。
(1)任意整理とは
任意整理は、債務整理手続の一種であり、毎月の返済額の減額や将来利息のカットを債権者と直接交渉し、返済負担を軽減する手続きです。
借金を返済する場合には、元本と元本に対して発生する利息分を合わせて支払うことが一般的です。
そのため、月々返済をしている金額のすべてが元本の返済にあてられるわけではありません。
借入額が大きくなると、発生する利息の額も大きくなるため、返済を続けていても、利息部分の支払いでなかなか元本部分の返済が終わらないことが多いです。
そのため、任意整理を行うことで、将来的に発生する利息をカットできれば、着実に元本の返済を進めていくことができます。
また、任意整理では、手続の対象となる債務を選ぶことができることも大きな特徴です。
もっとも、どのような債務であっても任意整理を行うことができるわけではないため、注意が必要です。
任意整理の対象とすることができる債務とできない債務については、次項で解説します。
(2)対象とすることができる債務
任意整理の対象とすることができる債務は、金融機関や貸金業者、個人などからの借入れです。
具体的には、以下のようなものが含まれます。
- 貸金業者からの借入れ
- 親族や友人からの借入れ
- 住宅ローン
- 自動車ローン
- クレジットカードのショッピング・キャッシング利用分 など
なお、任意整理を行うためには、債権者と直接交渉し、債権者との間で新たな取り決めについて合意をする必要があります。
そのため、これらの債務についても、債権者が合意しない限りは任意整理を行うことができないことに注意が必要です。
もっとも、任意整理の手続を弁護士に依頼することで、貸金業者などは交渉に応じることがほとんどです。
手続きを円滑に進めるためには、まずは弁護士に相談することが重要です。
(3)対象とすることができない債務
任意整理では、ほとんどの債務を対象とすることができますが、以下のような債務については対象とすることができません。
- 税金
- 国民年金保険料
- 国民健康保険料
- 養育費
- 損害賠償債務 など
そのため、これらの支払いについては任意整理による負担軽減を図ることができないことに注意が必要です。
もっとも、税金や国民健康保険料などの公的な支払義務については、役所や税務署の窓口に相談することで分割払いや減免措置を受けられる可能性があります。
また、養育費などは当事者間で個別に交渉することで、分割払いや支払猶予などに応じてもらえる可能性もあります。
そのような場合にも、弁護士に相談し、交渉を依頼することでスムーズに進めることが可能です。
2.債務別|任意整理の対象に含めた場合の影響
任意整理には、対象とすることができない債務もありますが、ほとんどの債務については対象に含めることができます。
もっとも、任意整理の対象に含めることで、生活などに影響が生じる債務も中にはあります。
具体的には、以下のような債務です。
- 住宅ローン
- 自動車ローン
- クレジットカード
- 携帯電話の利用料金・端末代金
- 奨学金
それぞれについて、任意整理の対象とするで生じる影響をご説明します。
(1)住宅ローン
住宅ローンを債務整理の対象に含めると、その住宅に住み続けることができなくなってしまう可能性が高いです。
これは、住宅ローンを組む際に金融機関などが住宅に抵当権を設定していることが通常であるため、任意整理をすることによって抵当権が実行されてしまうためです。
抵当権とは、住宅ローンが完済されなかった場合に備えて、債権者が設定する権利のことです。
抵当権を設定した住宅ローンの債権者は、抵当権が設定された物件を競売することで、ローンの残債を回収することができます。
そのため、住宅ローンを任意整理の対象に含めることは、住宅ローンが完済される可能性が低いということを意味し、債権者である金融機関が抵当権を実行し、住宅を競売にかけられてしまいます。
住宅が競売されてしまうと、当然ながら住宅に住み続けることができなくなってしまうため、住宅を手元に残したい場合は、任意整理の対象から除外することが望ましいです。
なお、住宅ローンの返済が困難な場合にとりうる手段については、以下の記事でも解説していますので、合わせてご参照ください。
(2)自動車ローン
自動車ローンを任意整理の対象に含めた場合には、自動車を失ってしまう可能性が高いです。
自動車ローンを組む際には、信販会社がその自動車について所有権留保を設定することが一般的だからです。
所有権留保とは、信販会社に所有権を留めておき、ローンの返済が滞った場合には、所有権留保が設定された物件を引き上げて残債を回収することができる手段をいいます。
任意整理の対象とすることは、ローンの返済が困難であることを意味するため、債権者が所有権留保に基づいて車を引き上げてしまうことになります。
そのため、仕事や生活に自動車が必要である場合には、自動車ローンを任意整理の対象から除外するのも1つの手段です。
自動車ローンを任意整理の対象に含めることの影響や任意整理後に自動車ローンを組む際のポイントについては以下の記事も参考になります。
(3)クレジットカード
クレジットカードの残債を任意整理の対象に含めると、クレジットカードが解約されてしまい、利用することができなくなってしまいます。
また、クレジットカードにポイントが貯まっている場合には、クレジットカードの解約と同時に利用できなくなってしまうことにも注意が必要です。
なお、任意整理に限らず、債務整理を行うと信用情報機関にその事実が事故情報として登録されてしまいます。
信用情報機関とは、加盟している金融機関から顧客の借入れ経過や返済状況などの信用情報の提供を受けて、これを管理している機関です。
事故情報が登録されているということは、その人の返済能力に問題があることを意味するため、任意整理の対象に含めていないクレジットカード会社がこれを知った場合には、更新などのタイミングで解約されてしまうことが多いです。
そのため、クレジットカードの債務の一部を任意整理の対象に含めてしまうと、ほかのクレジットカードも利用できなくなってしまう可能性が高いことにも注意が必要です。
任意整理がクレジットカードの利用に及ぼす影響については、以下の記事でも詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
また、クレジットカードの残債を任意整理の対象とする場合の注意点については、以下の記事も参考になります。
(4)携帯電話の利用料金・端末代金
携帯電話の利用料を滞納していて、これを任意整理の対象に含めた場合には、強制解約され、その携帯会社を引き続き利用することができなくなってしまいます。
また、携帯端末の代金を分割で支払っている場合にその残債を任意整理の対象とすると、契約内容によっては端末自体を引き上げられてしまうことがあるため、注意が必要です。
未払利用料や分割代金の残債を支払うことができる可能性がある場合には、任意整理の対象から除外することで、引き続き携帯電話を利用することができます。
携帯電話の利用と任意整理の関係については、以下の記事も参考になります。
(5)奨学金
奨学金も任意整理の対象に含めることができるものの、利息が低く設定されていることが多いため、任意整理を行っても大幅な返済負担軽減とはならない可能性があります。
また、実施団体によっては任意整理の交渉に応じない場合もあり、そのような場合には奨学金を任意整理することができない点に注意が必要です。
もっとも、奨学金については、返済が困難な場合の支援制度が用意されているため、そのような制度を利用することもおすすめです。
なお、奨学金の返還について、任意整理以外の対処法については、以下の記事でも詳しく解説しています。
3.任意整理の対象を選ぶ際の注意点
すでに述べたように、任意整理では手続きの対象となる債務を選ぶことができますが、債務の内容によっては、生活などに影響が生じる場合もあります。
そのため、任意整理の対象には適切な債務を選択することが重要です。
具体的には、以下の点に注意する必要があります。
- 低金利・無利息の債務は対象にしても利息カットのメリットはない
- 抵当権、所有権留保が設定されている債務は慎重に
- 保証人を立てている債務は慎重に
順にご説明します。
(1)低金利・無利息の債務は対象にしても利息カットのメリットはない
任意整理は、将来利息のカットを債権者と交渉することで、利息の返済負担を軽減する手続きです。
そのため、低金利や無利息の債務を任意整理の対象としても、利息がカットされる点のメリットはほとんど無いといえます。
ただし、任意整理では、返済期間を長期に決め直し、毎月の返済額を減額できるという点にも大きなメリットがあります。
そのため、利息のカットができなかったとしても、毎月の返済額を減額し、借金返済の負担軽減を図ることができます。
(2)抵当権、所有権留保が設定されている債務は慎重に
抵当権や所有権留保などの担保権が設定されている債務については、任意整理の対象にするか慎重に検討するべきでしょう。
先ほども述べたように、担保権が設定されている場合には、その債務を任意整理の対象に含めてしまうと、担保権が実行され、競売にかけられてしまいます。
住宅や自動車などについては、所有権を失ったり引き上げられたりするため、生活への影響が避けられない場合もあります。
そのため、これらの債務については、その後の競売や自動車の引き上げを前提に計画ができている場合には、任意整理の対象に含めるかどうかを慎重に吟味する必要があります。
なお、任意整理の対象に含めなかった債務については、契約内容に従い、これまでと同じように返済を続ける必要があることに注意が必要です。
(3)保証人を立てている債務は慎重に
保証人や連帯保証人を立てている債務を任意整理の対象に含めると、保証人などに一括請求がなされる可能性が高いです。
そのため、そのような債務については、任意整理の対象から除外するか、予め保証人に請求がいった後のことまで説明した上で任意整理の対象とするべきです。
4.任意整理について弁護士に相談・依頼するメリット
任意整理は、ほかの債務整理手続とは異なり、裁判所に申立てをするのではなく、直接債権者と交渉して借金返済の負担軽減を図る手続きです。
そのため、債務者が自身で債権者と交渉を行うことも可能ですが、そのような場合には債権者が交渉に応じないケースや厳しい条件を提示してくるケースもあります。
もっとも、弁護士が交渉することで、債権者は利息のカットや返済スケジュールの再設定に応じる場合がほとんどです。
そのため、任意整理を行う際には、弁護士に相談の上、交渉を依頼するのがおすすめです。
弁護士に相談することのメリットは、以下のとおりです。
- 借入状況や収入状況に応じた最適なアドバイスが受けられる
- 債権者からの督促や取立てを止めることができる
- 債権者との交渉を依頼できる
順にご説明します。
(1)借入状況や収入状況に応じた最適なアドバイスが受けられる
任意整理は、毎月の返済額の変額や将来利息のカットにより、借金返済の負担を軽減する手続きです。
そのため、任意整理を行った場合でも、借金の元本部分については引き続き返済を継続していくことが必要になります。
継続して返済を行うには、毎月一定の収入を得ていることが前提条件となるため、収入が安定していない場合には任意整理を行うことが適していないといえます。
また、借入総額が大きい場合には、利息のカットを交渉しても返済負担を軽減することにならない場合もあるため、注意が必要です。
弁護士に相談することで、借入総額や収入状況、債権者の数などの具体的な事情を踏まえ、任意整理を行うことが適しているか否かについてアドバイスを受けることが可能です。
また、任意整理を行う場合には、どの債務を任意整理の対象とするのがよいかなど、生活への影響を最小限に抑えるためのアドバイスやサポートを受けることができます。
(2)債権者からの督促や取立てを止めることができる
弁護士に相談後、任意整理の手続きを依頼すれば、弁護士は債権者に対して受任通知を送付します。
受任通知を受け取った債権者は、これ以降、債務者に対して直接督促や取立てを行うことを禁止されます(貸金業法21条1項9号)。
そのため、弁護士に依頼することで、債権者からの督促や取立てを止めることができます。
また、債権者からの督促や取立てが停止することで、返済も一定期間はストップし、その間に、手続を行うのに必要な弁護士費用を分割払いなどで捻出することもできます。
なお、すでに返済を滞納している借金で、任意整理の対象に含まなかった債務については、債権者からの督促や取立てを止めることはできませんので、注意が必要です。
(3)債権者との交渉を依頼できる
任意整理では、将来利息のカットや返済スケジュールの新たな取り決めについて交渉を行いますが、合意が成立するには債権者が応じる必要があります。
弁護士に手続きを依頼することで、債権者との交渉も依頼することができます。
特に任意整理をはじめとする債務整理の手続について経験が豊富な弁護士であれば、債務者が不利にならないように債権者との交渉を行うことが可能です。
また、債権者としても、元本部分については債権回収を図ることができるため、弁護士が交渉を代行している場合にはこれに応じる場合がほとんどです。
そのため、弁護士に債権者との交渉を依頼することで、スムーズに債権者と合意に至る可能性が高まります。
まとめ
本記事では、借金を任意整理することによって生じる影響を債務ごとに解説しました。
任意整理は、対象とする債務を選べることがメリットといえますが、中には対象とすることができない債務もあります。
また、任意整理の対象とすることで、生活に影響が生じる可能性があるものもあるため、任意整理を行う際には、生活への影響も踏まえて適切な債務を選ぶことが必要です。
さらに、債権者と直接交渉を行う必要があるため、任意整理を行う際には交渉の専門家である弁護士に相談・依頼することがおすすめです。
弁護士法人みずきでは、借金問題や任意整理などの債務整理の手続に数多く対応してきました。
経験豊富な弁護士が丁寧にお話を伺いますので、任意整理を行うことにお悩みの方はお気軽にご相談ください。
債務整理でこんなお悩みはありませんか?
もう何年も返済しかしていないけど、
過払金は発生していないのかな・・・
ちょっと調べてみたい
弁護士に頼むと近所や家族に
借金のことを知られてしまわないか
心配・・・
- ✓ 過払金の無料診断サービスを行っています。手元に借入先の資料がなくても調査可能です。
- ✓ 秘密厳守で対応していますので、ご家族や近所に知られる心配はありません。安心してご相談ください。
関連記事