勝手に借金の保証人にされてしまった場合の対処法
「身に覚えのない請求がいきなり来た」とお困りではありませんか?
いきなり請求が来たとしてもあせって支払ってはいけません。
落ち着いて状況を整理し、それに応じた適切な対処を講じる必要があります。
この記事では、身に覚えのない請求が来るケースのうち、借金の保証人にされてしまったケースについての対応を説明します。
1.身に覚えのない請求が来るケース
突然見知らぬ会社から請求が来るケースとしては、下記の2つのケースが想定されます。
(1)名義を勝手に使われたケース
家族が自分の印鑑を持ち出し、自分の名前で勝手に契約をしてしまうケースです。
契約の内容は、不動産や物品の売買契約、保証契約など様々です。
また、知人等に騙されて印鑑や免許証を渡してしまい、それを悪用されてしまったケースもあります。
(2)架空請求
架空請求業者が、結んでもいない契約の代金などを請求してくるケースです。
架空請求の場合は、連絡をしてしまうと架空請求業者に個人情報を知られてしまう恐れがあります。
架空請求業者に連絡はせずに、消費生活センター等に相談しましょう。
(3)二つの違いは?
(1)と(2)の違いは、実際には契約が成立していないことを債権者が知っているかどうかです。
架空請求業者は、騙そうという意図をもって請求を行っていますので実際に契約が成立しないことを債権者が知っています。
一方で家族に名義を勝手に使われて契約されてしまったような場合、形式上は正しく成立しているかのように思えますので、債権者に騙す意図はありません。
債権者としても正しく成立した契約上の義務の履行を求めていると考えているわけです。
身に覚えのない請求が来た場合、債権者に契約書類の開示を求めます。
そこに自身の名義の署名捺印がった場合はご家族が自分に代わって契約をしていないか確認しましょう。
また、友人等に印鑑などを貸した覚えがないかも思い出してみてください。
(4)裁判所からの書面は要注意
(1)および(2)いずれであっても裁判所から書面が来た場合は、そのままにせずにきちんと対処していくことが必要です。
放置していると相手からの一方的な主張に基づいて裁判所の判決が確定し、架空請求であっても支払い義務が生じてしまうためです。
裁判を起こされた場合、裁判が開かれる期日が設定されています。
この期日までに裁判所に連絡をしないと、相手方の言い分がすべて認められてしまう恐れがありますので注意が必要です。
また、架空請求の場合、本当に裁判を起こされているケースもあれば、あたかも裁判所からの書面のように偽造しているケースもあります。
内容を確認し、身に覚えのない請求である場合は、実際の管轄裁判所に問合せをしてみるといいでしょう。
その際、送られてきた書面に裁判所の電話番号と記載されていても、にせものの番号であることもあります。
インターネットや電話帳等で実際の管轄裁判所を確認した上で電話しましょう。
2.勝手に借金の保証人にされていた時の対処法
以下では、身に覚えのない請求が来るケースのうち、名義を勝手に使われ、借金の保証人にされてしまったケースについて説明します。
ご家族等が印鑑など持ち出し、勝手に保証人にされることは稀ではありますが実際にあります。
借金の保証人の場合、主債務者がきちんと返済を行っていれば請求がいくことはありません。
勝手に契約をしてしまったご家族としては「迷惑をかけないから…」と思い、内緒で保証契約をしてしまうこともあるでしょう。
そうしたケースでは、勝手に保証人にされたほうは、何も知らされないまま、ある日突然、高額な請求がきて面食らうということにもなります。
ではこのような勝手に保証人にされた場合は、債権者の請求どおりに支払わなければならないのでしょうか?
本来契約は当事者の意思の合致によって成立するため、本人が合意していない以上、有効な契約ではなく、保証人に支払い義務が生じないのが原則です。
ただし、結論は事情によって異なり、名義を冒用された本人が、名義の冒用を行った人に代理権があるかのような誤解を生じさせる落ち度がある場合は、表見代理という民法の規定によって、契約が無効にならず、名義を冒用された本人に契約が成立してしまいます。
このような場合は、債権者が、本人に債務を保証する意思があると信頼して契約を行っているため、この信頼を保護する必要があるためです。
表見代理が成立する場合とは、名義を冒用された本人が冒用した人に白紙委任状を渡した場合や本人が名義を冒用した人に自ら実印と印鑑証明書を渡しているような場合です。
こうしたケースでは、名義を冒用された本人にも、名義の冒用を行った人に本人のために保証契約を結ぶ代理権があるような誤解を生じさせる落ち度が認められます。
それを信じた第三者(ここでは保証契約を結んだ債権者)を保護する必要があり、契約の効果は本人に帰属します。
しかし、次のような場合は、表見代理を成立させて債権者を保護する必要がないため、表見代理は成立せず、本人に効果は帰属しません。
(1)債権者が名義の冒用について知っていた場合
債権者が名義の冒用の事実について知っていた場合、当然債権者を保護する必要はないので、契約は無効となり本人に効果は帰属しません。
ただ、金融機関と契約を結ぶ際に、担当者が名義の冒用について知った上で契約を締結することは稀と言えるでしょう。
また、仮に知っていたとしてもそのことを証明することは難しいかと思われます。
(2)債権者が名義の冒用について知らないことに過失がある場合
債権者が名義の冒用の事実について知らなかったとしても、十分に調査をしていれば知りえたような場合、契約は無効となり本人に効果は帰属しません。
債権者側にも契約締結について落ち度がある場合は、債権者の保護の必要はないためです。
名義の冒用の場面で主に争点となるのはこのような場合がほとんどです。
一般的には、実印と印鑑証明書がそろっていれば、債権者の過失は認められにくいです。
しかし、次のように、名義の冒用が疑わしい状況や、債権者に高度な注意義務が要求されるような特段の事情がある場合、本人に照会等の調査をすることが求められます。
具体的には、期間・限度額の定めのない包括根保証契約であるなど契約の義務が大きい場合、債権者が銀行等の専門家である場合、契約締結に際して高度な注意義務がある場合、本人の配偶者や、同居の家族等が本人の代わりに契約を結ぶ場合には、本人の実印や印鑑証明書の入手が容易である場合、筆跡等から、本人の署名に不審な点がある場合、などです。
3.勝手に借金の保証人にされてしまった場合にやってはいけないこと
上記のように、勝手に借金の保証人にされた場合、債権者に保証契約が有効になってしまう場合があるのです。
身に覚えのない請求が来た場合でも次のようなことには注意する必要があります。
(1)請求が来ても無視をしてしまう
身に覚えがないからと請求を無視し続けることはしてはいけません。
勝手に契約をされたとは言え、書類上は有効に契約が成立しているかのように見えます。
このため債権者は、いつまで経っても保証人が支払いをしてくれないとみると裁判を起こす場合もあります。
裁判を起こされても対応をしないでいると、裁判の判決が確定し、支払い義務が生じてしまいます。
こうなってしまうと、後から保証契約が無効であることを主張するのは難しくなります。
身に覚えのない請求であっても保証人にされた場合は早期に弁護士に相談しましょう。
(2)焦って支払ってしまう
突然の請求に驚いても、支払いをしてはいけません。
1円でも支払いをしてしまうと、支払い義務について認めたことになってしまい、保証契約が無効であることの主張に不利に働いてしまうためです。
債権者から電話で請求を受けた場合でも、きちんと自身で契約したものではないことを伝えましょう。
そのうえで早期に弁護士に相談するべきです。
4.支払い義務があるものの支払いできない場合
勝手に保証人にされた場合でも契約が有効となってしまった場合、突然、大きな金額の返済を行うのは難しいことがあります。
そのような場合には、弁護士に相談して債務整理の手続きをとることをお勧めします。
分割での支払いが可能であれば、債権者と交渉して和解し、長期で支払いをするように調整します。
また、分割でも支払いが難しい場合は自己破産等の裁判上の手続を行い、債務を免責してもう等の方法も考えられます。
まとめ
身に覚えない金銭の請求については、実際に支払いをしなくてよいケースと支払わなければならないケースがあることを紹介いたしました。
こういったケースでは、早期に適切に対処することが大切です。
身に覚えがないからと請求書を放置するといった対応はしないように気を付けてください。
仮に支払いをしなければならない場合でも解決方法はありますので、一度弁護士にご相談されることをお勧めします。
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