借金の返済から逃れたい!夜逃げで解決できる?

執筆者 中越 琢人 弁護士

所属 第二東京弁護士会

弁護士は、スーパーマンではありませんが、他人が抱える紛争の解決のため、お手伝いをすることができます。私は、一件一件丁寧で誠実な対応を心がけ、問題解決のためにできることはやり尽くすという姿勢でおります。皆様の不安が解消され、平穏な生活を送ることができるようになるまで、紛争解決のお手伝いを致します。

「借金を返済できる自信がない」
「夜逃げをすれば返済から逃れられるのでは?」

借金問題に追い込まれる日々が辛く、逃げ出したいと考えている方もいらっしゃるかもしれません。

残念ながら、夜逃げでは借金の返済から逃れることはできません。

この記事では、その理由と夜逃げ以外に借金問題を根本的に解決する方法についてご説明します。

1.夜逃げしても問題解決にならない理由とは

借金の返済から逃れる手段として、夜逃げは適切ではありません。

では、夜逃げをするとどのようなことが起きるのでしょうか。

(1)借金は無くならない

夜逃げをした分返済が遅くなれば利息も増え、かえって借金額が増えてしまいます。

また、返済を滞納すると遅延損害金と呼ばれる損害賠償金も発生します。

遅延損害金は支払日に支払いがなかった時に、支払日の翌日から入金が確認される日まで発生し続けます。

そのため、夜逃げしても借金は消えず、むしろ返済額が増え続けるのです。

(2)時効になる可能性は低い

借金には消滅時効が定められており、原則として、借金や利息の支払期日である弁済期から5年を経過すると、時効が成立します。

返済日が決まっていれば、返済日から何年と数えますが、返済日よりも最後に返済した日の方が後であれば、最後に返済した日から数えます。

2020年4月1日より施行された改正民法では、消滅時効の規定も変更されました。

具体的には、『権利行使できると知った時から5年、権利行使できるときから10年のいずれか早い方』です。

ただし、改正後の規定は2020年4月1日以降に生じる債権に適用されるため、2020年4月1日以前に生じた債権には適用されません。

2020年4月1日よりも前にした借金は、クレジットカード会社や消費者金融などの貸金業者から借りた場合は5年、個人から借りた場合は10年を過ぎると時効が成立します。

消滅時効は、債権者が返済を請求する権利を行使しなかった時に限り成立するものです。

そのため、債権者が裁判所を通じて返済を要求して訴訟を起こせば時効は成立せずに、借金は残ったままになってしまうのです。

改正前と後、どちらに発生した借金だとしても、返済しなければ債権者は返済を要求する(=権利を行使する)可能性が高いです。

そのため、逃げたからといって借金が時効によって消滅する可能性は低いのです。

(3)保証人・連帯保証人に請求がいく

主債務者からの返済がない場合、債権者は保証人や連帯保証人に対して返済を要求します。

特に、連帯保証人は請求されると拒否することができません。

保証人にだけ認められ、連帯保証人には認められていない権利には以下の三つがあります。

催告の抗弁権:

主債務者よりも先に債権者から請求を受けた場合に、まず債務者に請求するよう求める権利

検索の抗弁権:

債権者から請求を受けた場合に、主債務者に財産があることを証明し、まずは主債務者の財産を差し押さえるよう求める権利

分別の利益:

保証人が複数いる場合、借金を分割して一人当たりの負担する金額を減らせること

よって、連帯保証人は主債務者より先に請求を受けても拒むことができず、他に保証人が複数人いても借金の全額を負担する必要があり、重い責任を課されるのです。

(4)住民票を移すことができない

もし住民票を逃げた先の新しい住所に変えると、新住所宛てに返済の請求が来てしまいます。

そのため、夜逃げをすると住民票を新住所に移すことができません。

しかし、住民票を移せなければ、日常生活に以下のような影響を及ぼします。

  • 国民健康保険の場合は病院を受診した際の費用に保険が適用されない
  • 住民票や印鑑証明など、各証明書を新住所の役所で発行できない
  • 運転免許証の更新を新住所地でできない

国民健康保険では、住所変更をしなければ実際に住んでいる場所と住民票記載の住所が違うため、保険証が無効になってしまいます。

そのため保険証が使えず、病院を受診した際の費用が全額自己負担となるのです。

2.夜逃げをする前に債務整理を検討しよう

夜逃げをすることは借金問題の解決に繋がるどころか、むしろ事態を悪化させてしまうこともあります。

それよりも、法的手続である債務整理を用いて借金問題の解決を図るほうが現実的でしょう。

債務整理には任意整理、個人再生、自己破産の三つの手続があり、これらの手段により借金を減額・免除してもらうことが可能です。

負担を減らせる範囲はそれぞれ異なりますが、返済が難しいと感じた場合は検討してみましょう。

(1)任意整理

任意整理は裁判所を通さずに債権者と任意で交渉し、借金の減額を図る方法です。

3~5年程度で返済できる金額であれば、任意整理を選択することが可能です。

減額できるのは将来発生するはずであった分も含め利息部分のみのため、元本を減らすことはできません。

一方で、官報に名前が記載されず、家族や勤務先に任意整理を利用していることが知られる可能性は低いというメリットがあります。

大幅に借金を減らすことはできませんが、他の二つの方法と比べるとリスクが低い方法です。

(2)個人再生

個人再生では裁判所に申立てをして借金の返済が困難であることを認めてもらいます。

そして、元本も含めて減額した金額を裁判所が認可した再生計画に従って、3~5年で返済していく方法です。

個人再生では以下のようなメリットがあります。

  • 大幅に借金を減らせる
  • 借金の理由を問われない
  • 職業の制限を受けない
  • 車や家、土地を手放さずに済む

任意整理で大幅な減額を見込めない場合、個人再生を検討してみましょう。

ただし、個人再生をすると官報に名前が記載されるというデメリットがあり、保証人に支払請求がされるため、保証人が返済を免れることはできません。

(3)自己破産

自己破産では、裁判所に申立てをして返済が困難であることを認めてもらい、債務の支払義務を免除(「免責」といいます。)してもらう方法です。

借金が無くなるため、返済に回していたお金を自由に使うことができます。

ただし、車や家、土地など資産価値の高い財産を手放す必要があったり、一定期間就けない職業があったりする点に注意しましょう。

また、個人再生と同様に官報に名前が記載され、保証人がいればその者に対しては借金は免除されません。

デメリットもありますが、収入が少なく返済が困難であれば有効な方法です。

3.債務整理を行うメリットとは

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債務整理は、利息や遅延損害金の発生を回避するだけでなく、借金問題を解決するために有効な方法です。

具体的にどのようなメリットがあるのかご説明します。

(1)借金の負担を軽減することができる

借金の返済が難しければ、債務整理は有効な方法です。

払えないからといって払わないままでいれば、督促を受けたり遅延損害金が増えてしまったりして、より悪い状況に陥ってしまいます。

債務整理には三つの方法があるため、自身の状況や借金額などに合わせて最適な方法を選びましょう。

(2)家族も債務整理をすることで借金から免れることができる

個人再生や自己破産をすると、債務者は借金を免除されますが連帯保証人に対しては免除されないと述べました。

もし家族が連帯保証人になっている場合は、その家族も債務整理をすることで借金を無くすことができます。

借金問題を根本的に解消したい場合はこのような方法も検討してみましょう。

(3)督促に悩まされることが無くなる

債務整理をすることで、債権者は督促をできなくなります。

弁護士に債務整理手続を依頼すると、債権者に対して「債務整理を専門家に依頼した」という内容の受任通知が行きます。

この受任通知が届いたら、貸金業者は督促や取立てができなくなるのです。

(4)過払金が返ってくる可能性がある

弁護士は債務整理を依頼されると引き直し計算を行い、どのくらい借金があるのか調査して借金の正確な金額を算出します。

もし利息を払いすぎていることがわかれば、債権者に対して過払金の返還を請求できる場合があるのです。

まとめ

借金が返済できなければ、不安や焦りから夜逃げなどの行動をとる人もいるでしょう。

しかし、本記事でも解説したように、夜逃げを行うとかえって不利な状況に陥ってしまいます。

借金問題で困っている場合には、まずは弁護士にどうすれば良いのか相談しましょう。

弁護士法人みずきには、債務整理の経験が豊富な弁護士が多数在籍しています。

まずは当事務所にお気軽にご相談ください。

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執筆者 中越 琢人 弁護士

所属 第二東京弁護士会

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