債務整理で借金完済後すぐにできないことは?事故情報削除後の注意点

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「債務整理で借金を完済した後は、すぐにローンを組むことができるのか?」
「債務整理で借金完済後、すぐにできないことは何なのか?」

債務整理を検討している方の中には、債務整理で借金を完済した後のことが気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では、債務整理で借金完済後すぐにはできないことや、事故情報が削除された後に注意すべきことについてご説明します。

1.債務整理で借金完済後すぐに事故情報は削除されるのか?

債務整理によって借金を完済しても、すぐに事故情報が削除されるわけではありません。

信用情報機関によって各事故情報が登録されている期間は異なりますが、例えば任意整理の場合は完済日から早くても5年は経過しなければ、事故情報が削除されません。

つまり、借金を完済したとしても、最短でも5年間は事故情報が残ったままとなってしまいます。

そのため、すぐには事故情報による制限は解除されないことを覚えておきましょう。

事故情報が削除されるまでの期間を以下の表にまとめているので、期間が過ぎたら各信用情報機関に確認するとよいでしょう。

債務整理の
手続方法
株式会社シー・アイ・シー
(CIC)
株式会社日本信用情報機構(JICC) 全国銀行個人信用情報
センター(KSC)
任意整理 完済から5年 完済から5年
(ただし2019年9月30日以前の契約は受任通知の送付日から5年)
完済から5年
個人再生 完済から5年 完済から5年
(ただし2019年9月30日以前の契約は手続開始決定日から5年)
手続開始決定日から10年か、完済から5年のいずれか遅い方
自己破産 免責許可決定確定日から5年 免責許可決定確定日から5年 手続開始決定日から
10年

各信用情報機関に対しては開示請求することで、登録されている情報の確認が可能です。

開示請求の方法は以下のとおりです。

信用情報機関 情報開示請求の方法 開示請求手数料
CIC インターネット、郵送、窓口で受付
  • インターネット、郵送:¥1,000
  • 窓口:¥500
JICC インターネット、郵送、窓口で受付
  • インターネット、郵送:¥1,000
  • 窓口:¥500
KSC 郵送のみ受付 ¥1,000

具体的には、各信用情報機関のホームページに詳しく記載されています。

確認する際は、念のために、3つの機関全てに開示請求をするとよいでしょう。

2.債務整理で借金完済後すぐにはできないこと

債務整理で借金完済後すぐにはできないこと

債務整理で借金完済後、すぐにはできないことについてご説明します。

ご説明したように、債務整理で借金を完済しても、事故情報が削除されるまでに時間がかかることから、以下の2点は制限されたままです。

  1. クレジットカードを申し込めない
  2. ローンを組めない

事故情報が削除されるまでは、クレジットカードやローンを利用できないことを覚えておきましょう。

(1)クレジットカードを申し込めない

債務整理で借金を完済しても、すぐにはクレジットカードは発行できません。

クレジットカードの発行を申請すると、クレジットカード会社は信用情報を調査するために信用情報機関に対して申請者の登録情報の照会を行います。

このとき事故情報が登録されていると、申請者の信用情報には問題があるということになり審査に通りません。

そのため、クレジットカードの発行を受けられないことになってしまいます。

キャッシュレスの決済手段が必要な場合は、デビットカードやプリペイドカードを利用するようにしましょう。

(2)ローンを組めない

クレジットカードと同じ理由でローンも組むことができません。

ローンを組んで高額取引をしたい場合は、家族名義でローンを組む方法があります。

たとえば、配偶者にローンを組んでもらうことで、家や車などを分割払いで購入可能です。

ただし、家族に債務整理をしたことを知られたくない人は、ローンが組めるようになるまで待つことをおすすめします。

事故情報が削除されるまで貯金していれば、ローンを組む際に頭金を用意でき、借入金額を減らすことも可能です。

3.事故情報の削除後に気を付けること

事故情報の削除後に気を付けること

事故情報が削除された後に気を付けることをご紹介します。

基本的には、以下の2点に気を付けましょう。

  1. 債務整理の対象ではない金融機関に申し込む
  2. 申込先は1社に絞る

(1)債務整理の対象ではない金融機関に申し込む

債務整理の対象にした金融機関に、クレジットカードやローンの申込みはしないようにしましょう。

それぞれの金融機関では利用者の情報を信用情報機関とは別に独自に管理しており、事故情報も管理されていることがあります。

さらにその情報を系列の金融機関で共有している可能性もあります。

そのため、信用情報機関から事故情報が削除されたとしても、過去の事故情報を把握されてしまうため、審査に通らないことがあります。

一度も契約したことのない金融機関であれば、過去の事故情報を知られることはないため、新規で契約が可能です。

初めから審査に通らない可能性がある金融機関に申し込むよりも、契約が期待できる金融機関に申し込んだ方が効率がよいでしょう。

(2)申込先は1社に絞る

クレジットカードの発行やローンの申請の申込みは、1社に絞りましょう。

複数の金融機関に一度に申し込むと、信用情報機関に申込みの履歴が登録されます。

各金融機関は審査の際に信用情報を確認するため、複数の金融機関に申請していることがわかってしまい、リスク回避を理由に契約を拒む可能性が高いです。

申込先は複数社ではなく、1社ずつ申し込みましょう。

まとめ

本記事では、債務整理を利用して借金を完済した後に事故情報の登録がどうなるのか、完済後にすぐにはできない取引や手続などについて解説しました。

債務整理で借金を完済しても、すぐには事故情報は削除されません。

また、借金完済後にすぐにクレジットカードの発行やローンを組むこともできません。

そのため、代わりの手段を取るか、事故情報が削除されるのを待つことをおすすめします。

事故情報の削除後にクレジットカードやローンの契約をする場合でも、これまで契約をしたことがない会社に1社ずつ申し込むようにしましょう。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

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