差し押さえるものがない場合は強制執行の通知は無視してもよい?対処法を解説
「差押えを予告する通知が債権者から届いたがどんな財産が差し押さえられてしまう?」
「差し押さえられるものがない場合は債権者からの通知を無視してよい?」
税金やカードローンなどの支払を滞納し続けていると、債権者から差押えを予告する通知が届くことがあり、そのまま無視していれば、債権者に債務名義を取得された後、強制執行により差押えをされる可能性があります。
しかし、差し押さえるものがない場合はどうなるのか気になる方も多いのではないでしょうか。
一切差し押さえるものがない場合は、強制執行はできません。
ただし、自分では差し押さえられるような財産がないと思っていても、実際は差押えの対象となるものもある場合があるため、注意が必要です。
この記事では、差押えの対象となるものや対象とならないもの、強制執行で差し押さえるものがない場合はどうなるのかについてご説明します。
1.強制執行で差し押さえられる財産
強制執行により差押え対象となる財産は、大きく分けて以下の三つがあります。
- 不動産
- 動産
- 債権
これらのうち、優先的に差し押さえるのが給与や預金といった債権です。
そのため、不動産や動産などの高価な財産がない場合でも、給料や預金があれば差押え対象となることに注意が必要です。
強制執行で差し押さえられる財産の詳細を見ていきましょう。
(1)不動産
債務者が土地や建物といった不動産を有している場合は、強制執行により差し押さえられる可能性があります(「不動産執行」といいます。)。
不動産は競売によって売却され、債権者への返済に充てられます。
ただし、債権者にとって、不動産執行は建物の査定に時間がかかるうえ、競売手続のために裁判所に払う予納金も必要となるため、債権者にとってのデメリットがあります。
そのため、債権額が高額で、なおかつ不動産に十分な価値があると判断できる場合でなければ、差押えはされないでしょう。
(2)動産
債務者が現金、車、時計、貴金属といった動産を有している場合は、強制執行により差し押さえられる可能性があります(「動産執行」といいます。)。
動産は売却され、債権者の返済に充てられます。
ただし、動産執行は債権者にとって以下のようなデメリットがあります。
- 債務者の所有している動産を調査するのが困難
- 動産を運び出す人件費が必要
- 現金以外は換金するための手間がかかる
このように動産執行は手間や費用がかかることから、債務者がよほど高価な動産を所有していなければ差押えをするメリットがありません。
そのため、動産執行をされるケースは少ないのが実情です。
(3)債権
債務者の給料や預金といった債権については、不動産や動産よりも差押えを受けやすいです(債権に対する執行なので「債権執行」といいます。)。
なぜ債権が差し押さえられやすいのかというと、不動産執行や動産執行と比べて、予納金等の費用や財産調査の手間がかからないためです。
不動産や動産がないという場合でも、無職でない限りは給料を受け取っているはずですし、預金口座も持っているものと思います。
勤め先や預金口座を持っている銀行、支店名が債権者に知られている場合は、給料や預金が差押え対象となってしまうことを覚えておきましょう。
なお、給料が差し押さえられることになると、勤務先にも差押えの事実が共有されるので、会社に居づらくなってしまう可能性があります。
2.強制執行で差し押さえられない財産
強制執行による差押えの対象となる財産の種類について説明しましたが、一部の財産については差押えの対象となりません。
この差押えの対象にならない財産は「差押禁止財産」と呼ばれています。
差押禁止財産は、差押禁止動産と差押禁止債権の二つに分かれます。
具体的にどういったものなのかを見ていきましょう。
(1)差押禁止動産
動産執行となった場合でも、差押禁止動産に該当するものは差し押さえされません。
差押禁止動産の一例はこちらです。
- 生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳、建具
- 1か月間の生活に必要な食料および燃料
- 2か月分の生活に必要な66万円までの現金
- 仕事をするうえで欠くことのできない器具その他の物
- 学校などにおいて学習に必要な書類および器具
寝具、家具、家電などの生活必需品は差押禁止動産となるので、万が一動産執行となっても生活ができなくなるということはありません。
近年では、スマートフォンやパソコンも生活に必要なものと考えられているので、差し押さえられることはないでしょう。
(2)差押禁止債権
優先して行われやすい債権執行に関しても、差押禁止債権に該当するものは差し押さえられません。
差押禁止債権の一例はこちらです。
- 給料の手取り額の4分の3
- 各種年金の受給権
- 生活保護受給権
- 児童手当受給権
給料が差し押さえられる場合、差押えの対象となるのは手取り額の4分の1であり、残りの4分の3は手元に残すことができます。
ただし、手取り額が33万円を超える場合は、33万円を超えた部分は全額差押えの対象となります。
3.差し押さえられるものがない場合の強制執行について
無職で一切差し押さえられるものがない場合は、強制執行となっても何も差し押さえられることはありません。
つまり、強制執行が空振りに終わるということです。
しかし、自分以外の人たちへの影響があるのか不安になるでしょう。
ここからは、差し押さえられるものがない場合、強制執行がどうなるのかを詳しくご説明します。
(1)家族名義の財産が差し押さえられることはない
強制執行で差押対象となるのは、あくまで債務者名義の財産のみです。
そのため、差し押さえられるものがない場合でも、家族名義の財産や私物が代わりに差し押さえられることはありません。
しかし、だからといって差押えを回避するために、不動産や自動車などの名義だけを家族のものにしてしまうなどの行為をしてはいけません。
このような行為は強制執行を逃れるためにしたものとして強制執行妨害目的財産損壊等罪(刑法96条の2)に問われるものになりますので、絶対にやってはいけません。
(2)連帯保証人がいる債務は保証人に請求がいく
滞納している債務に連帯保証人をつけている場合は、その連帯保証人に対して保証債務の履行請求が行われます。
もし連帯保証人が返済できない状況であれば、連帯保証人の財産が差押えを受ける可能性が生じることになります。
連帯保証人は自身が保証債務を履行する義務を負っていますので、請求を拒むことはできません。
つまり、主債務者に差し押さえられるものがなかったとしても、連帯保証人が最終的に強制執行により財産を失う可能性があるということになります。
(3)債権の全額を回収するまで何度も行われる可能性がある
差し押さえる財産がなく強制執行が空振りに終わったとしても、その後に得た財産を差し押さえられる可能性があります。
なぜなら、債務名義がある限り、債権全額を回収するまでは、強制執行を続けて行うことができるからです。
一度目の強制執行で差し押さえられた口座に預金がなかったとしても、次のときには預金があるかもしれませんし、知られていなかった就業先を何らかのきっかけで知られてしまうこともあります。
債権者は、上記のような事情によりほかの財産があるとわかれば、再度の強制執行に及ぶこともあるのです。
このように強制執行の手続は繰り返される可能性があります。
まとめ
強制執行で差し押さえられるものがないと思っている場合でも、給料や預金が差押えの対象となることは把握しておきましょう。
差押えの対象となる不動産や動産もなく、ご自身に収入も預金も一切なくご家族の収入で生活している、ということであれば強制執行により差し押さえられるものはないでしょう。
また、家族の名義の財産を差し押さえられることはありません。
差し押さえられるものがあった場合はもちろん、差し押さえられるものが一切ない場合でも、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談するだけでも精神的に楽になるでしょうし、現状の生活から抜け出すための的確なアドバイスを受けられます。
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