カードローンに時効はある?時効援用の方法について解説
「随分前に借りたカードローンの支払請求がきた」
「払ったはずのカードローンの返済を請求されたら払わないといけないの?」
カードローンを利用されている方の中には、このような悩みや疑問をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
カードローンには時効があることをご存知でしょうか。
消滅時効にかかったカードローンの支払請求には、応じる必要はありません。
もっとも、そのためには消滅時効の援用が必要となります。
この記事ではカードローンの時効期間や、時効期間が更新されるケース、カードローンの延滞を放置するリスクや対処法をご説明します。
この記事をご覧いただき、滞納してしまったカードローンについて正しい対処法をご確認ください。
1.カードローンの時効とは
カードローンに関する返済の請求は債権にあたります。
債権には、その行使に関して期間の制限があります。
以下では、カードローンについての消滅時効やその期間、時効の援用(主張方法)について解説します。
(1)カードローンには時効がある
カードローンの請求に関して、時効の概念とその期間についてご説明します。
#1:時効とは
時効とは、特定の状態が一定期間続いた場合にその状態が続いていることを尊重し権利の取得や喪失の効果をもたせるという法律上の制度です。
特定の権利をもっていたとしても一定の期間権利行使しない場合、その権利は消滅します。
これを消滅時効と言います。
カードローンにも時効があります。
債権者が一定期間権利行使しない場合、その権利は消滅します。
つまり、債務者からみると借金の返済義務がなくなるということです。
#2:カードローンの時効期間は5年
カードローンが時効となる期間は5年です。
民法は、第166条1項1号において「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」時効によって消滅すると規定しています。
(2)時効の援用が必要
では、カードローンが時効となる5年が経過していれば、何もせずに借金が消えるかというとそうではありません。
「時効の援用」をする必要があります。
時効の援用とは、権利を有している相手に対して時効だと宣言することです。
時効の援用をしなければ、消滅時効が成立する条件がそろっていたとしても借金は消滅しません。
そうすると債権者からの督促は続きますし、場合によっては債権者に裁判を起こされることもあります。
もし債権者の督促に応じてうっかり支払ってしまったり、債権者が起こした裁判が進んでしまうようなことになった場合は、時効が成立する条件が欠けてしまう可能性があります。
したがって、そういったリスクを避けるためにも、時効の援用が必要です。
(3)時効援用の手順
次に時効援用の手順についてご説明します。
払ったはずのカードローンについて請求がきている人は、以下の手順を参考にしてみてください。
#1:最終取引日を照会する
まずは債権者と最後に取引した日を確認します。
最終取引日が5年以内の場合は、時効ではありません。
最終取引日を確認する方法は、利用明細などを確認するほか、債権者に問い合わせて確認することもできます。
#2:時効の更新事由がないかを確認する
時効の更新とは、それまで進行していた時効の期間をリセットする制度です。
時効の更新事由には大きく分けて3つあります。
①債権者から裁判や支払督促を起こされている(時効期間は10年になります)
②債権者から差押えをうける(時効期間は10年になります)
③債務の承認をしてしまっている
時効の更新事由がないかどうかは、債権者に問い合わせて確認することができます。
また、①もしくは②があった場合には、過去に裁判所から「訴状」「支払督促」「債権差押命令」といった書面を受け取っている可能性がありますので、合わせて確認が必要です。
#3:時効援用通知を出す
債権者へ時効援用通知書を送付します。
時効の援用は口頭でも行えます。
ですが時効の援用は非常に重要な手続です。
そのため、「時効援用通知書」などの書面ではっきりと行うべきです。
書面で通知することで、あとから「聞いていない」などと争いになることを避けることができます。
書面に記載するべき内容は、以下のような事項を網羅しておくことをお勧めします。
- 送付日
- 当事者に関する情報
- 何について時効を援用するのかの記載(例えばカード番号など)
- 「消滅時効を援用します」など、時効を援用する旨の記載
2.時効期間が更新される3つのケース
時効には更新という制度があります。
時効の更新とは、それまで進行していた時効の期間をリセットする制度です。
時効が更新されるケースには大きく分けて下記の3つがあります。
(1)債権者から裁判や支払督促を起こされている
時効の更新事由の1つ目は債権者から裁判や支払督促を起こされていることです。
裁判や支払督促を起こされると、これまでの時効期間がリセットされ、新たな時効期間が始まります。
時効期間が更新されたあとの時効期間についてご説明します。
#1:債務名義の時効期間は10年
債権者が裁判を起こし判決が出ると、債権者は「債務名義」を取得します。
債務名義を取得された場合、新たな時効期間は債務名義が確定した時点から10年間です。
#2:支払督促の時効期間は10年
債権者が支払督促を簡易裁判所に申し立てた場合、裁判所から支払督促が届きます。
裁判所から支払督促が届いてから2週間以内に督促異議を出さなかった場合に支払督促が確定します。
新たな時効期間は支払督促の確定から10年間です。
(2)債権者から差押えをうける
差押えとは債権者が差押手続きを裁判所に申し立て、給与や預貯金、不動産などの所有する資産を強制的に回収することです。
新たな時効期間は差押えから10年間となります。
(3)債務の承認をしてしまっている
債務の承認とは、借金が存在していることを認めることです。
具体的には下記のような手続を取っている場合に、債務の承認があるとみなされるケースがあります。
#1:借金を返済する
債権者に借金を返済していると債務の承認とみなされてしまいます。
#2:書面を取り交わしている
債権者から「債務承認契約書」などの債務があることを認める旨の書面を受けとり、その書面にサインしている場合は債務を承認したとみなされる場合があります。
#3:支払の約束をしている
債権者と支払の約束をしている場合も債務の承認とみなされる場合があります。
支払の約束の方法は書面に限らず、電話などの口頭のやりとりも該当します。
債権者によっては証拠として電話の内容を録音していることもあります。
そのため、債権者とのやりとりには注意が必要です。
#4:債務承認の時効期間は債務承認をした時点から5年
債務の承認があったとみなされた場合は、時効期間が更新されます。
新たな時効期間は債務承認があった時点から5年です。
3.カードローンの延滞を放置するリスク4選
ここまではカードローンの時効と、カードローンの時効期間が更新されるケースについてご説明しました。
カードローンが時効になるには、時効期間を経過する必要があります。
時効期間が経過したということは、カードローンを5年以上延滞して放置していたということになります。
カードローンの延滞を放置することには、リスクも伴います。
こちらではカードローンの延滞を放置するリスクについてご説明します。
(1)一括請求を起こされる
カードローンの返済を延滞したまま放置すると、一括請求を起こされるリスクがあります。
例えばカードローンの契約をする際、10万円を借り入れて、それを3か月にわたって毎月35,000円返せばよいというような、返済金額や返済期限を取り決めます。
カードローンの返済を延滞して放置してしまうと、この取り決めた返済に関する契約内容に違反したとみなされてしまいます。
そこで債権者はペナルティとして一括請求を起こすのです。
(2)遅延損害金が発生する
カードローンの返済を延滞したまま放置すると、遅延損害金が発生してしまうリスクがあります。
延滞の期間が長いほど、遅延損害金は膨らんでしまいます。
また膨らんだ遅延損害金も含めて一括請求されてしまうため、そのまま支払っていくより大きな金額を返済しなければならなくなってしまうのです。
(3)裁判や支払督促を起こされる
カードローンの返済を延滞したまま放置し、一括請求の通知も放置していると債権者から裁判を起こされるリスクがあります。
債権者側としては裁判や支払督促を申し立てることで時効期間を更新して債権を保全しておくことにもなります。
そのため、一般的な消費者金融や銀行、クレジットカード会社などの債権者は時効管理を厳格に行っています。
債権者は、5年間の時効期間が経過しないように裁判を起こして請求するケースが多いです。
(4)差押えに発展する可能性がある
裁判で判決が出るなどして債権者に債務名義を取得された後も、カードローンの返済を延滞したまま放置していると、債権者から差押えに及ばれる可能性があります。
差押えに及ばれると、給与や預貯金、不動産などの資産を強制的に回収されてしまいます。
また債権者から差押えられたあとは、その資産を取り戻すことはできません。
そのため、差押えに及ばれる前にカードローンの延滞に対して対処する必要があります。
4.カードローンの延滞を放置してしまった時の対処法
ではカードローンの返済を延滞したまま放置してしまった場合、どのような対処法をとるべきかについてご説明します。
(1)時効期間が経過していれば時効援用を行う
カードローンの返済を延滞したまま放置し、時効期間が経過していた場合は、時効援用をして借金の時効を確定させる必要があります。
時効援用をせずに放置してしまうと、債権者が請求をしてきたり、裁判を起こしてくる可能性があります。
例えば時効期間が経過したあとに、債権者が裁判を起こし、何も対応しなかった場合、判決が出されます。
判決が出されたあとに、債権者が債務名義を取得すると、裁判の前に時効期間が経過していたとしても、時効期間が更新されてしまいます。
したがって、時効期間が経過していれば速やかに時効援用を行う必要があります。
(2)時効期間が経過していなければ債務整理手続を行う
時効期間が経過していなければ、債務整理手続を行って借金を整理することも考えられます。
債務整理には大きく3つの方法があります。
下記にてご説明いたします。
#1:任意整理
裁判所を介さない私的手続です。
弁護士が債権者に利息の減免等を交渉し、毎月無理なく返済できるように返済計画を立てます。
返済期間は3~5年ほどの長期分割が必要となるケースが多いです。
裁判所を介して行う「自己破産」や「個人再生」と異なり、整理する債務と整理しない債務を選ぶことができます。
借金の総額が年収より少ない方、毎月安定した収入がある方にお勧めです。
#2:個人再生
個人再生は借金の返済が難しいことを理由に、債務を5分の1程度に圧縮して、それを3~5年で債権者に分割して返済する手続です。
再生計画を作成し、裁判所の認可を求める手続になります。
個人再生の一番の特徴は、住宅ローンがあった場合には住宅ローンはそのまま支払い続けることができ、マイホームを維持することができるという点です。
また自己破産とは異なり、借金がゼロになるわけではないですが、借金の一部を圧縮することができます。
浪費やギャンブルが原因で生じた債務は免責の対象とならない自己破産手続と異なり、借入の原因を問わず圧縮の対象となります。
マイホームを残したい方、自己破産が出来ない方などにお勧めです。
#3:自己破産
自己破産は借金の返済が難しいことを理由に、裁判所に借金の免除を認めてもらうことを求める手続です。
自己破産手続きをすると、財産をすべて没収されてしまうというイメージがありますが、実際は99万円以下の現金や財産価値が20万円以下のものについては手元に残すことができます。
借金を返済できる見込みがない方、安定した収入がない方にお勧めです。
債務整理手続の方法については、弁護士にご相談の上、どの手続を選択するかを検討しましょう。
まとめ
本記事では、カードローンの時効や援用、援用の方法や対処法について説明しました。
もし時効期間が経過しているのであれば、速やかに時効の援用を行うべきです。
時効期間が経過していないのであれば、カードローンの延滞を続けることで返済金額が増えたり、裁判を起こされたり、差押えに及ばれるリスクがあります。
その場合には、債務整理などをご検討いただく必要があります。
滞納状態に陥っている方が時効の成立を期待してしまうお気持ちはよくわかります。
しかし、債権者も時効期間が経過しないよう厳格に管理をしているケースが多いため、滞納状態のまま時効を迎えられるケースはそう多くありません。
大切なのは時効以外にも今の状況から抜け出せる方法はあるということです。
カードローンの滞納状態に陥っている方は是非一度ご相談ください。
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