アスベスト被害の補償制度は?工場型アスベスト被害の場合の対処法
「アスベスト被害に遭った場合にどのような補償制度があるのか」
「補償制度以外に金銭を請求する方法はないのか」
アスベストの被害者の中には、救済制度がないか模索している方もいるのではないでしょうか。
本記事では、アスベスト被害の補償制度や補償制度以外の対応についてご紹介します。
1.アスベスト被害の主な補償制度
アスベストの被害を受けた方のために用意された補償制度をご紹介します。
主な救済制度は以下の3つです。
- 労災保険
- 石綿健康被害救済制度
- 建設型アスベスト給付金
いずれも利用するには要件を満たす必要があるので、該当しているのか確認してみましょう。
(1)労災保険
業務中にアスベストで何らかの健康被害を受けた方は、労災保険を利用することができます。
雇用主は労災保険への加入が義務付けられており、企業に所属してアスベストの被害を受けている場合は、労災保険給付の受給が可能です。
ただし、労災保険を利用するには以下2点の要件を満たす必要があります。
- アスベスト健康被害を発症している
- 労働者としてアスベストを取り扱う仕事に従事していたことによって、アスベスト健康被害を発症したことが認められる
ここでいうアスベスト健康被害とは、石綿肺、中皮腫、肺がん、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚のことで、診断書にこれらの病気が記されているか確認しましょう。
労働基準監督署長に申請を行い、これら2点の要件を満たしていると判断されれば、申請が認定されます。
記載漏れ等があれば認定まで遅くなるため、手続に不備がないように注意しましょう。
(2)石綿健康被害救済制度
石綿健康被害救済制度は、労災保険を利用できない方向けに設けられた制度です。
労災保険は業務に従事している者のみが対象になるのに対し、石綿健康被害救済制度は業務中の被害に限定されず、すべてのアスベスト被害者が利用できる可能性があります。
また、労災保険の対象だったものの時効を迎え、請求できなくなった方も該当します。
ただし、アスベスト被害者全員が利用できるわけではなく、以下の要件のいずれかを満たさなければなりません。
- 日本国内において石綿を吸ったことにより指定疾病(中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚)にかかった旨の認定を受けている
- 指定疾病にかかって死亡した者の遺族である旨の認定を受けている
そのため、アスベストによる症状が発症していても、指定疾病以外であれば、補償を受けることはできません。
指定疾病にかかっている方やその遺族は、独立行政法人環境再生保全機構及び環境省地方環境事務所や、各地域の保健所の窓口で申請してみましょう。
(3)建設アスベスト給付金
建設業務に従事して、アスベストの被害に遭った方は、建設アスベスト給付金制度を利用できます。
ただし、建設アスベスト給付金の申請が認定されるには、以下の3つの要件を満たすことがポイントです。
- 以下の期間に該当業務に従事していること
期間 | 業務 |
昭和47年10月1日から昭和50年9月30日 | 石綿の吹付け作業に係る建設業務 |
昭和50年10月1日から平成16年9月30日 | 一定の屋内作業場で行われた作業に係る建設業務 |
- 実際に石綿関連疾病(中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺(じん肺管理区分が管理2~4)、良性石綿胸水)にかかっていること
- 労働者や一人親方(労働者を雇用せずに自分自身と家族などだけで事業を行う事業主)、中小事業主(家族従事者等を含む)であること
業務によって該当期間が異なる点に注意しつつ、該当者は厚生労働省労働基準局労災管理課に必要書類を提出しましょう。
なお、申請が可能な人は限られており、アスベスト被害者本人かその遺族のうち、配偶者や子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹が給付金を受け取れます。
申請の認定通知は、申請者本人が受け取る必要があるため、申請者が認定通知を受け取る前に亡くなった場合は、再度申請しなおす必要があります。
2.工場型アスベストの被害を受けた場合の対応
工場勤務でアスベストの被害に遭った方は、国に対して訴訟を提起することで和解金という形で賠償金を受け取ることが可能です。
訴訟を提起して和解が認められるには、以下の3つの要件を満たすことが求められます。
- 昭和33年5月26日から昭和46年4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、石綿粉じんにばく露する作業に従事したこと
- その結果、石綿による一定の健康被害(石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚など)を被ったこと
- 提訴の時期が損害賠償請求権の期間内(石綿の病気の確定診断、死亡、労災認定またはじん肺管理区分決定から20年以内)であること
業務従事期間が昭和33年5月26日から昭和46年4月28日までに限定されているため、この期間に従事していなければ、上記の和解基準では解決ができなくなります。
ちなみに、上記の要件をクリアしていることを証明するには、以下の書類を揃える必要があります。
必要書類 | 発行元 |
被保険者記録照会回答票 | 日本年金機構 |
じん肺管理区分決定通知書 | 都道府県労働局長 |
労災保険給付支給決定通知書 | 労働基準監督署長 |
診断書 | 医療機関 |
まとめ
アスベストの被害者を救済する目的として、いくつかの補償制度が設けられています。
労災保険で給付を受けるのが一般的ですが、対象外の方でも石綿健康被害救済制度を利用できる可能性があることを押さえておきましょう。
また、建設型アスベストや工場型アスベストによって健康被害を受けた方は、給付金申請や訴訟提起によって賠償金を受給できるケースがあります。
事案によって認められない場合もあるため、アスベストの被害に遭った方は一度弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人みずきでは、アスベストに関する相談を受け付けていますので、お気軽にご相談ください。
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