アスベスト訴訟で受け取れる賠償金額は?アスベスト被害の種類と請求対象者
「アスベスト訴訟でどのくらいの賠償金をもらえるのか?」
「アスベスト訴訟を提起できるのはどんな人なのか?」
アスベストの被害に遭って大変な思いをされている方の中には、国に対して訴訟を提起しようと検討している方もいるのではないでしょうか。
実は、アスベストの被害に遭っているすべての人が国に賠償金を請求できるわけではありません。
アスベスト被害の種類に応じて賠償金の請求の流れが異なります。
本記事では、アスベスト被害の種類や賠償金の請求対象者、請求できる賠償金についてご紹介します。
1.アスベスト被害の種類
アスベスト被害の種類は、大きく分けて工場型と建設型の2つです。
主にどこで働いていたかで被害の種類が異なり、賠償金の請求方法が変わります。
それぞれ具体的にご説明するので、どちらに該当するのかチェックしてみてください。
(1)工場型
工場型は、石綿(アスベスト)が含まれる製品を製造する工場で働いていた人が該当します。
環境省によってアスベストを含む家庭用の製品に関する注意喚起があり、経済産業省の調査で、1960年代までに製造された家庭用品の中にアスベストが使われていることが判明しています。
アスベストが含まれている家庭用品の例は以下のとおりです。
- トースター
- オーブンレンジ
- 電気ポット
- 冷蔵庫
- 洗濯機
- アイロン
- 掃除機
- エアコンなど
アスベストを含む製品を製造していた方で健康被害を受けている方は、訴訟を提起すれば賠償金を請求することができます。
(2)建設型
建設型は、石綿にさらされる建設現場等で働いていた人が該当します。
業務中に石綿を吸入したことが原因で、アスベストに関する疾病にかかった方は、建設型の被害に遭ったといえるでしょう。
建設型のアスベスト被害に関しては、過去に建設アスベスト訴訟で最高裁判決等において国の責任が認められています。
この判決を受けて令和3年6月9日に、特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律が成立しました。
そのため、工場型のように訴訟を提起しなくとも、申請手続きをすることによって給付金を得られることになります。
2.賠償金及び給付金を得るための要件
アスベストの被害は多数に上っているため、個別の訴訟手続きを経ずに一定の要件を満たす場合には和解金や給付金を受けられる仕組みづくりが進んでいます。
工場型と建設型では、条件は異なります。
各条件についてご紹介するので、ご自身やご家族が該当するかチェックしてみましょう。
(1)工場型における請求対象者
工場型の被害者の場合、国が示す和解要件は以下の3つの条件全てに該当することです。
- 昭和33年5月26日から昭和46年4月28日までの間に、アスベスト(石綿)を取り扱う工場等において作業に従事していた
- 中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚など石綿による健康被害を被った
- 提訴の時期が損害賠償請求権の期間内である
アスベストによる健康被害を被っていることや請求期間内であることは当然ですが、特に注目しなければならない点は、「昭和33年5月26日から昭和46年4月28日」の期間内に働いていることです。
つまり、アスベストの被害に遭っていても、昭和33年5月25日以前、または昭和46年4月29日以降にしか働いていない方は、賠償金を請求できないということになります。
工場型の場合は、従事期間を確認しておきましょう。
(2)建設型における請求対象者
建設型の場合も3つの条件をクリアする必要があります。
給付金を請求するための条件は以下のとおりです。
- 昭和50年10月1日から平成16年9月30日までの間に、一定の屋内作業場で建設業務に従事していた労働者や一人親方・中小事業主(家族従事者等を含む)である
※吹付作業の場合は昭和47年10月1日から昭和50年9月30日まで
- 石綿肺、中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水といった石綿関連疾病を発症した
- 石綿関連疾病にかかった旨の医師の診断日又は石綿肺に係るじん肺管理区分の決定日(石綿関連疾病により死亡したときは、死亡日)から20年経過していない
建設型は対象期間が長く、最近まで従事していた方も対象になるので、工場型に比べると請求できる人は多い傾向があります。
アスベストの被害を受けた方は、上記の期間に従事していたかどうか確認しましょう。
3.アスベスト訴訟によって請求できる賠償金
工場型はアスベスト訴訟によって賠償金を請求でき、建設型はアスベスト給付金の申請をすることが可能です。
いずれの場合も、アスベストによる疾病の被害の大きさによって金額が変動します。
それぞれの請求できる金額についてご紹介するので、どのくらいの金額を受け取れるのか確認してみましょう。
(1)工場型
工場型の場合は、アスベスト訴訟を提起することで、国から和解金として賠償金が支給されます。
支給される賠償金は、以下のとおりです。
被害者本人が請求する場合 | |
病態区分 | 金額 |
---|---|
石綿肺 (管理2) 合併症なし | 550万円 |
石綿肺 (管理2) 合併症あり | 700万円 |
石綿肺 (管理3) 合併症なし | 800万円 |
石綿肺 (管理3) 合併症あり | 950万円 |
中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺 (管理4)、良性石綿胸水である者 | 1,150万円 |
被害者の遺族が請求する場合 | |
病態区分 | 金額 |
---|---|
石綿肺 (管理2) 合併症なし | 1,200万円 |
石綿肺 (管理2) 合併症あり | 1,300万円 |
石綿肺 (管理3) 合併症なし | 1,200万円 |
石綿肺 (管理3) 合併症あり | 1,300万円 |
中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺 (管理4)、良性石綿胸水である者 | 1,300万円 |
場合によっては、遅延損害金が別に支払われることがあります。
医師による診断結果をもとに、どの区分に該当するか確認しましょう。
(2)建設型
建設型の場合は、アスベスト訴訟を提起するのではなく、法律に基づいて給付金を請求する形で賠償金を受け取ります。
正規の手続を取ることで、以下の給付金を受け取ることが可能です。
被害者本人が請求する場合 | |
病態区分 | 金額 |
---|---|
石綿肺 (管理2) 合併症なし | 550万円 |
石綿肺 (管理2) 合併症あり | 700万円 |
石綿肺 (管理3) 合併症なし | 800万円 |
石綿肺 (管理3) 合併症あり | 950万円 |
中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺 (管理4)、良性石綿胸水である者 | 1,150万円 |
被害者の遺族が請求する場合 | |
病態区分 | 金額 |
---|---|
石綿肺 (管理2) 合併症なし | 1,200万円 |
石綿肺 (管理2) 合併症あり | 1,300万円 |
石綿肺 (管理3) 合併症なし | 1,200万円 |
石綿肺 (管理3) 合併症あり | 1,300万円 |
中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺 (管理4)、良性石綿胸水である者 | 1,300万円 |
給付金は、工場型のアスベスト訴訟で請求できる和解金と同じです。
ただし、給付金の場合は、肺がんで喫煙歴がある方や一定の短期ばく露の方は給付金が10%減額される場合があります。
また、症状が進行した場合や死亡した場合は、追加で給付金を請求できる点が異なるので覚えておきましょう。
まとめ
工場型の場合はアスベスト訴訟を提起することで賠償金を受け取れますが、建設型の場合は給付金を請求することで支給を受けられます。
ただし、すべてのアスベスト被害者に対して認められるわけではありません。
自身が要件に該当するか判断するのが難しい方は、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士法人みずきでは、アスベスト被害に関する相談も受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。
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