建設アスベストの被害者のための補償制度とは?給付金の受給要件と請求の流れ
「建設アスベストの被害に遭ったらどんな補償制度があるのか」
「建設アスベストの補償を受けるにはどうしたらいいのか」
建設アスベストの被害に遭った方の中には、どのような補償制度があるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、建設アスベストの補償制度についてご紹介します。
1.アスベストの補償制度
アスベストの被害者は、いくつかの補償制度を利用できます。
主な補償制度は以下の3つです。
- 建設アスベスト給付金
- 労災保険
- 石綿健康被害救済制度
どのような補償制度を受けられるのか確認してみましょう。
(1)建設アスベスト給付金
特定の要件を満たした被害者は、建設アスベスト給付金を受給することができます。
建設アスベスト給付金とは、建設現場の労働でアスベストによる病気にかかった方やその遺族に対して国から支給される補償金です。
2021年6月9日に、「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が成立し、2022年1月19日から完全施行されました。
建設アスベスト給付金の受給資格者は、石綿関連疾病にかかった旨の医師の診断日又は石綿肺に係るじん肺管理区分の決定日(石綿関連疾病により死亡したときは、死亡日)から20年以内に請求しなければなりません。
給付金を請求するためには手続に時間がかかるので、期間の猶予はありますが早めに手続に取り掛かりましょう。
(2)労災保険
勤務中の被災の場合は、労災保険給付を受給することもできます。
ただし、受給するためには以下の2点を満たしていなければなりません。
アスベスト健康被害(石綿肺、中皮腫、肺がん、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚など)を発症している
労働者としてアスベストを取り扱う仕事に従事していたことによって、アスベスト健康被害を発症したことが認められる
アスベストによる健康被害を被っていることが前提で、労働者として行った従事内容が原因でアスベスト健康被害を発症している必要があります。
該当者は、労働基準監督署長に必要な書類を提出して、労災保険を受給しましょう。
(3)石綿健康被害救済制度
石綿健康被害救済制度は、労災保険の適用を受けられない方を救済するための補償制度です。
労災保険の対象外の方や、対象だったが労災保険を受給できなくなった方は、石綿健康被害救済制度を利用しましょう。
なお、この制度による給付を受けるためには、以下の要件を満たさなければなりません。
日本国内において石綿により指定疾病にかかった旨の認定を受けている
指定疾病(中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚など)にかかって死亡した者の遺族である旨の認定を受けている(遺族の場合)
つまり、日本でアスベストによる健康被害を受けた方であれば、受給できる可能性があります。
2.建設アスベスト給付金の受給要件
ここでは、建設アスベスト給付金の受給要件について詳しくご説明します。
給付金の受給要件は以下の3つです。
- 以下の期間に該当業務に従事していること
期間 | 業務 |
---|---|
昭和47年10月1日から昭和50年9月30日 | 石綿の吹付け作業に係る建設業務 |
昭和50年10月1日から平成16年9月30日 | 一定の屋内作業場で行われた作業に係る建設業務 |
- 実際に石綿関連疾病(中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺(じん肺管理区分が管理2~4)、良性石綿胸水など)にかかっていること
- 労働者や一人親方(労働者を雇用せずに自分自身と家族などだけで事業を行う事業主)、中小事業主(家族従事者等を含む)であること
特に注意しなければならないのは、アスベスト健康被害を被る原因となった労働従事期間が定められている点です。
つまり、上記以外の期間で建設アスベストの健康被害を被った方は、受給要件を満たしていないことになります。
建設アスベストの受給要件を満たしているかご自身で判断ができないときは、弁護士に相談してみるとよいでしょう。
3.建設アスベスト給付金の支給金額
建設アスベスト給付金の支給金額は、症状によって定められています。
被災者本人がご健在の場合は、支給金額は以下のとおりです。
被害者本人が請求する場合 | |
病態区分 | 金額 |
---|---|
石綿肺 (管理2) 合併症なし | 550万円 |
石綿肺 (管理2) 合併症あり | 700万円 |
石綿肺 (管理3) 合併症なし | 800万円 |
石綿肺 (管理3) 合併症あり | 950万円 |
中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺 (管理4)、良性石綿胸水である者 | 1,150万円 |
被災者が建設アスベストによる症状によってお亡くなりになった場合は、遺族は以下の給付金を受給することができます。
病態区分 | 金額 |
---|---|
石綿肺 (管理2) 合併症なし | 1,200万円 |
石綿肺 (管理2) 合併症あり | 1,300万円 |
石綿肺 (管理3) 合併症なし | 1,200万円 |
石綿肺 (管理3) 合併症あり | 1,300万円 |
中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺 (管理4)、良性石綿胸水である者 | 1,300万円 |
なお、建設アスベストによる被災者が石綿関連疾病による症状以外の原因でお亡くなりになった場合は、上記の表に従い550万円から1150万円が認定される可能性があります。
4.建設アスベスト給付金の請求の流れ
建設アスベスト給付金の請求の流れについてご紹介します。
給付金の申請内容は、労災認定を受けているかどうかで変わる点に注意しましょう。
2つのパターンをご説明するので、請求手続の参考にしてください。
(1)労災認定あり
労災認定ありの方は、労災支給決定等情報提供サービスを受けることで簡単に給付金を請求することができます。
労災支給決定等情報提供サービスとは、厚生労働省が建設アスベスト給付金の請求手続を簡易的にするために実施しているサービスです。
このサービスを利用することで、添付書類の一部省略など、手続の負担を軽減できます。
具体的に必要な書類は以下のとおりです。
- 請求書
- 通知書のコピー
- 死亡届の記載事項証明書(請求者が遺族の場合)
- 金融口座の通帳やキャッシュカードの写し
ただし、別の書類の提出を求められることもあるので、一通り「建設アスベスト給付金請求の手引き①」に目を通しておきましょう。
(2)労災認定なし
労災認定なしの方は、ありに比べて提出書類が多くなります。
原則必須といわれている書類は以下のとおりです。
- 請求書
- 住民票の写し等
- 戸籍謄本等(請求者が遺族の場合)
- 死亡届の記載事項証明書(請求者が遺族の場合)
- 被災者の就業歴・石綿ばく露作業歴の分かる資料
- 請求する区分の石綿関連疾病に罹患していることを証明する資料
- 金融口座の通帳やキャッシュカードの写し
住民票の写しやアスベスト被害を証明する書類等が必要になります。
労災認定なしの方はとりあえず「建設アスベスト給付金請求の手引き②」をチェックして、必要書類を一通り確認しておきましょう。
なお、労災認定なしの方でも労災申請が可能な場合があります。
どちらかはっきりしていない方は弁護士に相談のうえ、労災認定の有無を調べてもらうことをおすすめします。
まとめ
建設アスベストによる被害者のためにいくつもの補償制度が設けられています。
特に建設アスベスト給付金の受給要件を満たしている場合は、高額な補償を受けられる可能性が高いです。
あわせて労災保険や石綿健康被害救済制度も確認して、どのような補償を受けられるか調べてみましょう。
弁護士法人みずきでは、建設アスベストに関する相談を無料で受け付けております。
補償制度等でお悩みの方はお気軽にご相談ください。
関連記事