アスベスト給付金の対象者とは?給付金を請求できる人と追加給付金の対象者
「アスベスト給付金って誰が請求できるのか?」
「アスベスト給付金は被災者以外には請求できないのか?」
アスベストの被害に苦しんでいる方やそのご家族の中には、アスベスト給付金が請求できるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、アスベスト給付金の対象者や誰が請求できるのかご紹介します。
1.アスベスト給付金の対象条件
アスベスト給付金の対象条件は、厚生労働省のHPに明記されています。
給付金を請求するには、以下の3つの条件すべてを満たさなければなりません。
- 以下の期間に該当業務に従事していること
期間 | 業務 |
---|---|
昭和47年10月1日から昭和50年9月30日 | 石綿の吹付け作業に係る建設業務 |
昭和50年10月1日から平成16年9月30日 | 一定の屋内作業場で行われた作業に係る建設業務 |
- 実際に石綿関連疾病にかかっていること
- 労働者や一人親方(労働者を雇用せずに自分自身と家族などだけで事業を行う事業主)、中小事業主(家族従事者等を含む)であること
ちなみに、石綿関連疾病とは、以下の病気が該当します。
- 中皮腫
- 肺がん
- 著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚
- 石綿肺(じん肺管理区分が管理2~4)
- 良性石綿胸水
医師の診断を受け、上記の病名を宣告された方で、該当期間石綿にさらされる建設業務を行った方は、アスベスト給付金を請求できる可能性が高いです。
2.アスベスト給付金を請求できる人
アスベスト給付金を請求できる人は、被災者本人だけではありません。
被災者本人が無くなっている場合は、給付金の請求権は遺族に渡ります。
ただし、配偶者(事実婚含む)や子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹に限るので、従兄弟や叔父叔母は請求対象には該当しません。
また、遺族が複数いる場合は、上記の順番どおりに優先権があります。
たとえば、遺族が配偶者と父母の場合は、配偶者に請求権が移り、父母は給付金を請求できません。
請求者の優先権を確認するために、戸籍謄本等の提出が求められるので、遺族が請求する場合は事前に用意しておきましょう。
3.追加給付金の対象者
アスベスト給付金は、いくつかの条件を満たせば追加請求できます。
満たすべき条件は以下の4つすべてです。
- すでに給付金の支給を受けていること
- 被災者が、吸入した石綿により症状が重くなったなどにより、病態区分が変わったこと
- 請求期限を過ぎていないこと
- 請求者が、労働者・中小事業主・一人親方・家族従事者等・遺族のいずれかに当てはまること
給付金は病態区分によって受け取れる給付金が異なり、症状が重くなるほど支給額は高くなりますが、追加給付の場合、変更後の病態区分の支給額からすでに受け取っている金額が差し引かれた形で支給されます。
アスベスト給付金として受け取れる金額は以下の表のとおりです。
被害者本人が請求する場合 | |
病態区分 | 金額 |
---|---|
石綿肺 (管理2) 合併症なし | 550万円 |
石綿肺 (管理2) 合併症あり | 700万円 |
石綿肺 (管理3) 合併症なし | 800万円 |
石綿肺 (管理3) 合併症あり | 950万円 |
中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺 (管理4)、良性石綿胸水である者 | 1,150万円 |
被害者の遺族が請求する場合 | |
病態区分 | 金額 |
---|---|
石綿肺 (管理2) 合併症なし | 1,200万円 |
石綿肺 (管理2) 合併症あり | 1,300万円 |
石綿肺 (管理3) 合併症なし | 1,200万円 |
石綿肺 (管理3) 合併症あり | 1,300万円 |
中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺 (管理4)、良性石綿胸水である者 | 1,300万円 |
たとえば、被災者が存命で、「石綿肺 (管理2)合併症なし」から「石綿肺 (管理3) 合併症なし」に病態区分が変わったとします。
この場合、すでに「石綿肺 (管理2)合併症なし」に該当する給付金を受け取っていれば、追加請求をすることが可能です。
追加請求できる金額は「石綿肺 (管理3)合併症なし」に該当する800万円ではなく、800万円から550万円が控除された250万円となります。
変わった先の病態区分に該当する給付金を満額受け取れるわけではないので注意しましょう。
4.アスベスト給付金の請求方法
アスベスト給付金を請求するには、厚生労働省労働基準局労災管理課に必要な書類を提出する必要があります。
手続に必要な書類は、労災支給決定等情報提供サービス(建設アスベスト給付金の請求手続の利便性を図るために設けられたサービス)の利用の有無で異なるため、不備がないように確認することが大切です。
揃えるべき書類は、「建設アスベスト給付金請求の手引き」に明記されています。
労災支給決定等情報提供サービスの利用者は手引き①を、利用していない方は手引き②を確認しましょう。
ちなみに、給付金を追加請求する場合も必要な書類が異なるため、この場合は手引き③をご参照ください。
5.請求者が亡くなったときの注意点
アスベスト給付金の請求者が厚生労働省から認定通知を受け取る前に死亡した場合は、申請が無効になります。
必要な書類を提出すると、認定審査会の審査を経て厚生労働省から認定結果が送られてきますが、その認定通知を請求者以外が受け取ることは認められておりません。
厚生労働省は請求者と直接連絡を取る決まりになっているので、請求者が亡くなった場合は、新たに別の者が請求しなおす必要があります。
万が一、請求者が認定通知を受け取る前に亡くなった場合は、遺族は至急労災保険相談ダイヤルに請求者が死亡した旨を伝えて、再度申請手続を行いましょう。
まとめ
アスベスト給付金を請求するには、一定の期間石綿にさらされる建設業務を行う必要があり、アスベストによる症状が発生していなければなりません。
また、被災者本人が亡くなった場合は遺族に請求権が移りますが、すべての遺族が請求できるわけではなく、配偶者(事実婚含む)や子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹までと限りがあります。
症状が重くなれば追加請求も可能になり、また、労災支給決定等情報提供サービスの利用の有無によって手続に必要な書類が変わるため、建設アスベスト給付金請求の手引きを入念に確認しましょう。
必要書類の収集や、給付金請求の手続に不安のある方は、弁護士法人みずきでご相談を承っておりますので、お気軽にご相談ください。
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