浮気・不倫の慰謝料請求は弁護士なしでできる?弁護士に相談するメリットを解説
夫(妻)の浮気が分かった場合、不倫相手に慰謝料請求したいとお考えの方も多いかと思います。
しかし、いざ弁護士を立てようと思うとその費用が気になって依頼を躊躇する方もいるのではないでしょうか。
結論としては不倫慰謝料の請求は、弁護士をつけなくても行うことができます。
ただし、ご自身で請求するためには、相手との直接のやり取りをすることや法的にやってよいこといけないことを調べることが必要です。
この記事では、弁護士を立てずに慰謝料を請求する場合、どのような負担があるか、またご自身で慰謝料請求する場合のポイントについても解説します。
慰謝料請求をご検討中の方にとって、弁護士に依頼をするかどうかご検討の材料になればと思います。
1.不倫の慰謝料はなぜ請求できるのか
そもそもなぜ、不倫をされた場合に、慰謝料を請求できるのでしょうか?
不倫は、夫婦関係に重大な悪い影響を与える行為です。
つまり、民法上の不法行為にあたります。
不倫の慰謝料請求とは、不倫された側が不法行為を行った夫(妻)や不倫相手に対して、精神的な損害を賠償させるものです。
ここでは、不倫相手に対する慰謝料請求を取り上げます。
このとき、請求する側は、不倫相手の不法行為(すなわち不倫があったこと)の証拠を集め、証明しなければなりません。
不法行為といえる不倫は、不倫当事者の二人に肉体関係があることをいいます。
そのため、不倫慰謝料を請求するためには、ご自身の配偶者と、浮気相手の間に肉体関係があったことを、証拠によって証明する必要があります。
2.慰謝料請求は弁護士を使わずにできるのか
慰謝料請求は自分で行うことができます。
ただし、下記のような場合は、請求が難しく注意が必要になるため、一度弁護士にご相談されることをおすすめします。
(1)不倫の開始時、夫婦間の婚姻関係がすでに破綻していた
不倫が始まった時点で、すでにあなたと配偶者の夫婦関係が破綻していた場合です。
「破綻している」とは、例えば、別居状態が何年も続いている、お互いに離婚に向けて協議を続けていたなど、婚姻関係が修復不可能な状態をいいます。
(2)時効が成立している
不倫慰謝料請求権には時効があります。
不倫の事実および不倫相手を特定できてから3年、不貞行為から20年が経過している場合、時効が成立します。
(3)夫(妻)または不倫相手から相当額の賠償を受けている
夫(妻)または不倫相手からすでに相当額の慰謝料を受け取っている場合をいいます。
(4)不倫相手に故意・過失が認められない
不倫相手が、夫(妻)が既婚者であることを知らず、または知らなかったことに過失がないケースです。
例えば、不倫をしている配偶者が不倫相手に対して、独身であると嘘をついているケースなどをいいます。
3.不倫の慰謝料請求の方法
では、具体的に不倫相手に慰謝料請求する場合の流れをご説明します。
(1)証拠を集める
不倫慰謝料請求を行うためには、証拠集めが大切です。
慰謝料を請求できる不倫とは、あなたの配偶者と不倫相手の間に肉体関係があることを言います。
したがって、不倫慰謝料を請求するためには、あなたの配偶者と不倫相手の間に肉体関係があったことを証明する証拠を集める必要があります。
証拠となるのは、肉体関係があったことを客観的に裏付ける写真やメール、SNS、動画、不倫を自白した録音などです。
その他領収書やクレジットカード明細、通話履歴といったものも証拠になる可能性があります。
ただし証拠を集める際には、注意が必要です。
プライバシーを侵害したり、人道に反するような方法で収集した証拠は、裁判では使えないケースがあります。
慰謝料請求が示談交渉でまとまらず、裁判に至った場合、裁判で使えないとなると、不倫を証明することができなくなります。
(2)請求金額を決める
不倫の証拠を集めることができたら、相手方に慰謝料の請求を行います。
不倫慰謝料は、これまでの裁判例で認められてきた一定の目安、相場があります。
不倫相手に慰謝料を請求する場合、相場よりも高額な慰謝料を請求してしまうと、相手方が裁判に持ち込むなどのデメリットがあります。
ここでは、裁判で認められることが多い金額の目安と相場をご紹介します。
ここで示した相場で、あなたの精神的苦痛のすべてを賠償できるものではないかもしれません。
しかし、相場を意識して相手方に請求することで、早期に問題を解決することができ場合があります。
#1:不倫慰謝料の相場
不倫慰謝料の相場は、不倫をした配偶者と離婚するかどうかで大きく2つに分かれます。
① 不倫した配偶者と離婚しない場合 50~100万円
② 不倫した配偶者と離婚する場合 100~200万円
#2:相場より増額する・減額するケース
下記の場合には、上慰謝料の計算において、相場よりも増額または減額されるケースがあります。
① あなたと配偶者の婚姻期間の長短
夫婦の婚姻期間が長い場合、不倫をされた側はそれによって受けた精神的苦痛も大きいと判断されます。
したがって、婚姻期間が長ければ慰謝料は増額し、短いと慰謝料は減額されます。
過去の裁判例で、夫婦の「3年」の婚姻期間を短いと判断したものがあります。
また、婚姻期間が「15年以上」になると長いと評価されたケースがあります。
② 不倫開始時に不倫相手とその配偶者の夫婦関係が円満であったかどうか
不倫慰謝料は、あなたとあなたの配偶者の夫婦関係を悪化させたことによる精神的苦痛を賠償するものです。
したがって、先述した通り、そもそも不倫の時点で夫婦関係が破綻していた場合は、慰謝料請求自体が困難になります。
また、破綻とまではいかなくとも、夫婦関係が「円満ではなかった」と評される場合は、慰謝料が減額される場合があります。
③ 夫婦に未成熟の子がいる場合
あなたとあなたの配偶者に未成熟の子がいた場合は、慰謝料が増額される場合があります。
④ 不倫を継続していた期間
あなたの配偶者と不倫相手が不倫を行っていた期間が長ければ、慰謝料は増額し、短ければ慰謝料は減額されます。
過去の裁判例において、不倫の期間が「短い」と判断されるのは、2~3か月程度といわれています。
⑤ 不倫の末に不倫相手との間に子ができてしまった場合
あなたの配偶者と不倫相手が不倫の末に子ができてしまった場合、慰謝料は相場よりも増額するケースがあります。
(3) 請求金額を相手方に書面で通知する
請求金額がきまったら、内容証明付郵便で相手方に通知書を出ししましょう。
ただし、通知書の送付自体に支払いを強制する効力はありません。
内容証明付郵便で請求をすることによって、請求が本気であると相手方に伝えることができます。
また、裁判になった際、慰謝料を請求するために行動したという有力な証拠になる、というメリットがあります。
(4) 合意ができたら示談書を取り交わす
慰謝料の支払いについて相手方と合意ができたら、金額やその他の条件を記載した示談書を取り交わします。
その後、示談した内容について相手が支払い等の義務を果たせば終結となります。
(5) 話合いがまとまらない場合は、裁判を検討する
相手と慰謝料の支払いなどの条件で折り合わなかった場合、訴訟を提起して裁判上の請求に切り替えることを検討する必要があります。
訴訟を提起する際は、裁判所に対して、訴状や不倫・不貞の証拠などを提出します。
裁判で慰謝料請求する一番のメリットは「判決に法的強制力がある」ということです。
これは、裁判で、あなたの慰謝料請求が認められた場合、たとえ相手が支払いに応じなくても強制的に相手方の財産を差し押さえることが可能になる、ということです。
4.自分で慰謝料請求するときの2つのポイント
ここまで、弁護士を入れずに、慰謝料を請求する場合の流れを説明しました。
ここでは、請求を行う際にポイントなる点を解説します。
(1)話し合いで請求する場合
慰謝料の請求は、まず相手方との話し合いから始めるケースが多いです。
裁判に至る前、話し合いで、慰謝料の額等が合意できれば、お互いに早期に解決できるというメリットがあります。
ここでは、話し合いで交渉を行際のポイントを説明します。
#1:不倫相手とは直接会わない、書面やメールでやり取りをする
問題の性質上、両当事者が直接対応しても冷静に解決することは難しい場合が少なくありません。
面談の中で感情的になった結果、あなたが行った不用意な発言によって後々の慰謝料交渉の際に不利になることもあります。
また、不利な録音が取られてしまうこともあります。
そのため、不倫相手とのやり取りは書面やメール等によって進めていくことをお勧めします。
#2:不倫相手が無視する場合は内容証明付郵便で請求を行う
不倫相手が、こちら側の書面やメールを無視するといった場合は、郵便局に内容と送付の記録が残る内容証明付郵便の送付が有効です。
相手方に支払う義務が発生するなどの効果はありませんが、交渉の場に立たせることができる等といったプレッシャーをかけるという意味で効果的といえます。
#3:示談が成立したら書面化する
示談交渉の結果、相手方が不倫を認めて「慰謝料を支払う」と言った場合、「示談書」を作成しましょう。
示談書を作成しておくことで、後々言った・言わない問題を防ぐことができます。
#4:過剰な請求は交渉失敗の原因になる
不倫が発覚したとき、夫(妻)が不倫相手に対し感情的になり金銭以外の内容を過剰請求してしまうケースがあります。
内容によっては、交渉失敗の原因となってしまいます。例えば下記のようなケースです。
① 謝罪の強要
不倫された側からすると不倫相手に謝罪をしてほしいという思いは当然な感情かと思います。
ただ、法律では謝罪というものは強要できないことになっています。
そのため、仮に相手が謝罪することを拒否した場合、こちらが土下座の強要など、あまりに強い態度に出てしまうと、逆に罪に問われる可能性があります。
② 不倫相手の家族や勤務先などに押しかける
不倫相手の家や勤務先に直接出向いたり、または電話をして不貞行為の事実をばらす
③ 不倫相手の両親に慰謝料を請求する
慰謝料を支払う責任があるのは、不倫相手です。不倫相手の両親に慰謝料を請求することはできません。
#5:金額が高すぎる場合のデメリット
不倫により傷ついたからといって、あまりに過剰な金額を慰謝料として請求してしまうと、相手の反感を買ってしまう可能性があります。
心の痛みは確かに金額換算が難しいものです。
しかし、請求する金額によっては不倫相手から「高すぎる」と反論される可能性があります。
よって、慰謝料請求を話し合いでスムーズにまとめたい場合は、過剰な金額を請求するのはマイナスになるため注意する必要があります。
(2)裁判による請求は有効か
不倫慰謝料請求において、話し合いや調停が成立しない場合、訴訟を起こし裁判を行うことになります。
裁判にて慰謝料請求をするメリットとして、不貞行為の事実をハッキリさせることができる、また適正な慰謝料金額を決めることができる。
さらに、不倫相手が慰謝料を支払わなければ強制執行を行うことができる。
反対にデメリットもあります。
まず、裁判を起こすとその分の時間と費用がかかること、そのうえ、手続きも複雑で弁護士等の専門家を立てないと請求が難しいことなどが挙げられます。
では、不倫裁判は実際にどのような流れで行われるのでしょうか。
#1:弁護士への相談、依頼(委任契約)
裁判の手続きや書類の準備は、法的な知識がないと、精神的にも時間的にも負担が大きくなります。
そのため、早い段階で弁護士に相談、また依頼することが望ましいです。
#2:裁判所へ訴状を提出
裁判を起こす場合、まずは訴状を裁判所に提出します。
訴状とは、不倫相手の情報や不倫の内容、相手方に要求するものを記載した書面です。
#3:裁判の進行
第一回口頭弁論期日として指定された日時に裁判所へ出廷します。
裁判では、請求する側の主張に対して相手側が反論してきます。
そのため、一回で終わることはほとんどなく、複数回繰り返されるケースが多いです。
#4:和解、判決
お互いの主張や証拠が出そろったら、裁判所は和解による解決を提案してくることがほとんどです。
和解案に双方が同意すれば裁判が終了となります。
和解は、判決と同等の効力があるため、不倫相手が和解の内容に従わず慰謝料の支払いを拒否した場合は、和解内容に従い、財産を差し押さえることができます。
なお、和解が成立しない場合は、裁判官が判決を言い渡します。
判決で慰謝料の支払いが確定すると、不倫相手は必ず慰謝料を支払いわなければなりません。
5.自分で慰謝料請求する際の4つのリスク
ここまで、弁護士を入れずに慰謝料を請求する場合のポイントと慰謝料の相場等について説明しました。
弁護士費用の負担がないというメリットの反面、下記のようなリスクがありますので注意が必要です。
(1)相手方が弁護士を付けてきたときに不利になる場合がある
相手方が弁護士を立てた場合、自分で交渉することが困難になります。
(2)書面化する際に必要な事項を入れ忘れる可能性がある
文書作成に慣れていないため、話し合いの結論を文書として残すことが困難なこともあります。
また、文書を残したとしても、個人で作成した文書であることから、不倫相手から「約束していない」「慰謝料を捏造している」などと言われてトラブルになる場合があります。
(3)裁判になった際に不利になる場合がある
裁判などに慣れていないため手続きに手間取ってしまう可能性があります。
手続きに時間がかかると、その分慰謝料を受け取るまでに時間を要します。
(4)相手方が無視をし続ける場合がある
弁護士を入れずに不倫慰謝料請求をする場合、不倫相手は請求する側の本気度が伝わらず、無視されることがあります。
こういったケースでは、弁護士を立てることで、不倫相手にプレッシャーをかけることができます。
6.慰謝料請求を弁護士に依頼する場合の4つのメリット
弁護士を入れずに慰謝料請求する場合のリスクについて説明しました。
慰謝料請求において弁護士を立て行うことで、上記に述べたリスクを軽減できるほかに、下記のメリットがあります。
(1)精神的な負担を減らすことができる
不倫相手との直接の交渉は怒りやショックから精神的に大きな負担になります。
法律の専門家である弁護士が代理人となることで相手方との交渉を弁護士が行うことができあます。
また法律の専門家が味方になる、という面での心強さも感じていただけることと思います。
(2)時間や労力を減らすことができる。書面作成や交渉、やり取り。
弁護士を間に挟み交渉することによって相手方と直接顔を合わせてやり取りする機会が減り、ストレスを抑えることができます。
(3)証拠集めのアドバイスを得られる
弁護士にご依頼いただくことで、適正な慰謝料の請求ができます。
さらに、配偶者の不貞行為に関する証拠の整理、収集についてもアドバイスを受けることができるでしょう。
(4)裁判になってもスムーズに対応できる
示談交渉がまとまらず裁判に進むことになった場合でも、交渉段階から弁護士に依頼していればそのままスムーズに進めることができます。
まとめ
この記事では、弁護士を立てずに慰謝料請求する場合のポイントとそのリスクについて説明しました。
ご自身で慰謝料請求する場合、弁護士費用を節約できる一方で、請求を失敗するリスクもあります。
不倫が発覚し、不倫相手へ慰謝料請求をする場合には早期に、そして慎重に対応を進めること、落ち着いて弁護士への相談や依頼をすることをお勧めいたします。
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