労働時間
1 労働時間とは
労基法上の労働時間とは、実労働時間のことを指します。
つまり、始業から終業までの拘束時間のうち、休憩時間を除いた時間です。
さらに、最高裁によると、労働時間とは、「使用者の指揮命令下に置かれていると評価できる時間」とされています。
指揮命令下に置かれているか否かは、就業規則の定めの如何によらず、業務性、待機性(指揮監督性)、義務性などが考慮されて、客観的に決まります。
具体例
労働時間とされているもの
- 実作業のために着用を義務付けられ、入念な作業を要する更衣や保護具の装着時間。
- 昼休み中に来客当番として待機させている時間。
- 法に基づく特殊健康診断に要する時間。
- 超過勤務の黙示の指示や超過の黙認、許容による超過した時間。
- 朝礼、ミーティング、体操が指揮監督下に義務的に行われている場合のそれに要した時間。
労働時間とされていないもの
所定時間外の研修や教育活動、企業の行事などに参加することは、就業規則上の制裁等の不利益取り扱いによる出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはならないとされています。
2 休憩時間
休憩時間とは、労働者が労働時間の途中において休息のために労働から完全に解放されることを保障されている時間をいいます(休憩時間自由利用の原則)。
したがって、休憩時間中の行動に制約を加えることは原則として認められず、合理的理由がある場合に必要最小限の制約を加えられるにすぎないと考えられています。
また、労基法上、1日の労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を、労働時間の途中に付与すべきこととされています。
また、一斉付与が原則ですが、金融、電気通信、旅館・飲食店などのサービス業については一斉付与の原則が排除されています。
3 労働時間の規制
(1)原則
労基法上、原則として、使用者は労働者を、週40時間、一日8時間を超えて働かせてはならないとされています。
また、1週間に1日の休日を付与しなければなりません。
これに反すれば、基準違反で刑事責任も発生しえます。
もっとも、一定の要件の下で、労働者に時間外・休日労働をさせることが認められています。
(2)36協定(サブロク協定)
労使協定の締結と、行政官庁への届出を経れば、時間外・休日労働をさせることができるようになります。
36協定では、以下の事項について労使間で協定する必要があります。
- 時間外又は休日労働をさせる必要がある具体的な事由
例:臨時の受注、納期変更等のため。当面の人員不足に対応するため。 - 業務の種類
- 労働者の人数
- 1日並びに1日を越え3か月以内の一定の期間及び1年間の延長時間又は労働させることができる休日
- 協定の有効期間
大部分の36協定が1年以内の期間で締結されている。
必要事項を記載した書面において締結されることを要し、かつ、労働基準監督署長への届出も必要です。
延長時間にも限度があります。
期間 | 時間外労働の上限時間 |
---|---|
1週間 | 15時間 |
2週間 | 27時間 |
4週間 | 43時間 |
1か月 | 45時間 |
2か月 | 81時間 |
3か月 | 120時間 |
1年間 | 360時間 |
このように、36協定の締結及び届出により、週40時間、1日8時間、週休1日を超える労働をさせても、直ちに違反とはなりません。
もっとも、労働者に対して協定で定められた時間外・休日労働を義務付けるものではありません。
別途、労働契約で時間外・休日労働の義務が認められていなければ、違反になってしまうので注意してください。
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