障害者の雇用に関する問題
~障害者雇用促進法~
目的:雇用義務等に基づく障害者雇用を促進する措置や職業リハビリテーションなどの措置を通じて、障害者の職業の安定を図ること(法1条)
1 障害者雇用の義務づけ(法定雇用率)
2018年4月1日からは、従業員50人以上の民間企業は、身体障害者、知的障害者又は精神障害者である労働者の数が、労働者全体の2.2%以上になるように義務付けられています。
2 「障害者」とは
身体傷害、知的障害、精神障害、その他心身の機能障害によって、
長期に渡り職業生活に相当の制限を受け、又は、職業生活を営むことが著しく困難な者
とされています。
3 障害者との雇用契約の締結
Point 障害の程度を十分に把握して契約に反映させておくことが重要
雇用契約によって、労働者は労働契約の内容に従った労務提供を企業に提供しなければならないため、それが出来なくなった場合は、労働者の債務不履行の問題となります。
もっとも、障害者の方の場合は、障害のない他の労働者と同様の健康状態や業務遂行能力を期待できない場合も多く、業務内容や職種変更、転勤等に制限がある場合が考えられます。
したがって、障害者が十分な業務遂行ができなくなった場合に、それが債務不履行に当たるのか、そもそもの雇い入れ時の障害によるものなのかの区別が困難となってしまうことがあります。
そこで、障害者との雇用契約に際しては、そのような労働能力や制限を十分に把握して、それに応じた内容(職務内容、賃金等)の雇用契約を締結することが必要です。
4 障害の悪化による労働契約の解消
Point 十分に配慮しても業務遂行が不可能かどうか
障害の程度が雇い入れ時より悪化して、雇用契約上の職務内容の遂行が不可能な状態になった場合、企業は解雇することができるでしょうか。
これについては、解雇に社会的相当性があることが必要です(労働契約法16条)。
そして、企業が解雇を避けるべく、当該障害者が労働契約上の職務を実行できるよう障害に配慮した支援をすれば、当該障害者は労働契約上の職務の遂行が可能であるといえる場合には、解雇に社会的相当性は認められない、つまり解雇は無効ということになるでしょう。
また、法定雇用率の達成は解雇の場合にも求められています(法43条1項)。したがって、法定雇用率未達成という事情は、解雇に対する制限として考慮されるでしょう。
5 雇止めは認められるか
Point 相応の支援と指導を行ったかどうか
契約期間満了で更新をしない、いわゆる「雇止め」は原則有効です。
もっとも、事業主は、「障害者である労働者が有為な職業人として自立しようとする努力に対して協力する責務を有するものであって、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るように努めなければならない」(法5条)と定められています。
つまり、企業には障害者の雇用の安定を図る努力義務があるため、合理性を欠く雇止めは違法である可能性があります。
業務改善が見られなかったことを理由にした雇止めの有効性が争われた事例(東京高判H22.5.27)
判決では、法5条の企業の努力義務にも言及した上で、法4条にも言及しています。 法4条では、障害者においても労働者として、「職業に従事する者としての自覚を持ち、自ら進んで、その能力の開発及び工場を図り、有為な職業人として自立するように努めなければならない」とされています。
これらから、法は、企業の協力と障害者の努力があいまって、社会連帯の理念が実現されることを期待している。したがって、企業が障害者の自立した業務遂行ができるよう相応の支援及び指導を行った場合は、当該障害者も業務遂行能力の向上に努力する義務を負っていると判示しました。そして、企業側が適切といえる支援や指導を行ったものの、障害者の業務状況に改善が見られない場合にやむなく雇い止めを行うことには、合理性が認められると判断しています。
具体的支援や指導について、本事例では、当該障害者の病状(うつ病)に配慮した簡易な事務に従事させたり希望に沿って定時に帰宅させたり、指導担当者をつけ、指導担当者には上司が当該障害のレクチャーをしたり、話しかけ方をやわらかくするようにと注意したりしていたことなどが適切な支援、指導であったと評価されています。
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