警察による取調べ

執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

法律は堅苦しいという印象はあるかと思います。しかし、そんなイメージに阻まれて、皆さんの問題や不安が解決されないのは残念でなりません。
私は、そんな法律の世界と皆さんを、柔和に橋渡ししたいと思っています。問題解決の第一歩は、相談から始まります。
皆様が勇気を振り絞ってご相談をしていただければ、後は私どもが皆様の緊張や不安を解消できるよう対応し、法的側面からのサポートができればと思います。敷居はバリアフリーです。あなたの不安を解消するために全力でサポート致します。

医療事故が生じると、刑事上の責任が発生する可能性があります。

そのため、警察や検察らが捜査を行うことになりますが、この際には「取調べ」がなされます。

どのような医療行為が事実としてあったのか、それが刑事上違法と評価できるのかについて判断するために、実際の医療過誤を行ったと目される医師のみならず、その治療に関わった看護師や薬剤師、麻酔科医なども取調べの対象になることが多くあります。

取調べの結果は「調書」として証拠化されることになるので、冷静に対応する必要があります。

1.取調べの一般的な流れ

取調べは、捜査機関が事情を聴取し、これを調書として証拠化することを目的として行われます。

多くの場合は、警察署や検察庁の取調室という密室で行われます。

日本では未だ、弁護士の帯同が許されておらず、基本的には一人で対応しなければなりません。

そのため、流れや注意点をわかっていないと、あれよあれよといううちに進んでいってしまい、結果として自分や医療機関に不利に働いてしまうことが考えら得ます。

取調べの多くは、以下のような流れで進行します。

取調べの流れ

①身上・経歴関係の質問
②刑事上問題となり得る点についての質問
③聴取内容を記載した調書の読み聞かせ
④調書への署名押印

質問事項が多くなりそうなときには、①と②は数日に分けて行うこともあります。

2.取調べの注意点

信用情報の回復後の注意点

取調べを受ける際には、冷静になって対応することが必要となりますが、いくつか注意点があります。

(1)事実と推測、個人的意見を区別する

日常的に話している状況では、上記の区別は意外とつけていませんが、法的判断をするための判断材料としては何よりも「事実」が大切になります。

そのため、この点は区別をして伝える必要があります。

例えば、時刻について「Aさんが来院したのは10時頃でした」という言い方は、日常会話では問題ありません。

来院した時刻の事実を示す言い方です。

しかし、そう言えるのは何故でしょうか。

「Aさんが来院したときにちょうど時計が10時のアラームの音を立てたので、10時頃でした」なのかもしれないですし、「Aさんが来院した際に9時30分に来ていたMRさんが帰っていったので、いつも大体30分くらい話して帰っていくのでおそらく10時くらいだと思いました」なのかもしれないですし、「9時の受付開始から大体1時間くらいたっていたと感じるので、10時くらいだと思いました」なのかもしれません。

自分が直接見聞きしたのは何なのか、という点が大切になってきますので、この点を区別して供述しないと、事実が歪んだ聴取がされてしまい、後々不利益が生じる可能性があります。

(2)不確実なことは断定しない

上記ともつながるところですが、不確実なことは断定をしないことも大切です。

特に、医療事故の場合、一般にいろいろな原因が想定されます。

可能な限り、事前に症例等の文献やカルテ等の記載を参照し、準備をしておくことが大切ですが、それでも不確実なことはあくまで「可能性が高い」という形で説明する必要があります。

また、捜査機関は医学の専門化ではないため、理解が不十分であることも多くあります。

可能であれば、場合わけなどしながら、確実なことと不確実なことを区別して説明する必要があります。

(3)自分の伝えたい内容でない場合には、調書にサインしない

取調べでは最終的に調書が作られます。

この調書は、目の前で読み聞かせをされて、内容を確認した上で間違いがなければ署名押印することで完成します。

この際、上記の①及び②の点がうまく伝わっていないこともあります。

例えば、「症状が発生した後から考えれば、確かに初診時にAではなくBという診断をすることも不可能ではないが、一般的ではない」という言い方をしていたとしても、調書では「初診時Bという診断も可能であった」とのみ書かれていることもあります。

このように、捜査機関が意図しているとしていないとに関わらず、伝えたい内容がうまく調書化されていないことがあり得ます。

そのため、内容の確認は慎重に行い、誤解や勘違い、言葉足らずなどがある場合には訂正を申し立て、自身が伝えたい内容を正確に表している調書を作成するべきです。

まとめ

取調べを受ける際には、冷静になって対応することが必要となりますが、いくつか注意点があります。

刑事事件化し、特に事件を争うような場合には、捜査の段階から綿密に準備をしていく必要があります。

どのような証拠や文献を集めるべきか、取調べの際にはどのように説明すべきか、検察官とはどのように交渉すべきかなど、対策を打つべき点が多数あります。

また、民事賠償の話を進めるべきか否かという点も、刑事事件の推移に関わってくることになります。

そのため、医療事故が起こった場合には、早期に当事務所の弁護士までご相談ください。

執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

法律は堅苦しいという印象はあるかと思います。しかし、そんなイメージに阻まれて、皆さんの問題や不安が解決されないのは残念でなりません。
私は、そんな法律の世界と皆さんを、柔和に橋渡ししたいと思っています。問題解決の第一歩は、相談から始まります。
皆様が勇気を振り絞ってご相談をしていただければ、後は私どもが皆様の緊張や不安を解消できるよう対応し、法的側面からのサポートができればと思います。敷居はバリアフリーです。あなたの不安を解消するために全力でサポート致します。