仮想通貨について弁護士が解説!

オンラインゲームアプリをリリースするに際して、ゲームに使用する仮想通貨を発行する企業が増えています。

身近な仮想通貨といえば、suicaなどが代表的ですが、オンラインゲームでは、「コイン」であったり、「石」や「木の実」であったりします。

ユーザーは、これらの仮想通貨を購入し、仮想通貨をゲーム内のイベントに参加したり、ゲームを有利に進めるためのアイテムを取得したりするために消費します。

このような仮想通貨は、資金決済法(資金決済に関する法律)上の「前払式支払手段」に該当します。

そのため、資金決済法の規制を受ける場合があり、また、違反した場合には罰則の適用もあります。

これからアプリをリリースし仮想通貨を利用するビジネスを始めようとする企業、また既にアプリ内で仮想通貨を発行している企業も、資金決済法上のルールを理解する必要があります。

1.前払式支払手段とは

次の4つの要件が全て備わっているものが該当します。

  1. 金額又は物品・サービスの数量(個数、本数、度数等)が、証票、電子機器その他の物(証票等)に記載され、又は電磁的な方法で記録されていること。
  2. 証票等に記載され、又は電磁的な方法で記録されている金額又は物品・サービスの数量に応ずる対価が支払われていること。
  3. 金額又は物品・サービスの数量が記載され、又は電磁的な方法で記録されている証票等や、これらの財産的価値と結びついた番号、記号その他の符号が発行されること。
  4. 物品を購入するとき、サービスの提供を受けるとき等に、証票等や番号、記号その他の符号が、提示、交付、通知その他の方法により使用できるものであること。

代表的なものには、suicaなどの電子マネー以外にも、デパートの商品券などがあります。

要するに、サービス提供を受ける支払に使用できるものを、事前に企業が対価を受領する形で発行する場合が該当します。

そして、オンラインゲーム上のコインなどの仮想通貨もこれに当てはまるのです。

「前払式支払手段」には、「自家型」と「第三者型」とがあります。

「自家型」
発行者(が提供するオンラインゲーム内)においてのみ利用することできる。

「第三者型」
発行者以外の第三者(が提供するオンラインゲーム内)においても使用できる。

オンラインゲームアプリ内の仮想通貨の多くは「自家型」が採られています。

2.自家型前払式支払手段における主な規制

発行開始後、未使用残高が基準日(毎年3月末及び9月末)において基準額(1000万円)を超える場合は、基準日から2ヶ月以内に届け出る必要があります。

(1)供託

上記発行届出書を財務局に提出する前に、法務局において、発行保証金の供託を行う必要があります。

発行保証金は、未使用残高の2分の1の額以上に相当する額です。

(2)表示及び情報提供義務

オンラインゲーム提供者の和部サイト上に、発行者の称号や、利用上の注意、未使用残高を知る方法などを表示及び情報提供しなければなりません。

3.トラブルになりがちなこと

(1)基準未払残高には、プレミアムを含みます

600円の利用分を500円で発行している場合、差額100円分のプレミアムも未払残高に合計しなければなりません。

(2)無償発行分の取り扱い

無償発行分も原則は未使用残高に計上しなければなりません。

もっとも、対価を得て発行されたものと無償で発行されたものを、①表示事項やデザインによって区別でき、②帳簿書類上も、発行額、回収額、未使用残高について管理上区別されていること、が満たされれば、合計しなくて良くなります。

(3)各未使用残高の取り扱い

1つのオンラインゲームの提供者が複数のオンラインゲームを提供し、各ゲームで違う仮想通貨を発行している場合には、各仮想通貨の合計が基準額を超えたかという判断となります。

まとめ

LINE内の通貨が、関東財務局の立ち入り検査を受け、仮想通貨と認定されました。

問題となったのは、「宝箱の鍵」である。

「宝箱の鍵」は「ルビー」という別の仮想通貨を使って購入する仕組みであり、「宝箱の鍵」の数に応じて複数のサービスを受けられる。二重の仕組みとなっていたので、LINE側は届出をしていなかった。

仮想通貨と認定されたことで、多額の保証金を供託することとなった。

まだまだ資金決済法に対応できていない企業が多いと思われます。ぜひご相談下さい。