FCの労務問題3(加盟店の労働者性・加盟店内部の労務問題と本部の責任)

フランチャイズは、本部及び加盟店だけの関係では成り立たず、本部、加盟店のいずれも会社組織であれば、会社内部の労務問題は切っても切り離せない問題です。

今回は、本部と加盟店との関係(加盟店が本部の労働者に当たるかどうか)と、加盟店内部の労務問題と本部との関わりついてお話しします。

1.加盟店が本部の労働者にあたるのか

フランチャイズ契約は、独立した事業主体が独立した立場で契約を締結し、事業も独立して行うのが原則です。

ここで、労働者とは、基本的に、事業者と個人とが結ぶ雇用契約によって事業者と契約関係にある者が想定されていますから、基本的には、加盟店が本部の労働者にはならないと考えられます。

ただし、判例上、労働者の概念は、形式的な雇用契約が締結されているかどうかではなく、労働の実態に即して判断されるものと考えられています。

そして、使用者の指揮命令に従い、労働に対する裁量の幅が小さければ小さいほど労働者性の色合いが濃くなるとされています。

近年、都道府県の労働委員会において、加盟店の労働の実態に即して、加盟店が労働組合法上の労働者にあたると判断されたケースがあります。

加盟店が労働組合法上の労働者とされると、加盟店らの集まり(ユニオン)らが申し入れる団体交渉に本部が応じる必要が発生します。

現在、本部側が不服申し立てをし、中央労働委員会にて再度審議が行われていますが、中央労働委員会でどのような判断がなされるのか注目されています。

2.加盟店の労務問題と本部の対応

例えば、加盟店がその従業員に違法な長時間労働をさせたため、労働基準監督署から指導を受けるような事態が発生した場合、本部として何らかの責任を負うのでしょうか。

また、このような事態が発生した場合、本部としてはどのような対応を採れば良いのでしょうか。

まず、加盟店は本部とは独立した事業主体ですから、加盟店の裁量の範囲内で発生した労務問題は加盟店内部の問題であり、本部が責任を負うことは基本的にありません。

しかし、昨今、厚生労働省では、違法な長時間労働を繰り返し行っていると疑われる社名を公表するなど、過重労働解消に対する取り組みに力を入れています。

また、最近では、第二の電通事件と言われる過労自殺の問題もあり、過重労働等、労務問題に対する世間の関心も高まっています。

こうした中で、加盟店が抱える労務問題を放置すれば、これが公になれば、加盟店だけの問題ではなく本部が営むフランチャイズチェーン全体の信用を失わせることにもなりかねません。

本部は、加盟店の労務問題が、フランチャイズチェーン全体の信用問題にもつながりかねないことを念頭に置いて、従業員の処遇等の労務に関する規律についても、そのノウハウの提供、指導助言をし、労働基準監督署より勧告等の措置があった場合には本部への報告を課すといった必要があるでしょう。