賃料請求等の値上げと値下げ交渉について
1.賃料値上げ・値下げ交渉
通常、賃貸借契約書上、賃料の改定があり得ることが記載されています。
もっとも、当事者の一方的な意思表示で改定ができるような定めではなく、「物価上昇」や「近隣相場」等の経済状況の変動を踏まえて、当事者間の協議の上、改定されるという定めが一般的です。
固定資産税の増額や近隣物件の募集時の賃料を示すことで、「物価上昇」や「近隣相場」等の変動を賃借人に理解してもらうことはできますが、賃料改定が必要なほどの「物価上昇」や「近隣相場」等の経済的状況の変動は、立証のハードルが高いものです。
そのため、契約後に値上げ交渉すれば良いだろうと安易に考えることなく、当初契約時の賃料の定めを、原則的に変更が利かないものと捉えて、賃料の合意をするべきといえます。
仮に賃料の値上げを一方的に通知して、合意ができない状態であれば、賃借人は従来の賃料額を供託するかもしれません。
その場合、賃貸人としては、新たな賃料の「一部に充当」することを内容証明郵便にて通知することで、態度を明確にするべきです。
このように合意形成に向けて双方ともに態度を明確に示すことは、重要といえます。
2.滞納賃料の請求
滞納賃料は権利を行使することができることを知った日から5年、権利を行使することができるときから10年間で時効によって消滅してしまいます(民法166条)。
そのため、従前の民法上の定めと同様に、5年間の消滅時効にかかるものとご認識いただくのが良いでしょう。
協議を行う旨の合意が書面でされることにより1年間時効の完成は猶予されますが(民法151条)、そのような合意ができるケースは多くないので、催告をすることで6ヵ月間時効の完成を猶予して(民法150条)、支払いを得られなければ、訴訟を提起するという従来どおりの流れが一般的です。
このような催告は、日付や内容が明確に残るように、内容証明郵便を用いる方法が良いです。
また、賃料の滞納は、賃貸借契約の解除の原因となります。
賃貸借契約は継続的な信頼関係に基づき成立するもので、滞納賃料が存在するからといって直ちに解除することはできず、信頼関係が破壊されたといえるほどの事情が必要です。
信頼関係が破壊されたといえるほどの事情か否かは、賃料の滞納が6ヵ月以上続いているかどうかという点が一応の目安となります。
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