宣伝文句、キャッチコピーをめぐるトラブル
事業者が集客のためにサイトに宣伝文句、キャッチコピー等を掲載する際、より良く見せようとして陥りやすいのが、景品表示法上の不当表示です。景品表示法上の不当表示にあたる場合、消費者庁による行政指導、措置命令(違反行為の差止め、再発防止措置、公表等)がなされ、事業活動に多大な支障が生じます。
不当表示の種類と具体例
① 優良誤認表示
優良誤認表示は、商品やサービスの品質、規格その他の内容について、実際のもの、又は、類似の商品やサービスと比べて、著しく優良であると誤認される表示をいいます。
商品やサービスの効果や性能に優良誤認表示の疑いがある場合、消費者庁から事業者に対し表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることがあります。
例えば、食品のダイエット効果や、空調の除去効果などは、科学的な検証結果に基づくか否か、事業者から消費者庁に対して合理的な根拠を示す資料によって早期に説明を尽くさなければなりません。
その他の具体例は以下のとおりです。
<具体例>
牛肉のブランド
有名ブランドではない国産牛肉であるにもかかわらず、あたかも国産有名ブランド牛肉であるかのように表示
予備校の合格実績
他校と異なる方法で数値化し、適正な比較をしていないにもかかわらず、あたかも大学合格実績NO.1であるかのように表示
② 有利誤認表示
有利誤認表示とは、商品やサービスの取引条件について、実際のもの、又は、類似の商品やサービスと比べて、著しく有利であると誤認される表示をいいます。
取引条件は、数量、アフターサービス、保証期間、支払条件などをいいます。
特に問題となるのは、二重価格表示です。二重価格表示は、自社の販売価格に当該販売価格よりも高い他の価格(比較対照価格)を併記する方法です。比較対照価格の内容について適正な表示が行われていない場合には、有利誤認表示に該当するおそれがあります。仮に、比較対照価格が過去に販売実績がない価格であれば、有利誤認表示となります。販売実績があったとしても、その価格がいつの時点で、どの程度の期間販売されていたものかを正確に表示しない限り、有利誤認表示になるおそれがあります。
その他の具体例は以下のとおりです。
<具体例>
携帯電話の通信料金
自社に不利となる他社の割引サービスを除外した料金比較であるにもかかわらず、あたかも自社が最も安いかのように表示
家電量販店の販売価格
家電量販店の店頭価格について、競合店の平均価格から値引きすると表示しながら、その平均価格を実際の平均価格よりも高い価格に設定し、そこから値引きしていた。
③ 無形のサービスに関する表示
フリーミアムモデルの宣伝時に特に問題となる例として、無料会員を多く獲得するために、オンラインゲームで実際はアイテムを購入しないと一定レベル以上のステージに進めないにもかかわらず「完全無料で利用可能」と表示したり、クラウドサービスで実際には無料プランではデータ容量、データの種類は限られているにもかかわらず「無料ですべてのデータを保存して、どこからでもアクセスできます」と表示したりすることは、不当表示に該当します。
④ その他誤認されるおそれのある表示
消費者庁は、優良誤認表示及び有利誤認表示のほか、一般消費者に誤認されるおそれがある表示を、以下のように、特に指定して禁止しています。
無果汁の清涼飲料水等についての表示
無果汁・無果肉若しくは果汁又は果肉の量が5%未満の清涼飲料水、乳飲料、アイスクリームなどについて、「無果汁・無果肉」であること又は果汁若しくは果肉の割合を明瞭に記載しない場合、果実名、果実の絵、写真等を用いた表示は不当表示となります。
商品の原産国に関する不当な表示
一般消費者が原産国を判別することが困難な場合、原産国以外の国名、地名、原産国以外の国の事業者名の表示、商標、国内産の商品について主要部分が外国の文字で表示などは、不当表示となります。
消費者信用の融資費用に関する不当な表示
消費者信用の融資費用について、実質年率が明瞭に記載されていない場合、利息及び手数料の表示は、不当表示となります。
不動産のおとり広告に関する表示
不動産の取引において、消費者を誘引する手段として行う、実在しない、又は、売却済み等で取引の対象となり得ない不動産に関する表示は、不当表示となります。
おとり広告に関する表示
一般消費者を誘引する手段として行う、
・取引を行うための準備がなされていないなど取引に応じることができない場合のその商品やサービスについての表示
・商品やサービスの供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その旨を明示していない表示
・商品やサービスの供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その旨を明示していない表示
・取引の成立を妨げる行為が行われるなど実際には取引する意思がない商品やサービスについての表示
有料老人ホームに関する不当な表示
有料老人ホームの施設、設備、サービスについて、入居後の居室の住み替えに関する条件が明瞭に記載されていない表示、夜間における最小の介護職員や看護師の数など、介護職員等の数が明瞭に記載されていない表示は、不当表示となります。
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