飲食店の廃業手続きとは?事前準備の注意点と清算の流れについて解説
「飲食店の廃業を考えている」
「飲食店の廃業では何をすべきか」
「清算手続の流れを知りたい」
本記事は、飲食店の廃業をお考えの方へ向けて、事前準備と流れについてご説明します。
廃業の仕方は法人と個人とで異なります。
事前に手続を把握してから進めていくことで無駄なコストを抑えることができスムーズに次へと繋げていくことができます。
1.飲食店の廃業でやるべきこと
廃業にあたってする作業は、店舗出店時と同様、あるいはそれ以上にやることがあります。
開店時は、主に次のような作業を行ったと思います。
- 事業計画
- 資金調達
- 物件探し
- 内装業者の手配
- 各種契約(仕入れ先・リース・宣伝など)
- 採用
- 届出
- 店内のオペレーションの計画
- プレオープン
- 開店
閉店時は、開店時の逆のことを実施します。
たとえば、次のような作業が必要になります。
- 事前計画
- 物件解約、原状回復業者の手配
- 各種契約の解約
- 従業員への説明・解雇予告
- 届出
以下に、各対応の注意点をご紹介します。
(1)事前の計画は入念に
まずは計画をたてます。
利益は出ているのか、店舗などの各契約期間はいつまでなのか、中途解約の違約金の有無などを多角的にみたうえで、一番コストを抑えられる方法を策定することをおすすめします。
収支や各種契約がわかる資料をもとに、閉店にかかる支出を計算し、確保すべき予算を確認します。
もし予算を確保できない、返済できない負債が残るという場合は、廃業手続ではなく、破産などの法的整理をとった方がいい場合があります。
飲食店の破産については別の記事で解説していますのでこちらの記事をご一読ください。
負債がない、負債があるけれども支払えるという場合は、個人経営か法人経営かによってとるべき手続が異なります。
個人経営の場合は、閉店にかかる作業のみで問題ありません。
法人経営で廃業に伴い会社をたたむ場合は、法人の「清算」という手続が必要となります。
清算手続については2章以下で解説します。
(2)従業員への通知は原則30日前
従業員への解雇の通知は、原則30日以上前に行う必要があります。
30日以上前に伝えることができなかったとしても解雇予告手当を支給することで解雇することは可能ですが、従業員にも準備期間が必要なので、ある程度余裕をもって伝える必要があります。
(3)各種契約の解約、取引先への連絡は余裕をもって行う
各種契約には解約の通知を行う期限などが設けられていることが少なくありません。
所定の時期以外のタイミングだと違約金などが発生することがあります。
あらかじめ余裕をもって対応する必要があります。
#1:建物の賃貸借契約の解約・原状回復業者の手配
まず、賃貸借契約書を確認しましょう。
何か月前に連絡する必要があるのかなどの解約の細則が賃貸借契約書には記載されています。
そのうえで、所定の方法で解約の通知を行います。
多くは不動産管理会社が窓口となっているため、管理会社へ書面で通知することになります。
さらに、解約に伴って、建物の原状回復が必要です。
原状回復業者は、管理会社から指定がある場合と、自由に選択していい場合とがあります。
業者の手配、見積り、施工など一定の期間を要するため、解約日に間に合うように早めに着手します。
なお、原状回復関係の処理は、居抜きで買い取ってもらえると比較的作業を軽減することができます。
居抜きはビルによってはオーナーが居抜きを認めていないことがありますので、もし居抜きを考えている場合はまず管理会社に確認しましょう。
#2:リース物件やレンタル品の返却
冷凍冷蔵庫、食洗器、ガスコンロ、製麺機、ビールサーバー、おしぼりウォーマー、飲食店には多数のリース物件やレンタル品があります。
閉店にあたっては返却し、残金の清算をする必要があります。
誤って他の物品と一緒に売却処分することがないためにも、店内のリース品の契約書を確認し、リース会社へ連絡し返却と精算の算段をしましょう。
#3:仕入れ業者への連絡
閉店後は継続した取引ができなくなりますので、連絡しておかなければなりません。
場合によっては、廃業ときいて支払条件が変わることもあります、その他、取引の期間など調整が必要なこともありますので、余裕をもって伝えておきましょう。
#4:その他各種契約の解約
店舗総合保険などの保険に加入している方は保険を解約します。
残りの契約期間に応じて解約返戻金が返ってくることがありますので、忘れずに解約することをおすすめします。
また、ガス、電気、水道、インターネットなどの解約も必要です。
(3)廃業届等は忘れずに
廃業する場合は、行政への届出が必要です。
飲食店は、複数の法律によって基準が定められており、それらを監督する機関から許認可を得て営業しています。
もし事業を停止する場合には、法律の定めにしたがって、その旨を各機関へ届け出る、許可証を返却するなどの所定の手続を踏む必要があります。
法律によっては必要な届出を怠った場合の罰則が定まっているものもあるため、注意しなければなりません。
どの事業主にもあてはまる消防署、年金事務所、労働局、税務署への届出はもちろんのこと、以下の手続も該当する場合は忘れずに行いましょう。
#1:食品衛生法・健康増進法関係は地方公共団体へ
レストラン、カフェ、居酒屋、バーなど、飲食店は保健所の許可を得ています。
保健所の運用は地方公共団体によって異なるため、まず地方公共団体へ問い合わせをしましょう。
なお、学校や病院などの給食サービス事業の場合、健康増進法関係の手続の確認も必要です。
こちらも各地の地方公共団体によって運用が異なりますので、直接問い合わせることになります。
#2:風営法関係は管轄の警察署へ
深夜に酒類を提供している飲食店、ナイトクラブ、キャバクラなどは風営法の許認可があります。
深夜種類提供飲食店営業の届出、特定遊興飲食店営業許可、風俗営業許可などを得ている場合は、管轄の警察署へ相談し、必要な手続を進める必要があります。
2.会社が経営している飲食店の廃業手続「清算」の流れ
会社が経営している飲食店で、閉店と共に会社をたたむ場合は、法人の「清算」という手続が必要です。
清算手続の流れについてご説明します。
清算の流れは、清算人の選任と解散登記にはじまり、解散確定申告、債権債務関係の整理、資産の換価、負債の返済、株主への残余財産の分配、清算確定申告、そして清算決了登記をもって終了します。
以下に、手続の流れと注意点をご紹介します。
(1)解散決議・清算人の就任
解散によって直ちに法人が消滅するわけではありません。
法人は解散によって清算手続に移行し、清算結了登記が行われるまでの期間は清算手続の範囲で存続します。
清算人となるのは、取締役、定款で定める者、株主総会の決議によって選任された者のいずれかです。
(2)解散登記と清算人就任の登記
解散と清算人の就任の登記をします。
株主総会の決議から2週間以内に行わなければなりません。
また、登記完了の後は、廃業届を登記事項証明書と共に税務署、都道府県税事務所、市区町村へ提出します。
(3)債権申出の公告・知れたる債権者への催告
債権者に対し、一定の期間内に債権を申し出ること、一定期間に申出がない場合は清算から除斥されることを官報に公告し、また、知れている債権者に対しては個別に催告をします。
この手続においては、「一定の期間」は2か月を下回ることはできないこと、期間内は原則債権者への返済をすることができないことに注意しなければなりません。
(4)解散確定申告
清算人は、就任したら解散日時点での財産目録・貸借対照表を作成し、株主総会の承認を得ます。その後、解散事業年度の確定申告を行います。
(5)財産換価・債権取立・債務の弁済
清算人は、財産を換価と債権回収をします。そして(3)の債権者への催告期間が経過した後に各債務の弁済を行います。
(6)各事務年度の貸借対照表の作成
これらの清算事務にはある程度の期間を要します。
清算人は解散の日から1年ごとに清算事務年度の貸借対照表と事務報告を作成し、株主総会で承認を得ます。
また、清算事務年度ごとに確定申告を行います。
(7)残余財産の確定と分配
債務の弁済が完了した後に余った財産(残余財産)は、株主に対し保有株式数に応じて分配します。
(8)清算確定申告・清算結了登記
清算人は、清算事務を全て終了したら決算報告を作成し株主総会の承認を得ます。
承認を得たら、清算結了登記をします。
登記完了後は、閉鎖事項証明書を添付して清算が結了した旨を税務署、都道府県税事務所、市区町村に届け出ます。
なお、清算人は、清算結了登記から10年間は清算法人の帳簿資料を保管する必要があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
飲食店の廃業と、会社経営の飲食店が廃業する際にとる手続である清算についてご説明しました。
各手続やタイミングなど、複雑だと思われた方は多いのではないでしょうか。
廃業とは自ら事業をやめることです。
だからといってその決断や手続を自らひとりで行わなければならないわけではありません。
弁護士法人みずきの弁護士が皆さまのご状況にあわせて最適なご提案とサポートをいたします。
清算手続をしたいとお考えの方はもちろん、事業を継続すべきか、廃業や破産を選択すべきかをお悩みの方は、一度当事務所へご相談ください。
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