会社が破産したら経営者や家族の生活はどうなる?会社破産の手続や流れ・期間を解説

後遺障害等級14級で自賠責保険以上の後遺障害慰謝料をもらうには

執筆者 中越 琢人 弁護士

所属 第二東京弁護士会

弁護士は、スーパーマンではありませんが、他人が抱える紛争の解決のため、お手伝いをすることができます。私は、一件一件丁寧で誠実な対応を心がけ、問題解決のためにできることはやり尽くすという姿勢でおります。皆様の不安が解消され、平穏な生活を送ることができるようになるまで、紛争解決のお手伝いを致します。

この記事の内容を動画で解説しております。あわせてご視聴いただければと思います。

「会社が破産した場合、どのようなことが起こるの?」
「会社が破産する場合は、経営者も破産しなければいけないの?」
「経営者は別の仕事ができないの?」
「今後の生活はどうなってしまうの?」
「家族に悪影響は及んでしまわないの?」

会社を経営されている方の中には、会社の負債が大きくなってしまったり、取引先の倒産に伴い連鎖倒産の危機にさらされてしまったりして、上記のようなことに頭を悩ませてしまっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では、会社経営にあたって、資金繰りに窮してしまい、破産を余儀なくされてしまった経営者やそのご家族に向けて、会社破産の手続や流れ、期間と共に、会社が破産したときに起こり得ることや、そのときの対処法について、ご説明いたします。

本記事が、会社破産手続を進めるかどうか、お悩みになっている経営者やそのご家族の参考になれば幸いです。

1.会社の破産とは

会社の破産は、債務超過や債務の返済ができなくなった会社について、裁判所へ申立てをすることによって、会社を清算し、その資産、負債をゼロにする手続きです。

2.会社が破産するとどうなるのか

3.後遺障害認定の申請を弁護士に任せるメリット

会社が破産すると、会社の資産はすべて失われ、法人格が消滅することになります。

個人の破産であれば、当然当事者が消滅することはありませんので、法人格が消滅することが、会社の破産と個人の破産の決定的な違いといえます。

なお、個人の破産の場合は、破産をしても消滅するわけではないため、破産後の生活を再建を考えて、後に説明する、破産前の財産の一部を保有し続けられる自由財産制度があります。

(1)会社自体が消滅する

会社自体が消滅するというのは、法人格がなくなるということです。

破産手続が終結したら、登記上も「閉鎖」となりますので、対外的にも法人格が消滅したことを示せるようになります。

(2)会社の資産がなくなる

会社の破産手続は、裁判所が選任した破産管財人が行います。

破産管財人は、会社の資産を調査して、換価(現金化することをいいます)をしていき、相応の現金化ができれば、債権者に対して配当(分配)していきます。

そのため、会社の破産手続をするということは、会社の資産がすべてなくなるということになります。

ちなみに、会社の資産を経営者個人、またはそのご家族の名義に無用に移してしまったり、他の債権者への返済は止めているのに、経営者個人やそのご親族などに優先的に返済をしてしまったりすると、破産管財人からそれらの行為を否認されてしまい、元どおりに戻されてしまうため、そのような行為をしないよう注意が必要です。

(3)従業員の仕事や生活に影響する

会社の破産手続では、会社自体が消滅することになるため、従業員は全員解雇することになります。

ご家族で経営する同族会社の場合も例外はなく、従業員であるご家族も、解雇されることになります。

従業員の仕事がなくなるわけですから、当然従業員の生活にも影響を及ぼします。

解雇後の従業員になるべく迷惑をかけないために、会社として必要な事務処理を誠実に行うことが重要です。

例えば、ハローワークに、雇用保険被保険者離職証明書や雇用保険被保険者資格喪失届を提出して、離職票を受領後に従業員に交付したり、各市区町村に異動届を提出したり、年金事務所に被保険者資格喪失届や適用事業所全喪届を提出したりと、社会保険切替に必要な手続きを行います。

未払いの賃金がある場合には、労働基準監督署及び独立行政法人労働者健康安全機構の実施する、未払賃金立替払制度を利用して、未払賃金の8割を立替払いしてもらうことが考えられます。

また、会社の負担としては、従業員に対する解雇予告が遅れてしまうと、解雇予告手当(平均賃金1日分×解雇日までの期間で30日に足りなかった日数)の支払い義務が生じます。

未払賃金立替払制度の利用や、解雇予告手当の支払い義務の調査などは、破産管財人が行うことになるため、経営者としては、弁護士に相談しながら、会社の破産手続の先を見据えて、早めに破産手続の申立てを進めて、破産管財人に会社の資産等の管理を引き継ぐことが重要になります。

3.会社の破産を申し立てる場合の経営者の負担と対処法

会社の破産を申し立てる場合、準備段階では必要書類の準備、債務増大の原因の説明、銀行口座解約のため金融機関へ出向く、各種営業許可の終了手続を行うなど、経営者の作業負担が生じます。

会社破産の手続中も、破産管財人の行う調査への協力、債権者集会への出席など、経営者が行わなくてはならないことがあり、その分、経営者の負担が生じることになります。

会社の破産を申し立てる以上、どうしても生じる経営者の負担ですが、弁護士に相談しながら進めていくことで、軽減することができます。

(1)会社破産手続を検討する

経営者がまず行うべきことは、資金繰りの状況を踏まえて、会社の破産を申し立てるべきか、弁護士に相談することです。

会社の破産を申し立てることが決まったら、段階ごとに必要な準備をしながら、弁護士と一緒に破産手続の終結まで進んでいきます。

#1:弁護士への相談・依頼

弁護士に相談をして破産申立を行うべきかどうか、破産手続を行うにあたっての問題点、今後の流れなどをよく話し合う必要があります。

①弁護士に相談することが始めの一歩

実際に破産申立を行う場合の、事業停止時期、借入先、取引先や従業員などへの対応、事務所や倉庫などの賃貸物件の原状回復のスケジュール、敷金や売掛金などの回収、破産申立てを行う時期などを決めていきます。

②事業停止時の注意点

会社破産は、透明性の高い手続ですので、裁判所は、会社の資産や収入が、経営者個人そのご家族、その他第三者へ不当に渡っていないか、財産隠しがないかなどをチェックします。

特に、会社と個人の資産、収入、支出を混同しないことに注意が必要です。

会社、個人どちらかの資産を理由なく他方に渡してしまったり、どちらかの支出を他方が支払ったりしてはいけません。

もし個人に不当に渡っていると裁判所が判断した場合は、破産財団(債権者への配当の原資となる財産の集まりを意味します。)とするため、裁判所へその分の財産を支出する必要が生じる場合もあります。

このように、破産手続上で禁止されている行為が行われないように破産を弁護士に依頼した後は、弁護士が会社の資産、収入を管理していくことになります。

現金や預貯金など会社のすべての資産の管理を弁護士に委ねます。

③弁護士から債権者へ受任通知を送付して弁護士がすべての窓口に

原則として、弁護士からすべての債権者へ一斉に受任通知を出します。

また、弁護士から受任通知を発送することにより、債権者が金融機関である場合、その金融機関の口座は凍結されてしまいます。

破産申立に要する費用など、本来充てられるべき支払いに充てられなくなりますので、この点も注意が必要です。

債権者ではない金融機関の口座もすべて解約処理を進めていき、残っていた預貯金は、速やかに弁護士に預けます。

#2:破産手続開始申立の準備・申立

破産申立準備は、必要書類をご準備しながら行います。

会社破産手続の申立に必要な資料としては、以下のようなものがあります。

①決算報告書(直近2期分)

事業停止にいたるまでの2期分の決算報告書を準備します。

決算期を迎えていない場合は、事業停止までの中間的な試算表で構いません。

また、決算報告書が作成されていない場合は、帳簿を提出することもあります。

それら書類が一切ないケースもありますがそういった例外的なケースでは個別に対応を検討することになります。

経理担当の従業員の方や、会計士又は税理士と連携しながら、会社の負債、資産や収入などを把握することも少なくありません。

②預貯金通帳(直近2年分)

会社名義の預貯金通帳は、動きのない口座もふくめて、直近2年分をすべて提出します。

普通口座のみならず、当座、定期などすべての口座について提出が必要となります。

③事務所などの賃貸借契約書

事務所や倉庫など、賃貸物件がある場合は、賃貸借契約書を準備します。

賃貸借契約は早めに解約予告をして、明渡しを済ませて、少しでも差し入れている敷金が回収できるよう努めます。

④事業設備一覧表、在庫一覧

事業設備や在庫品は、換価(換金)を行う必要があります。

懇意にしている取引先などに、無償で提供してしまったり、とても低い金額で売ってしまったりすると、破産手続の中で取り戻すように言われてしまうため、相見積りをとって、適正な金額で処分を進めることが重要になります。

⑤従業員名簿、賃金台帳

従業員に対して未払賃金がある場合には、従業員も会社の債権者となります。

また、未払賃金がなくとも、解雇を予告した日から、実際の解雇日までに30日の間隔がないときには、解雇予告手当が発生しますので、この場合も従業員は会社の債権者となります。

未払賃金立替払制度の利用や、解雇予告手当の支払い義務の調査などは、破産管財人が行うことになるため、経営者としては、早めに破産手続の申立てを進めて、破産管財人に会社の資産等の管理を引き継ぎます。

#3:破産管財人の選任

破産申立をすると、裁判所は破産手続の開始決定を出して、破産管財人を選任します。

①個人破産との違い

個人破産であれば、資産や収入に乏しいことが明らかで破産手続の費用を支弁することができない方のために同時廃止という手続もあるのですが、会社破産は、破産管財人が選任される管財手続となります。

②破産管財人に話すべきこと

多くの場合には、裁判所が破産手続の開始決定を出す日よりも前に、破産管財人(破産手続の開始決定前の場合は、正確には候補者となります。)の法律事務所で、破産管財人と面談を実施します。

この面談には弁護士のほか経営者も出席することになります。

面談では、破産管財人に対して、破産申立に当たっての問題点や、 事業内容や売上の推移、債務増大の原因、取引先との関係性や入出金の詳細など、補足説明をします。

③破産管財人の役割は?

破産管財人は、破産財団(債権者への配当の原資となる財産の集まりを意味します。)を増殖させるために活動します。

裁判所の監督のもと、すべての債権者の代理人となって、会社の資産を管理するというようなイメージです。

そのため、破産管財人へ引き継ぐまでの間に、弁護士(申立代理人弁護士といいます。)と協力して、回収可能なものは回収して、また、会社の資産を流出させずに、速やかに破産管財人に引継ぐことが重要となります。

#4:破産手続開始決定

破産手続開始決定とは、裁判所から出されるもので、文字どおり、破産手続を開始する旨の決定です。

破産手続の開始決定によって、会社の財産の管理及び権利が、破産管財人に専属することになります。

#5:財産状況の調査・換価

破産手続の開始決定が出されると、破産管財人による負債や資産などの調査が始まります。経営者は、破産管財人から説明を求められた場合、これに応じなくてはなりません。

破産管財人は、資産が残っていれば、換価していきます。換価した資産は、破産財団(債権者への配当の原資となる財産の集まりを意味します。)となり、破産管財人の報酬や債権者への配当のための資金になります。

破産管財人による調査手法の一例としては、会社の口座の入出金を過去にさかのぼって精査することや、会社宛ての郵便物が破産管財人に転送されることになりますので、破産管財人は転送郵便物を開封して中身を確認したりなどをします。

破産管財人との面談で、追加で提出するよう指示された資料があれば、これを収集して提出していき、説明をしていくことになります。

#6:債権者集会

債権者集会とは、破産管財人が破産管財業務に関わる重要事項について意思決定をして、債権者に対して破産手続の進行について報告をする制度です。

①債権者集会はいつ?

通常、初回の債権者集会は、破産手続開始決定のときには、すでに 決定しており、破産手続開始決定から約3か月後となります。

こちらも、弁護士のほか、経営者も出席することになります。

②債権者集会では何が行われるのか

会社破産の場合は、資産の換価などによって破産財団が形成されることも多く、破産管財人から詳細な収支の報告がされることもあります。

債権者集会では、債権者も出席することがあり、破産管財人による調査結果の報告を聞いて、質問がなされることがあります。

負債を弁済できるほどの資産がないとされれば、廃止決定(破産管財人が調査しても換価できる財産がないことが明らかとなった旨の決定です。)によって、破産手続が終結します。

#7:債権者への配当

破産申立てを行う弁護士や破産管財人の活動によって、破産財団(債権者への配当の原資となる財産の集まりを意味します。)の増殖を果たせた場合、破産財団のうち配当をすることができる金額を、債権者へ配当することになります。

配当をすることができる金額が1000万円未満の場合は、簡易配当という方法で、破産管財人は、債権者への個別通知を省略するなど簡略化して配当手続を執り行います。

配当がないようなケースでは第1回目の債権者集会で手続きが終了することも少なくありませんが、配当があるようなケースでは、約3か月おきに数回債権者集会が開かれます。

#8:破産手続の終結

会社破産の手続は、配当の無い事案では廃止決定、配当をすることができる金額が生じた事案では配当手続の終了によって、終結することになります。

(2)会社破産手続にかかる時間と費用

会社破産にかかる期間と費用は、事案や弁護士が行う作業の内容に応じて異なります。

以下では、会社破産にかかる一般的な期間と費用をご説明いたします。

#1:会社破産手続にかかる期間

会社破産にかかる一般的な期間としては、弁護士へ依頼した後、破産手続開始申立の準備に数週間~6か月、破産管財人の選任・打合せから破産手続開始決定、破産管財人による調査への協力、債権者集会まで約3か月、配当手続に至る場合は債権者集会が開かれる回数ごとに、さらに約3か月となります。

#2:会社破産に必要な費用

会社破産に要する費用としては、裁判所へ納める費用と弁護士費用に大別されます。

これらの費用は、事業停止時に残っていた会社の預貯金、事業停止後に回収した売掛債権、什器備品を換価した際の現金、会社契約の保険を解約した場合の解約返戻金などを充てることが可能です。

①裁判所へ納める費用

会社破産にあたって、裁判所へ納める費用は、引継予納金(ひきつぎよのうきん)もしくは単に予納金(よのうきん)と呼ばれます。

予納金は、裁判所へ支払う官報広告費と、破産管財人へ引き継ぐ費用をいい、破産管財人の報酬などになります。

複雑な破産事件ではなく、破産管財人の業務を簡略化できるようなケースであれば、予納金は20万円程度の金額になることも少なくありません。

上記のような簡易なケースを除いて裁判所では次のような予納金の目安を定めております。

負債総額 予納金
5000万円未満 70万円
5000万円以上1億円未満 100万円
1億円以上5億円未満 200万円
5億円以上10億円未満 300万円
10億円以上50億円未満 400万円

会社破産の申立てを弁護士に依頼することによって、事案の整理が図られ、破産管財人の負担が軽減されます。

そのため、裁判所から要求される予納金の金額も、弁護士が代理人となって申立てを行うことで低減される傾向があります。

②弁護士費用

申立代理人となる弁護士の費用は、負債総額や破産申立準備にあたって必要となる期間、業務量に応じて異なります。

高額な資産の回収、換価(換金)等の業務がなければ、弁護士費用は30~300万円の範囲となることが多いと思います。

(3)経営者の自己破産を検討

会社破産手続を進める場合、経営者が保証人となっている会社の借入れは、その保証人へと請求がいくことになります。

会社の負債は個人が返済していくには金額が大きいことが少なくありません。

保証人による返済が難しい場合は、その方も会社と一緒に破産手続を進める必要があります。

個人の方の破産手続と会社の破産手続は若干異なります。

会社そのものを負債と共に消滅させること目的としている会社破産手続に対し、個人の破産手続は経営者個人の生活の再建も目的のひとつとされています。

そのため、会社破産では会社資産のすべてが配当に回されるのに対し、個人の破産においては生活再建に必要な財産を一定程度手元に残すことができます。これを「自由財産」といいます。

#1:自己破産のメリット

個人の自己破産は、経営者の生活再建を目的としているため、会社の保証をしている分を含め、経営者個人が負担している借金の支払義務がすべて免除されるなど、メリットがあります。

以下では、経営者個人も債務を負担している場合に、自己破産をすることのメリットをご紹介します。

①借金の支払義務がすべて免除される

自己破産を申し立てて、借金を支払う能力がないと認められ、財産を隠していたり、浪費していたりといった債権者を害する行為がなければ、裁判所は、破産管財人の意見を踏まえて、経営者個人に対して、免責許可決定をします。

この免責許可決定が確定することで、経営者個人の借金の支払義務がなくなります。

②最低限の財産を手元に残せる

個人の自己破産は、経営者の生活再建も目的としているため、個人の財産すべて失うわけではありません。

手元に残しておける財産は、「自由財産」というもので、例えば、20万円未満の預貯金、99万円以下の現金、生活必需品である家具や家電などで、債権者からの差押えが法律で禁止されているものをいいます。

③債権者からの取立てがなくなる

会社の事業を停止させた直後は、各債権者の取立行為が考えられ、混乱を生じてしまうことがあります。

自己破産の申立てを弁護士に依頼したら、弁護士はすべての債権者に受任通知を送ります。

これにより、債権者は、債務者である経営者個人に対しても、直接取立てをすることができなくなります。

受任通知を送付した後は、弁護士が一括して窓口となりますので、弁護士を通じて負債の状況や今後の手続などを説明して、状況を落ち着かせながら破産手続を進められることは弁護士へ依頼する大きなメリットといえます。

#2:自己破産のデメリット

自己破産は、デメリットが多いと誤解されがちですが、実際はそのようなことはありません。

以下でご説明することが、経営者個人に生じる主なデメリットです。

①信用情報機関に事故情報が登録される

自己破産をすることで、信用情報機関に事故情報が登録されます。これにより経営者個人には、新たな借入れができなくなったり、クレジットカードを作れなくなったりといった支障が生じます。

もっとも、事故情報の登録は、信用情報機関によって若干異なりますが、破産手続開始決定から10年、または、免責許可決定の確定日から5年に限られますので、この期間を過ぎれば、新たな借入れなどは可能になります。

②手続中は公的資格が制限される

自己破産の手続の開始決定と同時に、破産者は資格を制限されます。この資格制限によって、その資格を必要とする仕事はできなくなってしまいます。
資格制限の対象となる仕事は、ごく一部ではありますが、以下のような仕事です。

  • 各種の士業
  • 警備員
  • 保険外交員
  • 貸金業者
  • 旅行業務取扱主任者 など

もっとも、この資格制限は、免責許可決定が確定するとなくなりますので(これを「復権」といいます。)、その後は、経営者が個人事業として、従前と同様の仕事を行うことも可能です。

#3:経営者やその家族に生じる不利益とその対処法

破産手続によって、経営者やそのご家族に生じる不利益は限定的です。

以下では、考えられる生活上の不利益と対処法について、ご説明します。

①役員報酬などの収入が途絶える

会社の事業を停止させて、会社の資産や収入を破産管財人へ引き継ぐことから、取締役の役員報酬も当然途絶えてしまいます。

また、役員報酬は、従業員の賃金と異なり、破産管財人が優先的に支払うべき債権ではないため、他の借入れと同様に扱われることになります。

そのため、他の支払いをせずに、役員報酬だけ支払うようなことをしてしまうと、偏波弁済(特定の債権者に支払いをしてしまうなど、一部の債権者を優遇してしまう行為です。)として、破産管財人に否認されてしまい、元どおりに戻されてしまいます。

なお、従業員の未払賃金と異なり、未払賃金立替払制度は利用できません。

もっとも、経営者が個人事業主として事業を行ったり、他の会社にお勤めされたりすることは問題なくできます。

また、資格制限も免責許可決定の確定までと限定的ですので、破産手続が終わるまでの間、自由財産の範囲で生計を立てて、免責許可決定確定後に資格を用いて個人事業を再開する方法も考えられます。

②健康保険の資格喪失

経営者であっても、社会保険関係については従業員と同様に取扱っている場合が多く、その場合は、健康保険の資格喪失届の提出が必要になりますし、年金事務所に被保険者資格喪失届や適用事業所全喪届を提出する必要があります。

他の会社にお勤めする場合でない限り、市区町村の国民健康保険に切り替えることになります。

破産する会社で加入していた健康保険は使えなくなりますが、国民健康保険に切り替えることで、健康保険を使えなくなるわけではありません。
そのため、経営者やそのご家族への生活上の不利益は生じにくいといえます。

③住宅ローンが組めなくなる、ご家族の奨学金の保証人になれない

経営者個人の破産手続を行うと、信用情報機関に事故情報が登録されますので、新たにローンを組むことができなくなります。

また、同じ理由で、保証人になる際の審査に落ちてしまうなど、経営者やそのご家族の生活上の不利益が生じてしまうこともあります。

もっとも、事故情報の登録は、信用情報機関によって若干異なりますが、破産手続開始決定から10年、または、免責許可決定の確定日から5年に限られますので、この期間を過ぎれば、新たにローンを組んだり、保証人に就任したりすることも可能になります。

そのため、速やかに会社の破産手続を進めることが、唯一の対処法といえます。

#4:弁護士に手続を依頼するメリット

会社破産手続は、すべての債権者へ受任通知を出して債務を把握したり、権利関係を整理したり、適正な価格で会社資産の換価を行わなければならなかったりと複雑な処理も多く、破産手続を十分に理解したうえで、債権者や裁判所、破産管財人への適切な説明が必要になります。

これらの複雑な処理や債権者や裁判所、破産管財人への説明を、弁護士に任せることにより次のようなメリットがあります。

①従業員や取引先などの債権者対応を任せられる
会社の事業を停止させた直後は、各債権者の取立行為が考えられ、混乱を生じてしまうことがあります。

受任通知を送付した後は、弁護士が一括して窓口となりますので、弁護士を通じて負債の状況や今後の手続などを説明して、状況を落ち着かせながら破産手続を進められることは弁護士へ依頼する大きなメリットといえます。

②申立に必要な資料の収集や申立書の作成を任せて期間を短縮する
破産申立にあたっては裁判所に対して必要な資料をそろえて申立書を提出する必要があります。

提出するべき必要書類を適切に選別して収集することや複雑な申立書類の作成を弁護士に任せられるということは、終結に至るまでの期間の短縮に繋がるなど、大きなメリットがあります。

③裁判所や破産管財人とのやりとりを任せて精神的負担を軽減する
破産申立時には、裁判所や破産管財人へ破産申立に至った経緯や事業の概要、負債や資産、収入などに関する説明が必要になります。

この説明では、どのような原因で債務が増大して債務超過・支払不能に至ったか、換価が必要な資産はないか、事業停止後に債権者からどのような請求があったかなど、破産管財人が調査を行ううえで必要な事項を、十分に説明する必要があります。

また、破産申立て後も、裁判所や破産管財人から尋ねられることや資料の提出を求められることは多くあります。

このような裁判所や破産管財人との対応についても破産手続きを十分に理解し、事情を把握して的確に行う必要があります。そのため、これらの説明を弁護士に任せられることは、精神的負担が軽減されるなど、メリットがあります。

④予納金が低くなる傾向がある
会社破産の申立てを弁護士に依頼することによって、事案の整理が図られ、破産管財人の負担が軽減されますので、予納金の金額は低減される傾向があります。

また、会社と経営者個人を同時に破産申し立てすることで、二重に予納金がかからなくなります。

弁護士への相談時に、経営者個人も会社と同時に破産手続を採るか、判断して、予納金を節約することができる。

まとめ

本記事では、会社が破産した場合に生じる影響やその対処法などを、会社破産手続に沿ってご説明しました。

会社の破産手続をすることで、経営者やそのご家族に生じる不利益は限定的ですが、手続中にすべきことなど、相応の作業負担や、精神的な負担は生じてしまいます。

弁護士に依頼することで、これら実際に生じる作業のご負担や、また、精神的な負担を軽減することができます。

会社破産に関するご相談は、弁護士法人みずきへお寄せください。

執筆者 中越 琢人 弁護士

所属 第二東京弁護士会

弁護士は、スーパーマンではありませんが、他人が抱える紛争の解決のため、お手伝いをすることができます。私は、一件一件丁寧で誠実な対応を心がけ、問題解決のためにできることはやり尽くすという姿勢でおります。皆様の不安が解消され、平穏な生活を送ることができるようになるまで、紛争解決のお手伝いを致します。