ボーナスは給料の請求権に含まれるのか?在籍要件について
1.ボーナスとは
そもそも、ボーナス(賞与)とは、通常の賃金のほかに労働者に対して決まった時期に支払われる報酬(例えば、6月と12月の年2回支給されるといったもの。)あるいは臨時的に支払われる報酬(例えば、会社の業績が良くて支給されるといったもの。)のことをいうとされています。
2.ボーナスは「給料の請求権」に含まれる
破産手続開始の決定が出る前の3か月間に生じた「給料の請求権」は財団債権として取り扱われるとされています。
財団債権として取り扱われるというのは、簡単に言うと、破産する会社に財産がある場合には、最も優先的に返済を受けられるということを意味します。
配当手続すらとる必要がありません。
いわば、破産に関する債権の中で最強の債権です。
その他は優先的破産債権として取り扱われます。
この場合、配当手続にまで至った場合に配当を一般の債権より優先度が高く配当を受けることができます。
ボーナスについても、同様、破産手続開始決定前3か月間に生じたものは。「給料の請求権」に含まれると考えられています。
そのため、破産手続開始決定前3か月間に生じたボーナスは財団債権、そのほかの部分については優先的破産債権として取り扱うことになります。
なお、ボーナスは毎月の給料と異なり立替払の制度の対象外ですので、注意が必要です。
(1)ケース1の場合(破産手続の開始決定の日がボーナスの支給日より後)
平成28年7月20日に従業員が退職し、平成28年8月1日に私の経営している会社が裁判所から破産手続開始決定というものを受けました。
平成28年6月20日がボーナスの支給日で、給料2か月分のボーナスが支給することが決まっていましたが、まだ支払っていません。
この従業員のボーナスは、どのように取り扱えばよいのでしょうか。
ケース1の会社は、平成28年8月1日に破産手続開始決定を受けているので、破産手続開始前3か月間である平成28年5月1日から平成28年7月31日までの間に発生したボーナスは、財団債権として取り扱うことになります。
そのため、平成28年6月20日に支給するボーナスは、同日に発生しており、破産手続開始決定前3か月前に生じた給料の請求権に該当するので、財団債権として優先的に取り扱うことになります。
(2)ケース2の場合(ボーナスの発生時期)
破産手続の開始決定の日が平成28年5月20日、従業員の退職日が6月1日の場合、ボーナスの支給日が平成28年6月20日の場合はどのように扱えばよいのでしょうか。
(破産手続開始決定の日がボーナスの支給日より前)、そもそもボーナスが発生しているかを検討する必要があります。
そのため、ボーナスの発生時期、そして在籍要件の2つが問題となります。
まず、ボーナスの発生時期については、諸説ありますが、支給日に全額発生するという考え方が有力です。
ケース1では、ボーナスは、支給日である平成28年6月20日に発生すると考えられる場合、破産手続の開始が決まった平成28年6月1日には、賞与は一切発生していないことになります。
そうすると、このボーナスについては、破産手続の中で、財団債権としても優先的破産債権としても取り扱う必要がないことになります。
他方、就業規則などで具体的な算定基準、支給金額、支給方法が明確になっている場合には、前回のボーナスの支給日の翌日から退職日までの労働期間に応じて、破産手続開始の決定前3か月間に相当する部分については、財団債権、その他の部分については優先的破産債権として取り扱うことになるでしょう。
3.ボーナスに関する在籍要件
会社において、就業規則などでは「賞与(ボーナス)は、支給日に在籍する従業員に支給する」と定めている場合が多くあるようです。
このような、いわゆる在籍要件と呼ばれるものは、法律上有効であると考えられています。
ケース2において、ボーナスが支給されるための在籍要件が就業規則に定められている場合、従業員は、ボーナスの支給日である平成19年6月20日には退職しているので在籍要件をみたさないことになります。
そうすると、ボーナスが、権利として発生しないということなりますので、財団債権としても優先的破産債権としても取り扱わなくて良いことになります。
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