裁判所に提出する債権者一覧表って何?~申告しないと借金は消えない~
1.裁判所に提出する書類とは
破産をする場合、裁判所に書類を提出するということについては知っている方も多いと思います。
しかし、実際に何を提出するかまでは知らないといった方が大半かと思われます。
個人が破産をする場合に、裁判所に提出する書類について大まかに説明すると、以下①~⑧のものがあります。
(1)破産手続開始・免責許可申立書
破産手続を開始することと借金の帳消し(借金の帳消しを「免責」といいます)の許可を裁判所にお願いする旨の書面です。
(2)住民票
申立前3か月以内のものが必要です。
(3)委任状
簡単にいうと、破産手続きを代わりに行うことを弁護士に依頼した旨を裁判所に示す書面です。
この書面がないと弁護士は申立人の代わりに、破産の手続を行うことができません。
(4)債権者一覧表
借金(債権者からの借入)について、詳細に記載します。
(5)資産目録
申立をする際に所持している現金、預金、給料、保険、不動産等について記載し、債権者に配当すべき財産があるかどうかを検討する資料となります。
(6)報告書(陳述書)
破産に至る経緯を記載します。
(7)家計全体の状況
家計簿のようなもので、収入、支出を細かく記載します。
(8)上記内容説明する資料(疎明資料)
例としては、預貯金通帳の過去2年分、給与明細・賞与明細、源泉徴収票、保険証券、自動車検査証などのコピーがあります。
個別の事案によって提出する資料は異なります。
ここでは、上記①~⑧のなかでも、破産手続上重要な役割を担う④債権者一覧表について説明していくことにします。
2.債権者一覧表とは
破産手続開始の申立てをする場合、申立人(これから破産しようとする人のことをいいます。)は、債権者一覧表を裁判所に提出することが義務付けられています。
債権者一覧表には、債権者の氏名、住所、借入の始期・終期、現在の残高、借入の原因、保証人の有無、最終返済日、受任通知の日、担保がついているかどうかを記載します。
この債権者一覧表を見て、裁判所は申立人の負債状況を確認します。
また、債権者が、裁判所から債権者一覧表に基づき通知がくることで、破産者から届けられた内容に間違いないかを確認し、破産手続に参加して適正な配当を受ける機会を保障する役割を果たす重要な書面です。
3.債権者一覧表から漏れてしまいがちな債権とは
一般的に申告することを漏れてしまうのは、保証人からの求償債務、公共料金、勤務先からの借入れ、家賃滞納分、親族・知人からの借入、保証債務、連帯保証債務です。
たとえば、いわゆる消費者金融への返済ができなくなって取り立てがきついがゆえに破産をしようと考え、消費者金融からの借入だけを債権者一覧表に記載すれば良いと考えてしまうかも知れません。
また、債権者一覧表に載せると裁判所から債権者に通知がいくため、申立がばれてしまうことから、債権者一覧表に記載をしないで申立をしたい方もいるかも知れません。
具体的には、勤務先からの借入について、勤務先に破産をしたことを知られることになってしまい、失職等をおそれて記載をしないことや、親族・知人等の近親者からの借入について、近親者に破産をしたことを知られたくないがために記載をしないことがありえます。
しかし、上記のようなことは絶対にあってはなりません。依頼している弁護士には正直に話す必要があります。
この債権者一覧表は、上記のとおり、裁判所が申立人の負債状況を確認するとともに、債権者が届けられた内容に間違いないかを確認し破産手続に参加して適正な配当を受ける機会などを保障する役割を果たす重要な書面ですので、必ず依頼した弁護士に正直に話をして、債権者一覧表に記載してください。
4.債権者一覧表に記載をしなかった債権は借金が帳消しにならないのか
あえて記載をしなかった場合には、先ほどの債権者一覧表の重要な役割が果たせなくなってしまうので、厳しい制裁が課されています。
具体的にいうと、最悪の場合、あえて知っている債権者を載せないままの債権者一覧表を提出すると、借金の帳消し(免責)の許可を受けられないことが起こり得ます。
また、免責の許可を受けられたとしても、債権者がいることを知っているにもかかわらず、債権者一覧表に記載しなかった場合には、その記載しなかった債権は破産後も残り続けることになるので注意が必要です。
そのため、申立のときには申告していない債権者や、判明しなかった債権者がいる場合には、すぐに債権者一覧表にその判明した債権者を追加し、上記デメリットを受けないようにする必要があります。
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