会社の破産申立準備段階での処理

破産とは、管財人というものが破産者の財産や資産を管理し、金銭に換え、これを各債権者へ配当するという手続です。そのため、原則として、破産者の財産は全て、処分しなくてはいけません。

もっとも、個人の破産の場合に全ての財産を処分しなくてはいけないとすると、生活がままならなくなってしまうため、最低限の生活を確保するため、一定の財産(自由財産)は処分しなくてよいとされています。

会社(法人)の破産の場合には、今後の生活というものを考える必要はないため、会社財産は全て処分しなければなりません。

以下では、申立準備段階での会社財産の処理について説明します。

1.預貯金

預貯金がある場合は、申立代理人(会社(法人)の代理人として破産の申立をする弁護士)に通帳、印鑑を預ける必要があります。

通帳と印鑑を預かった申立代理人は、申立準備段階で、申立手続の費用の確保、会社の財産の減少を防止するため、場合によっては口座から現金を引き出し、引き出した現金を申立代理人の預かり金口座で保管することになります。

2.売掛金

売掛金については、申立準備段階で、債務者名、送付先、債権額、債権発生の時期を明確にし、目録を作成する必要があります。

その際、請求書、納品書などの書類を裁判所や管財人に提出できるように準備をする必要があります。

もし帳簿等をパソコンで管理している場合は、パソコンを処分する前にデータを確保する必要があります。

売掛金については、債権の劣化を防ぐため、申立の準備段階で、申立代理人が回収することもあります。

回収した場合は、債務者ごとの回収日、回収金額などを目録に正確に記載し、未回収金額を破産管財人に引き継ぐことができるよう準備します。

3.リース物件

リース物件については、申立準備段階で目録を作成し、申立時に契約書の写しと一緒に裁判所に提出する必要があります。

リース契約には様々な形態があり、契約内容を詳細に確認する必要があることが多いです。

そのため、申立準備段階で処理するのではなく、申立後、破産管財人がリース物件の処理をするケースが多いです。

4.自動車

会社名義の自動車の場合は、代表者や従業員が直前まで使用している場合がありますが、交通事故が生じて債務を負うことなどがないよう、使用を停止しなければなりません。

また、申立準備段階で盗難などに遭わないように、自動車の保管場所や保管方法にも注意が必要です。

特にトラック、特殊車両、重機等は一般的に価値が高く、一般の車両よりも盗難の可能性が高いので、盗難を防ぐ方策を施すべきです。

盗難を防ぐ方法としては、車庫や囲い、門の有無等に応じ、ハンドルロックをする、セキュリティ装置が配置された屋内に保管することなどをする必要があります。

車検証や車の鍵については、通常は申立代理人に預けることになります。

自動車の保管が難しいなどの場合は、売却することもありますが、自動車査定協会で査定を受けた後に売却をして、適正な価格で売却する必要があります。

なお、リース物件の場合は、所有権を有しているリース会社等が引き上げることがあります。

5.不動産

申立準備段階で、建物内の在庫商品などが盗まれたりしないようにするため、建物にはすぐに施錠をして、申立代理人名義で立入禁止・財産搬出禁止等の警告書や看板を設置します。

場合によっては、警備会社に警備依頼等をすることも検討します。

不動産を貸している場合には、契約書、賃貸先、賃料の受領状況、敷金・保証金の有無等を明確にしておく必要があります。

6.在庫商品

在庫商品についても、申立準備段階で所在場所ごとにできる限り詳細な目録を作成しておく必要があります。

買い手が全くいないような場合には、目録への記載は「長期在庫等一式」「回収見込額0円」とすることで足りるとされています。

目録と実際にある在庫との違いがあることが大きいですので、棚卸台帳、請求書、納品書、注文伝票等の確保が必要です。

生鮮食品や季節商品等の場合には、すぐに金銭に換える必要があるので、破産管財人がすぐに就かない場合は、申立代理人が売却することになります。

在庫品を債権者にあげたり、安く売ったりという行為は許されません。

否認権行使(取り消される)の対象となってしまい、場合によっては破産犯罪の対象になり刑事罰を科される可能性があります。

7.賃借物件

賃借をしている物件がある場合は、契約書を確保して、敷金・保証金、賃料額などを確認します。

申立準備段階で、賃借物件の明け渡しをする場合には、裁判所や破産管財人に提出しなければならない帳簿類や契約書等を廃棄しないように注意が必要です。

8.廃棄物等

産業廃棄物が会社の財産に含まれている場合、お金にかえることができないかも知れませんが、会社が保有しておくこともできないため、最終的には処分が必要です。

単なる廃棄物やゴミのみであれば、申立準備段階でも廃棄すれば足ります。

しかし、産業廃棄物の場合には、法令に従って処分しなければならず、これは申立後に破産管財人がすることになります。

以上の申立準備段階での会社財産の処理は、基本的に申立代理人である弁護士が行ないます。

破産をした場合にどのように会社の財産を処理すべきかをお知りになりたい場合には、弁護士にご相談をすることをおすすめします。