個人再生をするにあたってマイカーを手放さずに済む方法とは
1.個人再生をするにあたってマイカーを手放さずに済む方法とは
個人再生をする場合、自動車はどのように取り扱われるのでしょうか。
破産をする場合、自動車は手放さなくてはならないと聞いたことがあります。 個人再生をすると場合も同じなのでしょうか。 車は事業で使っているので、手放したくないのですが何か方法はありませんか。 |
(1)自動車を一括で購入した場合やローンを完済している場合
まず、自動車を一括で購入した場合、または、既にローンの返済が終わっている場合は、既に自動車の所有者は購入者です。
文字通りのマイカーです。
その場合、処分をする必要はありません。
ただし、個人再生という手続きは、破産をして財産を売却して債権者に配る場合の金額(清算価値といいます)よりも、多くの財産を債権者に返済していくというに考えられています。
そのため、自動車に価値がある場合には、清算価値に加算されることになります。
具体的にいうと、借金が500万円ある場合、個人再生手続では100万円までに債務が圧縮され、それを3年で分割して返済していけばよいのが通常ですが、仮に自動車の価値が200万円ある場合、破産をして自動車を売却すれば200万円を債権者に配れるわけですから、再生手続きを利用したとしても200万円は返していきましょうよということになっているのです。
このように、自動車を一括で購入した場合やローンを完済している場合、清算価値に対する影響がでる可能性はあります。
(2)自動車のローンを返済中の場合
#1:所有権留保とは
自動車のローンを返済中の場合は、通常、契約書のなかに所有権留保する旨の条項が定められています。
この所有権留保というのは、自動車の売買契約にあてはめると、売買代金の完済前に売主が購入者に対して自動車を引き渡すものの、代金の支払を確保するために、自動車の所有権を代金完済まで売主に留保することをいうのです。
そのため、売買契約書にこの条項がある場合、自動車の所有権はローンを完済するまでは、購入者にはないことになります。ローンの完済ができない場合、所有権は購入者にないので、多くの場合、自動車の引き上げに応じなくてはいけないことになります。
所有者の確認方法ですが、これは車検証をみれば、一目瞭然です。
ローン返済中の自動車の車検証の所有者欄には、購入者ではなくて、通常信販会社か自動車の販売店が記載されています。
#2:所有者名義が販売店の場合
自動車の所有者の名義が販売店の場合には、債権者である信販会社から車の引き上げを要求されたとしても、それに応じる必要はないとされています。
これは、平成22年6月4日に最高裁判所が出した判決があるからです。
この判決は、信販会社に所有権が留保されているにもかかわらず、所有者として登録されているのが販売会社となっている事案において、「所有権留保の別除権の行使は、所有権の登記・登録を根拠としており、自身が所有権を登録していない自動車について別除権を行使することは許されない(簡単にいうと、車の引き上げをすることはできない)」と判断しています。
なお、この判決がでていることから、すでに現在では所有者の名義を販売店にしているということは、ほとんどなくなっているようです。
#3:所有者の名義が信販会社にある場合
車の登録名義が信販会社である場合には、通常通り、信販会社は自動車の引き上げをすることができます。
そのため、何も対策を施さないと、自動車を手放さなくていけないようになります。
#4:軽自動車の場合
軽自動車の場合には、「支払の滞納の際に、軽自動車を引き上げる」という旨の特約があれば、自動車を引き上げることが可能です。
通常の場合、上記の特約が定められているので、引き上げを拒否することは難しくなります。
2.自動車を手放さないようにする方法
(1)別除権協定というものを結ぶという方法
この協定は、自動車の時価額に相当する金額を分割で返済する代わりに、自動車の引き上げをせず、引き続き購入者が利用するという内容の契約を交わすことになります。
これを別除権協定といいます。
この協定を結ぶためには、裁判所や他の債権者の許可や同意を必要とします。裁判所の許可を得る前提として、事業上必要不可欠のものであるという事情が必要です。
すなわち、事業で車を使用していて、それがなくては事業が成り立たないということが客観的に必要不可欠であるといえるような事情が必要です。
通勤で利用するという程度の場合には、この方法をとることはできません。
別除権協定の内容は、自動車の客観的価値相当額を支払うという内容になります。
しかし、別除権者からは、客観的価値がどうかにかかわらず、残っているローンの分割ではなく一括弁済を求められることがあり、残っているローンが自動車の時価額を上回っているときには、協定の成立に困難をきたすことがあります。
(2)裁判所に担保消滅の許可を申し立てる方法
もうひとつの対策としては、裁判所に自動車についている所有権留保(担保権)を消滅させてくださいと、許可を申し立てるという方法があります。
ただし、この許可を申立てる場合には、自動車の時価額に相当する金額を一括で裁判所に納付しなければなりませんので、現実的には、使い勝手は悪いです。
(3)残りのローンを一括で返済する方法
自動車のローン残高が例えば残り20万円であるというように残り僅かな場合には、残りの金額を返済するというやり方あります。
このやり方は、債権者に返済ができなくなった状況において本来平等に扱わなければならない債権者の一部を優遇して返済するもので、いわゆる偏頗(へんぱ)弁済と呼ばれるものに該当します。
この場合、裁判所からは、この返済がなければ他の債権者に返済できたはずということで、先ほどの清算価値に上乗せして再生手続の中で各債権者に返済しなければならないと判断される可能性があります。
具体的にいうと、借金が500万円ある場合、個人再生手続では100万円までに債務が圧縮され、それ3年で分割して返済していけばよいのが通常ですが、20万円を信販会社に返済した場合には、本来返せばよかった100万円に20万円を上乗せした120万円を返済しなければならない可能性が出てくることになります。
(4)自動車ローンの残りを親族等から援助を受け支払う方法
親族が代わりに自動車のローンの残りを返済することや、親族からお金を借りて自動車ローンの残りを返済する方法も考えられます。
ただし、親族からお金を借りる場合には、親族からの借金も裁判所に届け出ることになること、また、その借金額も手続の中で圧縮されてしまうことに注意が必要です。
また、実質的には弁済の原資が購入者の財産であるという場合には、場合によっては再生手続を利用できなくなってしまう可能性がありますので注意が必要です。
具体的な場合に、自動車が再生手続をするにあたってどのように取り扱われるかは事案によって異なり判断が難しいこともありますので、弁護士に専門することをおすすめいたします。
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